ストレッチャー:シート生地を圧延する装置
これまでの話の中で、単純にシート生地をローラーで延ばすだけでは厚さ方向にバラツキが出てしまうことを述べてきました。
シート生地を延展する装置はストレッチャーと呼ばれています。
この課題を装置メーカーは、どうやってクリアしてきたのでしょうか。
以前のブログで生地が動く速度によって粘性が変化することを解説しました。
それは、変化の速度が遅ければ高さによる粘性の違いも小さくなってくることを意味します。
ということは、少しずつ圧延を掛けて生地を延ばしてやることで、より均一な層ができることになります。
一本のローラーでシート生地を一気に延ばすのではなく、複数のローラーを使用して、少しずつ伸ばしていく方法です。
少し話が横道に逸れますが、お蕎麦屋さんの麺打ちで生地を滑らせながら延ばしている光景を見られた方はいらっしゃいますでしょうか。
蕎麦に層ができている訳ではないのですが、均等に延ばすという意味では同様なのかもしれません。
その蕎麦打ちに発想は近いのですが、仮に上から押したとしても下の面が動いていれば、生地内に流れが生じ易く、粘性の差も小さくなることになります。
そして更に、その下の面も上の面と同様にローラーで支えていたとしたら、条件としては更に良い方向へ進んでいくことが予想されます。
現在、連続生産ラインで導入されていますストレッチャーの仕様の多くは、上下に圧延用のローラーが配された仕様になっていますが、この装置仕様に移行してきました背景は、やはりより良い製品を造りたいといったベーカリーの方が製パン作業者の方々の声があればこそ、と思っています。
きれいな層のデニッシュペーストリーを作りたいと願う気持ちが、製パン機械の進歩を推し進めている原動力となっていると思っています。
リバースシーター
(画像提供:戸倉商事株式会社)
ところで大型の製パン工場ではなく、リテイルベーカリーでは事情がどうなっているのでしょうか。
上図のような装置をご覧になられたことは、あるでしょうか。
シート生地が左右のコンベアで移動する際、中央のローラーで圧延して、徐々に延ばしていく装置です。
見ての通り、バッチ式の装置ですし、基本的には作業者が付いて操作しなければなりません。
実はこのような原理の装置は、1950年頃、既に開発されていたのですが(もちろん、手動ですし、機能的には劣りますが)、それでもきれいな層を出す機器としては、現在でも第一線で活躍しています。
その解説は、またまた次回に持越しさせて下さい、すみません。
最後に
最近はどうも中国出張の影響で仕事が溜まってしまい、ブログの更新が滞り気味となってしまいます。
オーバーワークは問題ですが、なんとか定期的に更新できるようにしたい、と、…これも改善ですね。