黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

コオロギを食べる・昆虫食の未来 ~ コオロギのバゲット・パスコ

 過日に注文しました『コオロギのバゲット(パスコ)』がクール便(冷凍)で届きました。

 

パスコ コオロギ

 

 先の記事での予告通り、「Korogi Cafe(コオロギ カフェ)」シリーズで発売されました「コオロギのフィナンシェ(2種)」&「コオロギのバゲット」の内のパンの方です。

 

www.santa-baking.work

 

 今回は、コオロギのバゲットのリポートと併せて、昆虫食の未来についても考えていきたく思います。

 

【 目次 】

 

昆虫食について

 世界の人口予測は2050年に97億人に達し、現在の2倍の食糧生産が必要になると言われています。

 

 これをタンパク質の視点から見てみますと、早ければ2030年頃には世界的なたんぱく質不足が起こると予想されています。

 

 この予測に対して、2013年の国際連合食糧農業機関の報告書において、昆虫の食用利用の可能性について記載がありました。

 

 まず、昆虫は1キロのタンパク質を生産するのに必要な餌の量が少なくてすみます。

昆虫(コオロギ):1.7kg ニワトリ:2.5kg 豚:5.0kg 牛:10.0kg

 

 水も飲み水だけで、他の畜産物のように牧草を育てるための水が不要で、体重を1kg増加させるために必要な水量は、

昆虫(コオロギ):4ℓ ニワトリ:2300ℓ 豚:3500ℓ 牛:22000ℓ 

 

 そして体重当たりの温室効果ガスの排出量が少なく、環境にやさしいことも挙げられます。

昆虫(コオロギ):100g 豚:1100g 牛豚:2800g 

 

 ちなみにタンパク質を多く含みます一般的な食品のタンパク質含有量は以下の通りです(100gあたりタンパク質含有量)。

・肉類 生ハム(24.0g)、鶏ささみ(23.0g)・・・

・魚介類 イワシ丸干し(32.8g)、いくら(32.6g)、するめ(69.2g)・・・

・卵類 卵黄(16.5g)、ゆで卵(12.9g)・・・

・大豆製品 きな粉(35.5g)、納豆(16.5g)、こしあん(9.8g)・・・

・乳製品 パルメザンチーズ(44.0g)、脱脂粉乳(34.0g)・・・

 

 昆虫食の開発と併せて(と言いますか、以上に・・・)、既存の食品に関しても養殖や畜産の技術の推進を期待したいですね。

 

パスコ 「Korogi Cafe」シリーズ

 パスコは、未来のことをまじめに考えるプロジェクト:未来食Laboを立ち上げて、前述の通り栄養価が高く地球にも優しい昆虫食に着目し、高崎経済大学発のベンチャー企業であるFUTURENAUT合同会社の食用コオロギパウダーを使用した製品を研究・開発しました。

 

 「Korogi Cafe」シリーズには、タイで生産されたヨーロッパイエコオロギのパウダーを使用しています。

 

パスコ コオロギ

 

 使用しているヨーロッパイエコオロギは、食品製造管理基準の認証を受けた衛生的な農場で、トウモロコシや大豆の配合飼料を用いて食用に養殖された品種だそうです。

 

 他のコオロギ品種(フタホシコオロギ等)に比べるとクセの少ないさっぱりした味(炒ったナッツのような香り)が特徴らしいのですが、もちろん私は食べ比べたこともありませんので、感覚的なものは持ち合わせていません。

 

 なお、使用している食用コオロギパウダーは、えびやカニなどの甲殻類と類似した成分が含まれているとのことで、えびやカニのアレルギーを持たれている方は控えられたほうがいいようです。

 

コオロギのバゲット

 予約受付は、2020年12月1日(火)よりPascoのオンラインショップ限定で受け付けていたものなのですが、その日に注文後、しばらくしてサイトを見てみましたところ、既に完売の表示が出ていました。

 

包装

 配送予定の本日(12/20)、要冷凍(-18℃以下)のクール便で配送されました。

 

パスコ コオロギ

 

 L'Oven というのは、パスコが展開します焼成後冷凍製品のブランドです。

 

 私見ですが、パンのサブスクのような新たなビジネスも展開され始め、パスコに限らず、この焼成後冷凍の技術は今後の製パン業界に必要かつ確立すべき技術分野と考えています。

 

パスコ コオロギ

 

 ちなみにコオロギのバゲットは、パスコの未来食Laboという「Korogi Cafe」シリーズ専用の施設にて製造しているようです。

 

価格と表示

 コオロギのバゲットはネット販売限定で、本体が540円(税込)、配送料が950円となっています。

 

 そして、パッケージのステッカーには、コオロギのイラストと共に未来食の文字が。

 

パスコ コオロギ

 

 ところで、名称はコオロギパウダーよりもクリケットパウダーの方が抵抗が少なく感じるのは私だけでしょうか。

 

パスコ コオロギ

 

 原材料表示には、小麦粉の次に食用コオロギパウダーが多く使用されている旨が記載されています。

 

 なお、このコオロギのバゲットに『**匹分...』の記載はありませんが、パスコの担当者によりますと、100匹分のコオロギパウダーを使用しているとのことです。

 

外観

 杖や棒を意味しますバゲットというよりは、イメージとしてバタールに近い形状のように感じます。

 

パスコ コオロギ

 

 重量:152gで、これも少々小振りですね。

 

 クープの開きが少々変わっているのは、御愛嬌でしょうか。

 

パスコ コオロギ

 

 底面を見ますと、直焼きしていることが分かりますし、焼成時には十分膨らんでいたことも推測できます。

 

内相

 カットして内相を見てみます。

 

パスコ コオロギ

 

 クラムの薄い焦げ茶色は、コオロギパウダーの色に因るものと思われます。(他に着色させる原材料は見当たりませんので)

 

 気泡は歪なのですが、少し偏っているような・・・、コオロギパウダーの添加で成形が難しくなっているのでしょうか。

 

 コオロギパウダーの生地物性についてはまったく分かっていませんが、おそらく粘性も弾性も付与されることはなさそうですので、パン作りという点では米粉以上に制約を受けるものと推測します。

 

風味・食味・食感

 スライスした1枚をトーストして実食です。

 

パスコ コオロギ

 

 クラストの香ばしい風味は特徴的ですが、クラムの発酵臭は一般的な感覚です。

 

 食味は例えれば雑穀やナッツ類のような香ばしさが加わっていて、食感としてはクラムのモチモチ感が十分に感じられます。

 

 コオロギパウダーと知らされなければ、特別な違和感はないように思います。

 

コオロギのフィナンシェ

 バゲットの姉妹品に100箱限定のフィナンシェ(1箱/10匹入×3個・30匹入×3個 計6個入/2,160円(税込・送料別))も販売されていました。

 

 コオロギパウダーの添加による生地への影響はパン程ではないように思われます。

 

 パスコのHPでは『コオロギの味わいの違いがお楽しみいただけます』とありましたが、フィナンシェ1個あたりのコオロギの使用量:10匹と30匹で、どのような違いがあるのか、特に記載は見当たりませんので、そこは食べてからのお楽しみ?