黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

ホールセールのパン ~ ロングライフ商品

 とりたてて珍しい訳でもないのですが、スーパーへ行きますと消費期限が迫ってきて安売りの対象となりましたパンのコーナーをよく見かけます。

 

 おいしく食べられる期限を延ばした商品の需要は(いろいろなシーンを想定してみても、・・・例えば令和元年に消費者庁から施行されました食品ロス削減推進法とか)あると思いますが、そこにはどのような工夫と課題があるのでしょうか。

 

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【 目次 】

 

消費期限と賞味期限

  消費期限は、腐敗等の品質劣化に伴って安全性を欠くおそれがないと認められる期限と定義され、パンであれば一般的に常温保存で4~5日です。

 

 期限が比較的短く、品質が急速に劣化する食品に適用されます。

 

 一方、賞味期限は、期待される全ての品質保持が十分に可能である(つまり、おいしい)と認められる期限を指します。

 

ロングライフ商品のベーカリー

 私はロングライフのパンと聞きますと、まず最初に思い浮かんでくるのがコモ(COMO)です。

 

 ここのパンは製法としてパネトーネ種を使用して、『3日間熟成発酵』『保存料無添加』を謳っています。

 

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 クリームこまち(賞味期限:2020.05.04 購入はすべて2020.03.22)は、おそらくプレス天板を使用し、上面を板で被せて焼成しています。

 

 おそらく、包餡による中心部の膨張を防ぐ為かと。

 

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 デニッシュチョコ(賞味期限:2020.04.19)は、プレス天板を使用し、そのまま焼成しています。

 

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 そして、メロンパン(賞味期限:2020.05.09)ですが、焼成方法はデニッシュチョコと同様と思われるのですが、中央部分の凹みが気になります。

 

 もしかして、わざと凹ませているとか(凹むような設計の意味も含めて)。

 

 それで、どの商品の形状も類似した平たい形状です。

 

 生地中の水分が飛び易いように・・・?

 

 その他のメーカーでは、敷島製パン、パネトーネ種を製造していますパネックス、天然酵母パンのデイプラス等があります。(機会を見つけて、追って紹介します)

 

ロングライフの方法

酵母

 ・・・ 乳酸菌の生成する乳酸は、食品のpHを酸性にすることにより、有害な菌の生育を阻害することが一般的に知られています。

 

 酵母と乳酸菌の複合体であるパネトーネ種は、pHを酸性に調整し、カビ等の繁殖しにくい生地環境を形成していると考えられています。

 

吸水

 ・・・ 生地中の水分活性の低下によって、菌の増殖を抑えます。

 

糖量

 ・・・ 浸透圧の向上によって、菌の増殖を抑えます。

 

アルコール製剤

 ・・・ 商品名で、アンチ(抗)モールド(カビ)というアルコール製剤が有名ですが、エチルアルコールを粉末化し、これを特殊なフィルム包装紙を用いて小袋(小さいもので3×4cm)に充填したものです。

 

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 その小袋を食品包装に封入すると、小袋の中の粉(粉末アルコール)からアルコールが気化して、菌の増殖を抑えます。

 

 アルコール噴霧 ・・・ 製品の包装直前に、アルコールを粉末化します。

 

その他

 ・・・ ガスバリア性の高い包装紙の使用

 

 つ~ま~りっ! あの手この手を駆使して、今の保存性が保たれている訳です。

 

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 もちろん、工場で働いている作業者のみなさんの衛生管理もあってこその品質です。

デニッシュペーストリーの層には手間暇が掛かっているんです

 最近、近所にオープンしました焼き立てパン屋さんのanopanですが、期間限定で『いちごのパン』を発売したのだとか。

 

 早速、イチゴのパン目当てに行ってきました ♪

 

www.santa-baking.work

 

【 目次 】

 

anopanでパンを購入

 

 AM10:00の開店に合わせてお店に到着すると、既に駐車場は空いているスペースが1台分のみ!

 

 そして、お店の前には10人ほどの行列が・・・。

 

 まだまだ、人気は継続しているようでよかったです。

 

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 ショーケースの奥には、焼きたてのパンが並んでいますが、バゲット、あんバタ、クロワッサン等に加えて、お目当てのいちごのパンを購入です。

  

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 ただ、このパン、随分いちごにこだわっているようで、400円(税込)と結構高価なお買いものでした。

 

デニッシュ生地の層がきれいで・・・

 

 やっぱりデニッシュは早く食べた方がおいしいから、と帰宅して早々に食べようと思った時、このパンの整った層に気付きました。

 

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 私にとって(おそらく一般的にも)デニッシュのおいしさは、まずクラスト部のサックリとした食感で、それは1層1層が順次軽い歯応えで崩れていく様に他なりません。

  

 これまで、anopanにはシート生地の商品がクロワッサンしかありませんでしたが、改めて今日買いました商品を見てみますと、こちら(クロワッサン)の層もきれいに出ています。

 

 ここまでの層を出すには、基本に忠実に丁寧に作っているであろうことが推測されます。

 

シート生地のシーティング

 

 ここで、デニッシュ生地の層を出すためのシーティング作業について解説します。

 

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 まず、生地は折込み油脂の倍程度の面積に伸ばして、上図のように油脂を45度ずらして置きます。

 

 そして、角の生地を内側に折り込んで2層のシートを作ります。

 

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 そのシート生地を3倍程度の長さにシーティング(延展)してから、三折りにしますと(2層×3折-2層=)4層のシート生地ができあがります。

 

 この作業を繰り返しますと、2回目の三折りで(4層×3折-2層=)10層のシート生地が、3回目の三折りで(10層×3折-2層=)28層のシート生地が、できあがります。

 

気を付けるべきは生地温度

 

 ただし、この作業には注意点があります。

 

 生地(=折込み油脂)の温度です。

 

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 シート生地はリバースシーターと呼ばれます装置で延展する時に、生地と油脂が同程度に伸びるよう、5~8℃程度に冷やして作業します。

 

 一般的に折込み油脂のバター等は5℃程度で固まり始めますので、それ以下の温度では伸び難くなってしまうからです。

 

 そして、1回のシーティング作業で生地は10℃以上温度が上昇することもありますので、油脂が生地中に極力溶け出さないよう、一度冷蔵庫で生地を冷やす必要が出てくる訳です。(なお、個人個人の作業の方法によって、このあたりの条件は異なってきますので念の為)

 

 どうですか、こだわってきますと、どんどん作業に手間暇が掛かってきます。
 

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 ちなみに、レシピには生地や冷却用の冷蔵庫の温度が記載されている例が多いのですが、それに劣らず装置の保管状態も非常に重要です。

 

 考えてもみて下さい!

 

 金属の塊であるローラーが直接生地に接しているのです。

 

 ローラーの持っている熱容量と熱伝導性を考えれば、もし常温(25℃)に置かれたリバースシーターでシート生地を伸ばせば、どのようなことがパン生地に起こるのかを!

 

 製パンの作業室のエアコンは、決して作業者だけのためとは限らないのです。

 

ホールセールとリテイルの食パンで成形方法の違いが示すものとは?

 突然ですが、高級食パンブームに沸きます昨今、食パンの内相の細やかさだけを見るのであれば、私は大手製パンメーカー(もちろん、日本)のホールセールの食パンが一番ではないかと思っています。

 

 さてさて、今回はどんなお話になるのやら・・・。

 

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【 目次 】

 

食パンの成形

 来週に予定されていますパン技術研究所(パン学校100日コース)の授業用資料をまとめていましたところ、ふと食パンのモルダーのところで目が留まりました。

 

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 私が通常考えています成形方法では、ベンチタイム後の圧延ローラーで極力ガス抜きをし、粗い気泡を除きます。

 

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 当然、どこまでも薄く伸ばしてガス抜きができる訳ではありません。

 

 当たり前ですけど、薄く延ばし過ぎれば、伸びに耐えられない部位の生地は裂けて、表面が荒れてしまうからです。(つまりは、ミキシング等の前工程もとても重要ということ!)

 

 このようにして、あの細やかな内相ができあがっていく訳です。

 

 ところが、①のように圧延してしまいますと横幅が出てしまい、リテイルベーカリーでよく採用されています俵成形を考えた時に生地が食型に収まらなくなってしまいます。

  

 では、横幅が出ないように(②のように)ガス抜きを抑えればいいのでしょうか?

 

 ・・・それでは内相が粗くなってしまいます。

 

 そうなってきますと、なんらかの方法(ここでは、このような表現で勘弁してください!)で生地は薄く圧延するけれども横幅が出ない方法(③)をパン職人の方々は身に付けておられるということなのでしょう。

 

U字成形と俵成形の比較

 

 少し、U字成形(N字やM字も同様です)と俵成形の違いをイメージしてみます。

 

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 一般的にU字成形で生地を型詰めする場合、上図のように食型の内側は隙間なく生地で埋められます。
 

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 実際には写真上側のような感じです。

 

 そして、同じ量の生地を俵成形した場合、成形した生地の太さが変わることで、これだけの隙間ができるということがお分かりになるでしょうか。(ここでは違いが分かり易いように縦方向に詰めています)

 

 計算上のイメージも実際の型詰めの状態も同様の結果となっています。

 

最終発酵のイメージ

 

 すると、最終発酵のイメージとして、U字成形ではシンプルに上方向へ延びる力が生地に加わることと比較して、俵成形では最初に横方向へ伸びて隙間を埋めた後に上方向へ伸びようとします。

 

 そうすることで、成形時のわずかな詰め方のバラツキが緩やかな膨張によって、きれいに揃ってくる効果が期待できるのではないでしょうか。

 

 なんとなくなのですが、このような心配りがリテイルベーカリーの食パンには感じられます(もしかして私だけかも?)。

 

連続生産ライン

 

 一方、大型の食パン用連続生産ラインでは、画像のようなクロスモルダーと呼ばれます装置を採用している製パンメーカーも多いと思います。

 

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 圧延を行いますのは、①のローラー部分です。

 

 この装置がクロス・・・と呼ばれます所以は、圧延された食パン生地がロール成形されるまでに一度方向を90度・直角に変えて送り出す(②⇒③)ところから来ています。

 

 普通に考えて、一律の加工方法を行う装置で匠の対応まで求めるのは少々酷ですね。

 

 リテイルベーカリーでもモルダーは使われていますが、パン職人の方々はそれを自分の手足(失礼しました、足はないですね (^^ゞ )のように使いまわしていますから・・・。

 

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 とは言っても! なんとかして、リテイルベーカリーの成形方法がホールセールの製造ラインでできないものだろうか・・・。(と、思案中!)

 

 

 ツイッターで、補足等をささやいています。

黒猫サンタ博士のパン作り研究所 (@SantaBaking) | Twitter

敷島製パン ~ パンを楽しむ 春のプレゼント

 確定申告と来週のパン学校の資料作りに追われ、なかなか市場のチェックもままならない中、そういえばヤマザキ春のパンまつりと同じ時期に敷島製パンも確か春のキャンペーンがあったはず・・・。

 という訳で、バタバタしながらも今回は敷島製パンの春のキャンペーンをリポートです。

 対象商品は、実は数多くあるのですが、目立っていた商品に絞らせて頂きました。

 

【 目次 】

 

超熟食パン

 やっぱり対象商品で一番目立つ棚には超熟食パンですね。

 

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 超熟食パンの棚には、角形食パンとそのハーフパック、そして超熟国産小麦が並んでいます。

 点数をチェックしますと、1斤の超熟食パンで1点です。

 応募に必要な点数が3~13点ですので、最低でも食パンなら3斤が必要となります。

 ところで、今頃気が付いたのですが、超熟シリーズの商品をまだリポートしてませんでした。

 この日本を代表する商品を・・・。

 でも、この食パンの開発や超熟国産小麦に使用されている『ゆめちから』にも在籍中には少なからず関わっていましたので、返って奥歯にものが引っ掛かったような消化不良の記事になってしまうかもです。

 ・・・悩ましい。

 

超熟イングリッシュマフィン

 超熟食パンのすぐ下の段には、超熟イングリッシュマフィンです。

 

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 イングリッシュマフィンという商品は、敷島製パンが随分な時間を伴って、手塩にかけて育ててきた商品です。

 この商品に関しては、敷島製パンの独壇場です。

 イングリッシュマフィン市場も、かつてブームの大きな波が来たことがありました。

 その時には、多くの製パンメーカーがイングリッシュマフィンを市場へ送り出してきましたが、それでもやはり敷島製パンのイングリッシュマフィンの地位は揺るぐことがなく、現在に至っています。

 個人的にも、大変好みのパンです。

 横から半分に割って、トーストし、しっかりバター(バター風味のマーガリンでも可)を塗って食べるのが最高です。

 この食感は、他の商品では経験することができません。

 

超熟フォカッチャ

 敷島製パンはフォカッチャにも湯種を使うのですね。

 

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 この商品は、私が退職後に開発された商品ですので、開発のプロセスはよく知りません(当たり前ですけど・・・。もっとも、知っていたとしても明かすなんてことは到底できないですし・・・。)。

 ただ、フォカッチャという歯切れに特徴を持った商品に湯種を使用するということは、しっとりした食感に独自性を求めたのかと推測します。

 

今回のプレゼントは?

 オーブンポットラウンド、

 コーヒーメーカー、

 ガスホットプレート(ガスコンロ式のホットプレート)、

 プレートとマグカップのセット、

 発酵フードメーカー(ヨーグルト以外にも作ることができる?)

となっています。

 個人的に、点数を集めれば必ずもらえるプレゼントしかキャンペーンでは買ってきませんでしたので、次(?秋)まで待ってみようと思っています。(抽選は、なんとなくもらえなかった時に落胆しそうで・・・。)

 

Wチャンスのル・オーブン

 ル・オーブンというのは、敷島製パンが展開しています焼成後冷凍パンのシリーズです。

 私が、今、注目している技術のひとつです。

 正直なところ、品質のレベルは高いです。

 キャンペーンのWチャンスに持ってくるようなところ、会社としての力の入れ具合も伝わってきますね。

 

 

ツイッターで補足等を呟いてます。

街の菓子屋さん・・・のパン ~ シャトレーゼの無添加シリーズ

 街でよく見かけるシャトレーゼ、ここではパンも売っています。

 先日、ここで遭遇した些細なことなのですが・・・。

 

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【 目次 】

 

店内を見渡すと 

ありました、無添加食パン

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 湯種法を使用した商品です。(もっちり感、を大きく謳っていますね!)

 無添加というだけあって、イーストフード、乳化剤、保存料などの添加物は使用しておりません、と、あります。

 価格は、180円(税別)。

 スーパーやコンビニ以外で、この価格を出されていますと、なにやらとてもお得感があるような気になってしまいます。

 きれいにホワイトラインも出ていて、焼色は気持ち薄めといったところでしょうか。

 今のトレンドのような気もしています。

(う~ん、一般的な焼減率の値を考え直した方がいいかも…。)

 

バターが香るクロワッサン

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 フランス産発酵バターをたっぷり使用した商品です。(4個入り 280円)

 巻き目が揃っていて、層もきれいに出ています、外観形状は良好です。

 持ち帰って、自宅で軽くトーストするとさらに一層、バターの風味が楽しめるのではないでしょうか。

 

玄米まるパン

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 1袋(2個入り)にレタス2/3個分の食物繊維が入っているそうです。

 そして、その玄米まるパンにクリームチーズを充填した商品も。

 

テーブルロール ぶどう

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 実は、私はレーズンが苦手です。

 ところが、この商品には粒まるごとのレーズンではなく、細切れになって混ぜ込んであります。

 もしかして、このレーズンパンなら私でも食べられるかも・・・。

 次回は、購入して試してみようと思っています。

 

バターロール・・・ん?

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 商品札にはバターロール(4個入り 180円)とあるのですが、一般的なバターロールと言えば・・・。

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 こんな感じですよね。

  一瞬、ペコバのネタを思い出しました、縦にロールしたバターロールがあってもいい・・・。

 時を戻そう。

 少し興味が湧いてきましたので、結局、購入して食べてみることに。

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 包装は、包装紙の閉じ口がライトシールとなっていて、クロージャーで留めてあります。

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 高さがあってサイド面の焼色が薄いので、おそらくセルクルを使用しているものと思われます。

このバターロールの成形方法

 商品を上面から見ますとQ字成形のようにも見えますが、おそらくシート生地から整形していると思います。

  

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 珍しい成形方法ですが、厚めのシート生地を1周半程度にロールして、その生地を縦カットした後に、セルクルへ詰めているのでは。

 あとは、そのまま最終発酵を取って、焼成です。

 ちなみに、このバターロールを食べた感想ですけど、食感は非常に軽くて歯切れがよく、一般的なバターロールの歯ごたえとは全く異なる食感でした。

 バターロールという名称の由来については、フランス・ブルターニュ発酵バターを使用していることで、バターへのこだわりを伝えたかったのでは、と理解しました。