黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

街のパン屋さん ~ ベーグル&ベーグル

日本でのベーグルの先駆け

 20年ほど前、アメリカやヨーロッパでは健康食への関心の高まりがあって、日本でのベーグル市場が賑わってきた時期もその頃です。

 実際に、この頃の国内外の展示会では、直接製造に関わるベーグル用のミキサーや成形機はもちろんのこと、焼き上がったベーグルを横切りにスライスする専用機のスライサーまでいたるところで発表され、装置メーカー間の競争も激化していました。

 ベーグル&ベーグルは1997年に第1号店を開店して以来、現在では日本のベーグル専門店として店舗数第1位となったようです。

 今回は、名古屋栄三越の地下階の店舗へ行ってきましたが、私がベーグル&ベーグルへ行く時は、ここか、もしくは東海環状自動車道で行く土岐プレミアムアウトレット内の店舗のほぼどちらかです。

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 抹茶ホワイトチョコ(190円 税込み)、とクロワッサンベーグル・ブルーベリー(220円) を購入しました。

 海外のオリジナルのベーグルと比較しますと、やはり日本向けにもっちりソフトな食感に改良されています。

 今回のクロワッサンベーグルは、シンプルにブルーベリーベーグル生地とクロワッサン生地を合わせた商品です。(同店HPに記載の写真と購入品とのブルーベリーベーグル生地の色が随分違っていますが、特に味に不満がある訳でありませんでしたので、あまり気にしないことにしています)

 もっちりとしたべーグル生地と、食感が明らかに異なるクロワッサン生地のコントラストが特徴的です。

 ベーグルが脚光を浴びていた頃は、商品のバラエティ化が図られていても、せいぜい生地にチョコやブルーベリー、今回のようにホワイトチョコ等が練り込まれていたくらいでしたが、最近ではこのように別の生地を組み合わせたものや、チョコやクリームのフィリング類を生地に充填しているタイプの製品まで出てきました。

 地元の小さなベーグル店が後述のタイプの商品で随分人気なのですが、機会があれば報告できればと思っています。

 実を言いますと、結構、このフィリングが充填されているタイプのベーグルが好みで、装置生産化の方法を時折考えたりもしています、…かなり難しいですけど。

アメリカンマフィン

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 ベーグル&ベーグルでは、ベーグルの他にもうひとつの主力商品としてマフィンがあります。

 上写真の左上に並んでいるのが、それです。 

 アメリカンマフィンは、個人的に食感を菓子感覚で捉えているせいか、それほど積極的に購入することがないのですが、また別に機会に解説するようにします。

製造設備

 ベーグルを製造するための装置は、非常に特殊な仕様になっているものが多いです。

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 生地は非常に硬いのでミキサーも特殊、成形の方法も手成形でなければ、上図のようなベーグル成形機を使用します。

 焼成にしましても、元々湯通しをしてから焼成する製品ですので、通常のオーブンにベーグル用の機能を付与しなければなりません。

 まだまだ、解説のスペースが必要なようです。

成形 ~ シート生地の圧延 製パン機器の進歩

ストレッチャー:シート生地を圧延する装置

 これまでの話の中で、単純にシート生地をローラーで延ばすだけでは厚さ方向にバラツキが出てしまうことを述べてきました。

 シート生地を延展する装置はストレッチャーと呼ばれています。

 この課題を装置メーカーは、どうやってクリアしてきたのでしょうか。

 以前のブログで生地が動く速度によって粘性が変化することを解説しました。

 それは、変化の速度が遅ければ高さによる粘性の違いも小さくなってくることを意味します。

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 ということは、少しずつ圧延を掛けて生地を延ばしてやることで、より均一な層ができることになります。

 一本のローラーでシート生地を一気に延ばすのではなく、複数のローラーを使用して、少しずつ伸ばしていく方法です。

 少し話が横道に逸れますが、お蕎麦屋さんの麺打ちで生地を滑らせながら延ばしている光景を見られた方はいらっしゃいますでしょうか。

 蕎麦に層ができている訳ではないのですが、均等に延ばすという意味では同様なのかもしれません。

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 その蕎麦打ちに発想は近いのですが、仮に上から押したとしても下の面が動いていれば、生地内に流れが生じ易く、粘性の差も小さくなることになります。

 そして更に、その下の面も上の面と同様にローラーで支えていたとしたら、条件としては更に良い方向へ進んでいくことが予想されます。

 現在、連続生産ラインで導入されていますストレッチャーの仕様の多くは、上下に圧延用のローラーが配された仕様になっていますが、この装置仕様に移行してきました背景は、やはりより良い製品を造りたいといったベーカリーの方が製パン作業者の方々の声があればこそ、と思っています。

 きれいな層のデニッシュペーストリーを作りたいと願う気持ちが、製パン機械の進歩を推し進めている原動力となっていると思っています。

リバースシーター

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(画像提供:戸倉商事株式会社)

 ところで大型の製パン工場ではなく、リテイルベーカリーでは事情がどうなっているのでしょうか。

 上図のような装置をご覧になられたことは、あるでしょうか。

 シート生地が左右のコンベアで移動する際、中央のローラーで圧延して、徐々に延ばしていく装置です。

 見ての通り、バッチ式の装置ですし、基本的には作業者が付いて操作しなければなりません。

 実はこのような原理の装置は、1950年頃、既に開発されていたのですが(もちろん、手動ですし、機能的には劣りますが)、それでもきれいな層を出す機器としては、現在でも第一線で活躍しています。

 その解説は、またまた次回に持越しさせて下さい、すみません。

最後に

 最近はどうも中国出張の影響で仕事が溜まってしまい、ブログの更新が滞り気味となってしまいます。

 オーバーワークは問題ですが、なんとか定期的に更新できるようにしたい、と、…これも改善ですね。

 

街のパン屋さん ~ 乃が美 高級「生」食パン専門店

 食パン専門店のブームが来ています。

 今日の時点で、ネット検索で『食パン』と入力しますと、候補のキーワードとして『食パン のがみ』というキーワードの候補が出てきます。

 今では全国に126店舗を展開するまでに消費者の支持を集めたベーカリーが、生食パン専門店の乃が美です。

 そのような中、雑誌「&Premium」(アンドプレミアム)が選んだ、『日本の食パン 名品10本』は、

大阪市天王寺区 : 乃が美

京都市北区 : クロア

・神戸市東灘区 : フロイン堂

・東京都調布市 : アオサン

・東京都新宿区 : 小麦と酵母 満

・東京都中央区 : セントル ザ ベーカリー

・東京都渋谷区 : パンとエスプレッソと

・東京都世田谷区 : ブーランジェリー スドウ

・東京都港区 : ブーランジェリー セイジアサクラ

横浜市中区 : ブラフベーカリー

 と、なっているようで、その中にもしっかりと同店がランクインしています。 

 母数の関係か、随分東京に集中している感もあります。(けっして、東京以外の都市でおいしい食パンが造られていない訳ではないと思うのですが…。)

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  さて、その乃が美の食パン(2斤 864円 税込)ですが、外観は全体的にやや焼き色が薄めで、上面、側面、底面のバランスが良く取れています。

 従来、食パンはトーストして食べるものといった認識がありますが、菓子パン感覚で焼かずに食べる食パンとなりますと、新たな『生食パン』というジャンルの開拓としても注目できるのではないでしょうか。

 ソフトな食感を意識している為、他の食パンにも生じる程度の若干の腰折れが見られますが、『腰折れ』と『ソフトさ』のギリギリのところを狙っている目的から察しますと、問題視することもないように感じます。

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 乃が美のHPには、デッキ式オーブンで食パンを焼成している様子が写されています。

 上下面と側面の伝熱のメカニズムが異なりますデッキ式オーブンで焼成していることを考えますと、焼色のバランスがとても取れていることに驚かされます。(食味から推測されます配合や製法を考慮しますと、焼き方の見当もある程度は付きそうですが…。)

 少し横道に逸れますが、ここに写っています、コトブキベーキングマシン社製のデッキ式オーブン:キャメルオーブンは、焼きムラの少ない安定した焼成が特徴の製パン設備です。

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 生のまま食べてみますと、やはりソフトさをまず感じます。

 そして、生地のほんのりとした甘さでしょうか。

 このような食べ方は、一般的にはしないでしょうから、生食パンとして食されるお客さんには新鮮な体験では、と想像します。

 使用している原材料は、小麦粉・乳等を主要原料とする食品・砂糖・マーガリン・バター・ハチミツ・食塩・パン酵母、ということですので、この焼色に収めるためには、かなりの苦労をされたものと察します。

 次にトーストして食べてみましても、やはりクラムのソフトさは健在です。

 ただ、食べ方に慣れている分、新鮮さは・・・ちょっと。 

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 はなれ 栄店(名古屋市中区栄)

中国のパン事情 ~ (4月)安徽省徐州市のリテイルベーカリー

SHARE JIDO 夏芝栄

 久々の休日なので、ランチを徐州市のリテイルベーカリーで取ることにしました。

 今回、訪れましたのは SHARE JIDO という店舗です。

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 この店舗は、人や車が多く通りすがる大通りの角に位置していて、イートインのコーナーも設けられている(この町では数少ない)店舗です。 

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 今回は、購入しました商品をお店で適当なサイズにカットして頂き、できるだけ多くの種類のパンを食べてみました。

 商品の価格的には、日本よりやや安価といったところです。

・フレンチトーストのサンドウィッチ(7.0元 約119円)

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 中国では、肉松という食材が幅広く人気を集めていて、フレンチトーストにこの肉松とハムがサンドされている商品です。

 日本人には馴染みの薄い肉松ですが、中国では至る所で目にする非常にメジャーな食材です。

 例えるなら、太巻き寿司に使われていますピンク色の田麩が日本では魚肉を使って作りますが、これを肉で作った甘口の食材と思って頂ければいいかと思います。

・チーズとコーントッピングのトースト(9.8元 約166円)

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 チーズとコーンがトッピングされていましたので、昼食用にと選んだつもりだったのですが、実はパン生地の方にカスタード?が折り込んであって甘口の商品でした。

 慣れれば?、癖になるかもしれませんが、おそらくそこまでリピートしないような気がしています。

・舟形成形生地のポークチョップサンド(7.8元 約133円)

 写真が抜けていますが、サンドイッチ感覚のハンバーグサンドです。

 パン生地は、白焼きのバンズ生地のような感じで具材との相性は普通に良いように感じました。

・ミニデニッシュ ホットドッグ(3個入り 10.0元 約170円)

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 デニッシュ生地でソーセージを挟んだ(ソーセージをトッピングした?)商品です。

 外観から、層は比較的きれいに出ていたのですが、食べてみると歯切れがよくない感じがして、内相を見てみますと結構目が詰まっている状態です。

 パンチング天板に載せて、コンベクションオーブン焼成したようで、底の面には天板跡がくっきりと残っていました。

・毛毛虫パン(7.5元 約127円)

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 そのネーミングになかなか馴染めない毛虫パンです。

 ロールパン生地にカスタードペーストを線状に掛けた製品です。

 今回の商品は、斜めのカットでホイップしたバタークリームがサンドされていました。

 とにかくソフトなのですが、多量の油脂が使用されているかのような食感です。

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 今回購入はしなかったのですが、広く支持されている商品のようでコンビニの棚でもよく見掛けます。

 シンプルで飽きがこない商品です。

 最後にイートインコーナーの飲み物ですが、比較的日本と近い価格設定で

・ドリンク類(15~16元 約255~272円)

でした。

街のパン屋さん ~ やわらかシロコッペ

コッペパンの専門店

 今回も中国出張前に購入したパンのご紹介です。

 コメダ珈琲の系列で白焼きの小振りなコッペパンを販売しているのが、やわらかシロコッペです。

 なんだか、店舗の説明をしているのか、商品の説明をしているのかが、分からなくなりそうですが、逆の言い方をすれば、お店の名前とそこで取り扱っている商品がリンクしているということで解釈できそうな気もしています。

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 今回は、限定商品の清美オレンジ(280円税込み)とベリーベリーチーズ(340円)を購入しました。

 包装紙には、やわらかシロコッペのロゴが入っています。

 外観は、シロコッペと言うだけあって、薄っすらと焼き色が付いた程度に焼き上げています。

 おそらく、焼成中の生地上面温度は120℃台に留めていると思われます。

 オーブンは、ソフトな食感を出すためにコンベクション式ではなく、デッキ式を採用しているでしょうから、それであれば生地上面の温度コントロールは結構シビアなものになっていると思います。

 もっとも、店頭で製パン作業者がパンの焼き色を見ながら窯出ししているのでしょうから、連続生産ラインでの製造と比較すれば、まだ調整はし易いのではないでしょうか。

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 コッペパンですから、フィリングの充填はパンの横方から切り込みを入れ(これを払わりと言います。片やパンの上面に切り込みを入れる方法を背割りと言います)、種々のフィリングをチョイスして行います。

 店頭での販売ですと、流動性のあるフィリングも使用することができますので、商品のレパートリーも自ずと広がってきます。

 上写真のベリーベリーチーズは、果肉と共に液状にも近いゲルのフィリングが使用されています。

 パンの柔らかと相まって、更に柔らかさを奏でています。

 ホールセールベーカリーですと、中のフィリングがはみ出したりしないように柔らかいフィリングは避けて使用しなければなりませんが、ここはリテイルベーカリーの強みを十分に活用した商品と言えるのではないでしょうか。

 コメダ珈琲店のパンはすべて自社製で、コメダ専用の小麦粉を使用したり、低温長時間発酵を取る製法を使う等、独自の色を出しています。

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 この低温長時間発酵ですが、パンに発酵の風味がとても出て、ソフトに仕上がります反面、手間もその分掛かると言われています。

 ただ、ソフトなパンを作るための製法としましては、冷蔵中種の使用できますアローワンスが最長で3日程度使えるものある程ですので、時間にシビアな一般的な中種法よりは取り扱いは楽なのかもしれません。

 もっとも、中種をストックする冷蔵庫はそれなりの容量が求められることは言うに及びません。

 やわらかシロコッペの商品アイテム群は次の通りです。

・限定商品 ベリーベリーチーズなど

・和コッペ 小倉マーガリンなど

・洋コッペ イチゴジャムなど

・おかずコッペ ミートボールたまごなど

 最後に、やわらかシロコッペのサカエチカ店は、こんな感じです。

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