黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

ベーカリーチャイナ ~ 2日目:日本企業も頑張ってます(機械メーカー編)

 ベーカリーチャイナ2019の報告ですが、最終の今回は日本の機械メーカーをリポートします。

 コピーをされてしまうと、どうしても中国製品に価格面でハンディを負ってしまうのが製パン機械設備の実状ですが、精度や耐久性まではまだまだレベル的に優位にあるようです。

 加えまして、装置の設計にあたってのソフト面の配慮がされている点で、表には出にくい部分で日本製品の評価は高いと感じています。

マスダック

 マスダックのブースでは、スフレケーキの連続生産ラインがデモンストレーションで製品を製造していました。

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 安定したスフレケーキがサンドイッチの形状になって作り上げられていく状況は、中国でも注目されていました。

 思えば、単体の菓子の機械設備はこの展示会でも多く目にしましたが、連続生産ラインとなりますと極端に数が減ります。

 それだけ、ラインの設計にはノウハウが含まれていると感じました次第です。

 しばらく、ブースの周りで眺めていますと、中国の人から質問を受けている光景に出会いました、『このライン、いくら?』、やっぱり金額が気になるみたいです。

三幸機械

 三幸機械は、中国に製造拠点を持っていて、中国での展開を図っています。

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 なんでも、前回の出展時にブースでの製パンのデモンストレーションが非常に好評だったとのことで、今回も実際にパンを作りながらの出展です。

 三幸機械は、国内のモバックショウ等の展示会でも同社オーブンを使用してのデモンストレーションを実施していますので、要領は熟知しているのでしょう。

 スタッフの人に聞いたところでは、やはり展示会場で参加者の目を引く工夫が必要とのことで、普通は見られないカラフルなオーブンも展示したということでス(写真では、デモンストレーションの奥に少し写っています)。

 前述のように、三幸機械は中国国内に生産を有していますので、日本では炉床に使います高価な天然石も、返って中国では安価に入手することができるそうです。

 当然、その材料を日本へ持ってくることも可能な訳で、同社の天然石仕様の炉床のオーブンが他社と比較して廉価に提供できる所以がここにあります。

レオン自動機

 非常に多くの中国メーカーが、その機械仕様を模造した装置を開発しているのが、レオン自動機です。

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 以前には、同社の包餡機『火星人』をコピーした機械装置は100社を超えるメーカーが製造していたそうです。

 現在でも、多くのブースで同様の装置を目にしますが、非常に淘汰されてもこの数なんだとか。

 同社の製品はそれなりに知っているつもりですが、最新の装置はこの展示会でお披露目されることはなさそうです。

オシキリ

 製パン工程の全ラインに対応する機械設備をラインナップに揃えますオシキリも出展しています。

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 今回出展していたのは、横型ミキサーや食パンのスライサーといった装置類で、今や同社の代名詞となっていますジャイレーター:カップ式ラウンダーは見ることができませんでした。

 ちなみに、日本の展示会では一般的にご法度となっています写真撮影も、この展示会ではほとんど問題はありませんので(私も日本の展示会では遠巻きにブースの写真程度しか撮れませんでしたが、今回は多くの装置を間近で撮影できました)、それなりに枚数が増えました。

 ただし、今回の日本企業のブースでの写真は、ちゃんとブログ用と許可を頂いて撮影しています。

 総じて、日本メーカーの装置は高額ながら、精度が高く、耐久性も(装置によっては)中国製の5倍以上稼働するとのこと。

 2倍の金額を払って、5倍の期間使用できる装置ということで、中国での評価も年々変化が見られているとのことでした。

 

  

ベーカリーチャイナ ~ 2日目:日本企業も頑張ってます(原材料メーカー編)

 2019年5月6日より4日間の日程で、上海浦東新国際博覧中心にて開催されました製パン製菓関連の展示会:ベーカリーチャイナ2019ですが、会場は、原材料、機械設備、包装関係に分かれていて、例えば五つあります機械関係の会場のひとつでさえ、東京ビッグサイトの各ホール以上の広さがありそうです。

 そのような訳で、とても1日ですべてを見て回ってくるのは会場に入って早々に無理と判断しました次第です。

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 そのような広大な展示会場で、日本企業も複数出展していましたので、そのような日本企業についてリポートすることにしました。

 今回は、原材料メーカーを紹介します。

不二製油(すみません、写真を取り忘れました)

 不二製油は中国へ進出し、油脂類の製造・販売を行っていますが、やはり事情は日本と少し異なっているようです。

 中国のパン製品に使用する油脂には、マーガリンが多用されています。

 日本ではパンの風味と言いますと、長時間発酵法によります熟成したアルコール臭やストレート法によります小麦の風味を楽しみますが、中国では小麦の風味を楽しむ習慣はまだ馴染みが薄いようです。

 そのため、無味無臭のショートニングを使用することがあまりなく、フレーバーの効いたマーガリンが好まれるとのこと。

 なんでも、中国では通常中国産の小麦がパンに使用されるそうなのですが、この小麦の風味があまり好ましいものではないとか。

 追って、中国産の小麦に関しても調べてみたい気がしています。

 余談ですが、ここのブースの周囲では、あたり構わず大音量で音声を流しているブーが密集していて、とても会話になる環境ではありません。

 運営サイドも、もう少し周囲への配慮を検討してもらえれば、と思った次第です。

理研ビタミン

 原材料メーカーが乱立する中国にあって、生地改良剤のように幾多のテストを経て改良が加えられたような原材料には、データの蓄積がある日本企業に一日の長があるようです。

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 理研ビタミンの製品も中国市場には広く浸透しており、生地物性、製品のソフトさ、日持ち等に多大な効果が認められています。

日清製粉

 中国産小麦が主に流通しています中国市場において、日本式の製粉技術で差別化をPRしていますのが、日清製粉です。

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 ブース内に入りますと、向かって左側には様々な成形方法を施した食パンの数々が並んでいます。

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 そして、何気にブース内の表示が日本語になっているところも、日本式を印象付ける構成になっているかと…。

 先の中国のパン事情でもご紹介しました通り、日本式の評価は至ってポジションにありますから。

 

 

街のパン屋さん ~ 豆一豆 から ブーランジェリー セイジ アサクラ へ

品川エキュートを歩いていると…

 『小麦と酵母 満』の食パンを購入して近くを歩いていると、ふと目に留まったあんパン屋さんがあったそうです。

豆一豆

 まめ - まめ? まめいちまめ? お店の名前は、なんて読むのだろう?

 正解は、『まめいちず』です。

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 東京駅の文字が焼き印で付けられています、このお店の一番人気「東京レンガぱん(287円 税込)」は、小豆が混ぜ込まれた生地の中に赤練り餡と白餡入りのオリジナルクリームの2層構造のあんぱんです。

 看板商品の東京駅の赤レンガをモチーフにしたあんパンですが、外観は上下面に焼色が付いていて、側面は薄っすらと付いている程度です。

 あんパンとしましては珍しい角形の形状に、(側面が白いことから)見た目にソフトなイメージが伝わってきます。

 おそらく、金属や樹脂のケースではなく、金属枠を使用して平天板に並べ、発酵・焼成を行ったのでは、と思います。

 このような製品は下火が十分に効いていますので、見た目の薄い焼色以上に火通りはしっかりとしていて、まったく問題ありません。 

BOULANGERIE SEIJI ASAKURA(ブーランジェリー セイジ アサクラ)

 品川駅北口を出て、品川プリンスの横を通って高輪警察署と消防署を過ぎたところにブーランジェリー セイジ アサクラがあります。

 こちらの食パンも、雑誌「&Premium」(アンドプレミアム)が選んだ、『日本の食パン 名品10本』に選出されているのですが、その商品はとても個性的です。

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 ここのベーカリーは、自家製酵母を使い分けているとか、種に非常に強い思い入れがあることが感じられます。

 それは購入してきたパンを見て、ある意味、日本人気質とは少し異なった感覚でパンを仕込んでいるように思えてきたことに因ります。

 まずは、名品10選に選出された食パン(アロマホップ生クリーム食パン(389円 税込))ですが、外観や内相以上に風味を最優先している印象を受けました。

 ある意味、支持されるお客さんも分かれると思いますが、店舗の個性・カラーが全面に出されていて、とても好感が持たれます。

 このような主張のあるパンは、私も好きですし…。

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 その他に気になったところで、発酵バターを使用していますクロワッサン(275円 (税込))とアサクラ人気No.1のチーズカレー(346円 (税込))を購入しました。

 クロワッサンは、作り手のこだわりが見た目の外観にそのまま出てきますので、食パンに次いでよく購入する製品です。

 サックリした食感と食味、発酵バター由来の風味は、満足できるものです。

 そしてチーズカレーは、スイス産のグリュイエールチーズを使用しているとのこと。

 ヨーロッパでは、チーズフォンデュラクレットといった主に調理用に使われる材料です。

 このチーズを選定した理由は直接作り手の方に聞いてみないと分かりませんが、きっと強いこだわりがあるのでしょうね。(…やっぱり風味?)

 

 

街のパン屋さん ~ 小麦と酵母 満(MITSURU)

食パンの名品

 ここ最近のブームに食パンが挙げられることは間違いないと思います。

 パンに見られていましたプチ贅沢といったトレンドが、ついに食パンにまで波及してきたといったところでしょうか。

本来、食パンは限りなく実用品に近いポジションにあったと思いますが、近年はかなり嗜好品の傾向が顕著です。

 以前に、乃が美の高級生食パンを紹介しました際、雑誌「&Premium」(アンドプレミアム)が選んだ、『日本の食パン 名品10本』にランクインしていました、

・東京都新宿区 : 小麦と酵母 満

のパンを、今回家族に購入してきてもらいました。

 場所は、品川駅構内エキュートです。

 小麦と酵母 満は、濱田家の姉妹店として2005年にオープンした店舗で、主にエキナカの商業施設に展開しています。

 元の濱田家は、小麦や酵母などの素材を生かした地域密着型のベーカリーをコンセプトに展開しているそうですが、HPを見てみますと、既に海外へも進出しているようなんですね(HAMADAYA U.S.A.)。

 確かに、海外での日本式のパンは非常に認められていますから、本物が店舗を構えれば、それは確実に話題になりそうです。 

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 やはり、食パンの名品と謳われていますプルマンブレッド(1斤 340円税込)は外せません。

 本店まで行けば、なにか情報も得られたかもしれませんが、現時点で分かることは”国産の小麦を使用している”、程度です。

 製法も他の原材料も、明確ではありません。

 とは言いながらも、とりあえずトーストして食べてみました。

 最近の食パンの傾向として、甘みを感じる商品が多いことは満のプルマンブレッドに関しても同様です。

 内相は、気泡が細やかですから、クラム全体の色も白く見えます。

 食べてみますと、想像通りのしっとり感です。

 クラストの焼色も、ほんのちょっとだけ薄くも感じますが、概ね一般的な濃さではないでしょうか。

 見た目においしさを感じる焼色ですね。(専門的に言いますと、彩度と色相角度が、です)

 それと今回は、濱田家で人気の豆パン(180円税込)も一緒に購入しています。

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 少し形態は異なりますが、東北地方のソウルフードにあります豆パンも結構大きめの豆が見えることでは同様です。

 アクセントとしても、好まれる理由なのでしょう。

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 乃が美のHPに、デッキ式オーブンで食パンを焼成している様子が写されている旨を紹介しましたが、満のHPでも画像が載っています。

 ここでもデッキ式オーブンで焼成しているようで、しかも機種は乃が美と同様にコトブキベーキングマシン社製のデッキ式オーブン:キャメルオーブンが掲載されていました。

 同オーブンは、確かに焼きムラの少ない安定した焼成が特徴の製パン設備といった認識を持っていましたが、人気のベーカリー2店で採用されているところを見てしまいますと、他のベーカリーでは?、といった興味も沸いてきてしまいます。

 

 

 

ベーカリーチャイナ ~ 1日目②ミキサー

ミキサーの選定 ~ 中国編

 中国に来るようになって、少し前から気になっていたことがあったのですが、今回の展示会参加でその思いは確定的なものとなりました。

 製パン関連の展示会ですから、当然、ミキサーも数多く出展されているのですが、中国では小ロットでパン生地を仕込むミキサーはスパイラルミキサーと決まっているような感じです。

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 日本でもスパイラルミキサーは使用されていますが、より一般的なのは縦型ミキサーではないでしょうか。

 これは、ミキシングの最終段階:中高速で生地をフックでボウルに打ち付ける動作がありますが、この際にパン生地に掛かる圧力が日本式の生地作りに影響していると考えています。

 低速のミキシングだけでは生地ができません、これは広く知られている事象です。

 流体(パン生地)に所定の圧力を与えるためには、一定以上の速度が必要になるから、と私は理解しています。

 日本式のパンが世界的にも注目を集める中、ミキサーの違いが特徴を出すためのひとつのポイントになっている気がしてなりません。
 そして、もうひとつ重要なのは、もし連続生産ラインでの製品を想定して、ラボでの製パンテストを行う時のミキシングです。

 横型ミキサーは、中国でも一般的に使用されているようですが、パン生地を混捏するメカニズムは、スパイラル式よりもどちらかと言いますと縦型ミキサーのそれに類似しています。

 ですから、生産ラインで横型ミキサーを使用している工場の試作室で製パンテストを行うのであれば、縦型ミキサーを選定すべき、という結論に至る訳です。

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 どうも、中国市場で縦型ミキサーはケーキ用として浸透しているようです。

 でも、形状が同じならパン用としても使えるのでは?、と思われた方もいるでしょう。

 上の写真を見て下さい。ボウルの固定はただ載せているだけ、そしてボウルには帯板もないので強度的にはまず耐えられないと思います。

 ちなみに、このメーカーは中国大手の製パン機械メーカーだそうですが、パン用での使用は”壊れる”という理由で禁止されているそうです。

 あの”パンッパンッパンッ!”とパン生地を打ち付ける状態を知る製パン作業者は中国にはほとんどいないということかと思います。

 その他に、少し気になったものを数点紹介します。

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 えっ、あのベイクテック(アメリカ)が小型ミキサーを作った?、と思いきや、全然別の会社でした。

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 日本のカフェでちょっとしたブームになりましたコンパクトシステム(3段程度のコンベクションオーブン+1枚差しのデッキ式オーブン+5~6段程度の発酵室)が、しっかりとラインナップされています。

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 大阪のベーカリーで話題になりましたネコ型の食型も見られ、隣にはハート形も並んでいました。