今回紹介します、木之本・つるやパン本店のまるい食パンですが、この食パン、実は家族のご友人に購入をお願いしたものです。
たしかに形状自体も比較的珍しい商品なのですが、なんといっても特筆すべきは食べた時の食感です(まさに、ふんわりといった表現がこれほどピッタリくるパンも珍しい!)。
このようなせっかくのパンを記事に上げないのもいかがなものかと思い、そのご友人への感謝の気持ちと併せて記載させて頂きました。
また、このまるい食パンに関連して食型の違いと最終発酵の取り方についても解説していきたいと思います。
【 目次 】
食型と最終発酵
食パン用の型は直方体の形状がもっともオーソドックスですが、実際には実に様々な形状のものが使用されています。
なかなか実物の画像も見つからなかったのですが、一昨年に中国・上海で開催されていました製パン関連の展示会・ベーカリーチャイナの会場にて見掛けました食型をご覧下さい。
ここのブースでは(左から)ハート形、ネコ型、そしてまるい食パンに関連した丸(ラウンド)形の各食型が展示されていました。
食型の本体と蓋という組み合わせよりは、上下のパーツといったイメージです。
ところで、これらの型には共通する製造条件、より詳しくは焼成工程でのオーブンキック(窯伸び)について留意点があります。
一般的な角形食パンの場合は、生地上面が適度に蓋に密着して、両サイドにはホワイトラインと呼ばれます未着色の部分が形成されます。
つまり、食型全体の空間にパン生地を満たすことは通常しません。
しかしながら、先述の各食型では(パンの形状を確定させるために)生地上面が十分に食型に密着する(空間をパン生地で満たす)ことが求められますので、意識的に最終発酵を大きめに取って、焼成することになります。
すると通常の角形食パンであれば、食型上端から**mm下といったタイミングで最終発酵のタイミングを計れるのですが、ラウンド型の場合には、確実に食型上端より上の位置でタイミングを取らなくてはならなくなります。
型サイズを大きくしたり、柔らかい生地ではさらに難易度が上がってきますので、その場合には地道に試行を繰り返して習得することになるでしょうか。
まるい食パン(1本380円 税込)
つるやパンの一代目西村秀敏氏は、敷島製パンのパン職人から製パン技術を学ばれた旨、HPに記載がありました。(この一文で、なんとなく勝手な親近感を覚えてしまいます。)
改めて外観を見てみますと、食型の上下部を閉じた(中央高さ真横の)部分で若干の生地がはみ出ています。
この程度の圧力が焼成時のパン生地に掛からないと、生地全体を食型に密着させることができないのでしょう。
そして、長さ方向には蛇腹(ジャバラ)のような波状の凹凸が形成されていますが、これによって半径方向への強度を付けることができ、腰折れを防ぐ目的もあるのかと推測します。
原材料で気になったところは、糖に三温糖、そして乳製品に脱脂粉乳と牛乳を併用している点でしょうか。
見た感じでは1.5斤程はあろうかと思われましたが、以外にも製品重量は365g(包装紙の重量抜き)ですので、このサイズで概ね1斤(340g以上)となります。
外観
商品を上面から見てみますと、中央にくっきりと継ぎ目の線が確認できますので、ロール成形した生地を2玉型詰めしていると思われます。
仮に焼減率を12%と仮定しますと、1玉の分割重量は207g(=365g/2/(1-0.12))程度と推算されます。
ところで、このパンの焼き色を見て、少々考えさせられる点がありました。
一般的な伝熱工学の観点から考えますと、凹凸のある突出している(凸)部分の方が熱が集中し易いはずなのですが、よく見てみますと、逆に突出している部分の方の焼き色が薄くなっています。
おそらく焼成中の内圧の関係で、凹んでいる部分の生地はより強い力で食型に押し付けられ、結果的に多くの熱量が流れたのではないのでしょうか。
側面には、食型の継ぎ目に若干のパン生地がはみ出しています。
また側面のやや下側に、焼成開始時、パン生地が食型に接していた部分の跡が付いています。
最終発酵のタイミングを目で測る判断指標になりますね。
内相
スライスしました断面では、成形時にパン生地を巻いた跡(”の”の字になっています)を確認することができます。
ロール成形と仮定しますと成形の巻き目に対して垂直にカットしていることになりますので、この仮定は間違ってもいないかと思っています。
それと、巻き数が比較的少ないようですので、成形時のガス抜きの圧延では、それほど強く掛かっていないようです。
もっとも圧延をし過ぎますと、ロールの長さが出過ぎて型詰めで収まりきらない懸念もあります。
ところで、上下面の焼き色を比較しますと、底面の焼き色の方が薄くなっています。(形状は円柱形で上下の違いはありませんが、焼成開始時の上面と底面では表面の表情が変わってきますので、上下が入れ替わっていることはないと思います。)
となりますと、十分な窯伸びをさせるために焼成初期の下火を抑えたか、もしくは焼成後期にかけて上火の温度を上げているのかもしれません。
食味・食感・風味
冒頭にも記載しましたが、手で持った時、噛んだ時のふんわり感は他に類を見ない感覚です。
これは配合や型生地比容積(分割重量)の要因も大きいと思われますが、製品重量は測定していますので、体積が分かれば比容積を求めることができます。(おそらく、ずいぶん大きい(軽い)のではないでしょうか)
食べた際には、ミルク由来の食味・風味が強く感じられました。
とても、食味・食感・風味がまとまった完成度の高い商品と評価します。
今日のanopan
我が家がリピートしていますオーブンフレッシュベーカリーの anopan が、先週6月19日から営業を再開しました。
実はその1週間ほど前から店舗の改修工事に入っていて、この度、無事に工事を終了されての再開です。
お店の改修工事に掛かるということは、比較的順調にお店の経営が成り立っているということでしょうか。(個人的には、ずっと続いてほしいと願うばかりです)
お店の前には、新調された看板と店内にはなぜかアンティーク感のあるミシンが・・・なぜミシン?
再開の時期は、父の日に被っていて、(おそらく)期間限定の『父の日のおつまみパン』がお目見えしていました。
手書きの商品プレートが付けられて、ガーリックフランス(160円 税込)がショーケース内に見られます。
ガーリックが強いので、朝に食べることはあまりお勧めされないとのことで、その日の帰宅後、早速夕食で頂きましたが、歯切れが軽くて口溶けがものすごくいい!(定番商品であれば、これは完全にリピート対象です。)
そして、ガーリック感が・・・強烈でした。