黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

北海道香熟パン・極み・・・の前に『禰豆子の竹パン』

 今回は北海道素材のパンについてリポートする予定なのですが、その前に紙面を割いて昨日ローソンから発売になりました、鬼滅の刃とのコラボ商品『禰豆子の竹パン』についてご紹介をさせて頂きます。

 

【 目次 】

 

禰豆子の竹パン(130円 税別)

 商品は、その名の通り、アニメ鬼滅の刃の主人公:竈門炭治郎(かまどたんじろう)の妹:禰豆子(ねずこ)が口に加えている竹をイメージしたローソン限定商品です。

 

f:id:santa-baking:20200603021215j:plain

 

 とは言いながらも、パイ生地にチョコクリームの組み合わせで、生地がパンじゃない(パン酵母が入っていない)と突っ込みたくなりますが、まあ細かいところには目を瞑りましょう。

 

f:id:santa-baking:20200603021252j:plain

 

 充填しましたチョコクリームが見えるように横方向のカット(竹の節をイメージ)が入っていることに加えて、ガス抜き用の小孔が開けられています。

 

 そのカットと小孔は相互の位置がずれていますので、成形時には別々の器具でシンクロされずに運転しているようです。

 

 食べてみて、抹茶を練り込みましたパイ生地のサクサク感とチョコクリームのマッチングを楽しむ・・・、と(実際にそうですので)書きたいところですが、まあパッケージを見ながら、フムフムと食べていました。

 

北海道香熟パン 極み

 名古屋市北区にあります、北海道香熟パン 極みでは、北海道の厳選素材を使用しましたパンが特徴のオーブンフレッシュベーカリーです。

 

f:id:santa-baking:20200603021338j:plain

 

 訪れました当日は、新型コロナの影響もあって店舗入口は開放状態で営業されていました。

 

f:id:santa-baking:20200603021459j:plain

 

 店内でも、店員の方とは飛沫感染防止のシート越しに注文と商品の受け渡しをします。

 

f:id:santa-baking:20200603021532j:plain

 

 今回購入しましたのは、上写真の食パン、あんパン、メロンパンの3品です。

 

 早速、帰宅して実食です。

 

旨角 390円(税込)

外観

 持った感じでやや重みがあり、しっとりした感じが伝わってきます1斤サイズの角形食パンです。

 

 焼色はやや薄めで、側面の(2玉)俵成形の跡や上部角のホワイトラインもきれいに出ていますね。

 

f:id:santa-baking:20200603021623j:plain

 

 この(1斤)サイズで、重量は427gと若干重めです。

 

 ソフトな触感ながら、凹み(ケービング)も起こしていませんので、比容積を低めに設定しているのでは、と推測します。

 

内相

 縦目のすだちがきれいに出ていて、よく生地が伸びていることが分かります。

 

f:id:santa-baking:20200603021705j:plain

 

 詰みやスジシマも見られません、成形から最終発酵もスムーズだったのでしょうが、もしかしますと(分割重量が大きめな状態で)成形時のガス抜きが軽めとなってしまい、角部の空洞が少しできてしまったかもしれません。

 

食味・風味

 クラストもクラムもソフトな食感のパンです。

 

 結局、小麦の銘柄までは分からず仕舞いでしたが、国産小麦でもここまでの高いレベルの食パンが焼けるという事は嬉しい限りです。

 

極みあん 朱鞠(しゅまり) 310円(税込)

 粒あんを生地に折り込んで1本編みした上に、あずきの鹿の子(かのこ)豆をトッピングした趣きのあるあんぱんです。

f:id:santa-baking:20200603021737j:plain

 

 生地はとてもソフトで、噛むとどこからでも粒あんに辿り着くため、最初から最後まで粒あんの甘さを感じながら楽しむことができます。

 

極みめろんぱん 200円(税込)

 外観形状はしっかりと高さも出ていて、良好な形状です。

 

 焦げたビスケット生地が製品周囲に羽根のように付いていて、アクセントになっています。

 

f:id:santa-baking:20200603021827j:plain

 

 食べてみますと周囲の焦げたビスケット生地がカリカリとした食感を醸し出していて、サクサクとした上部のビスケット生地と内側のソフトなパン生地とのマッチングが楽しめる商品です。

 

 味としましては、生地が甘すぎることなく、ブリュレ状態のビスケット生地の甘さと絡んで、バランスが取れています。

 

後記

 実は、今回、この北海道香熟パン 極みを訪れました理由は、ネット情報で粉に国産の強力粉『春よ恋』を使用している旨を見たからだったのですが、当日スタッフの方にお伺いしましたところ、北海道産の小麦粉を使用しているものの、春よ恋は現在使用していないとのこと。

 

 少し残念でしたが、このテーマはまた回を改めまして、解説していきたいと思っています。

 

サンタの豆知識

 新型コロナウィルスの影響下におきまして、スーパーでは棚から小麦粉やパン酵母ホットケーキミックスまで品切れになるという異常事態に陥っています。

 

 そのような中、日本の食糧事情は大丈夫なのか、心配になってきませんか。

 

 日本の食料自給率をまとめてみましたので、下の表を見て下さい。

 

f:id:santa-baking:20200603112536j:plain

 
 2017年までの調査で、日本の総合食料自給率は38%まで下がってきており、政府はこの状態を打破すべく、2025年には45%まで引き上げることを目標に掲げています。(本当に全力で取り組んでほしいと切に思っています)

 

 主だったところをチェックしてみますと、主食用のコメに関しましては100%を堅持しており、鶏卵、キノコ類、野菜、イモ類も比較的高い値を示しています。

 

 ところが、小麦、油脂類、大豆はその大部分を輸入に頼っていて、20%にも届かない状況です。

 

 さて、小麦をもう少し細かく見てみますと中力粉で作りますうどん用は60%まで国産小麦で賄っていますが、パンに至りましてはたったの3%に留まっています。

 

 大きな理由のひとつに、パン用の強力粉(高タンパク)用の小麦が日本では育種し難いことが挙げられます。

 

 全国の農業研究センターでは、研究を積み重ねて超強力粉『ゆめちから』の育種に成功したことに続き、より収量が高く、より病気に強い品種の開発に日夜努力されています。

 

 希少種:製パンエンジニアの私としては、なにか別の角度からお手伝いすることができないか、とも思う次第です。(ちょっと、風呂敷を広げ過ぎました。ご容赦下さい。)

 

杵つきミキサーでパン生地を捏ねる ~ 生クリーム食パン・陽だまり

 パン生地を捏ねるミキサーにもいろいろなタイプの機種があるのですが、今回は日本人に馴染みがあって、それでいて珍しいタイプのパン用ミキサーについて紹介します。

 

 焼き立てパン屋さんへ行きますと、おそらく作業場でもっとも目にし易いのは下図のような縦型ミキサーではないでしょうか。

 

f:id:santa-baking:20200601105905j:plain

 

 回転するフック(アーム)がパン生地をミキサーボウルに叩きつける時の独特なパン、パンッ、という音と共に、伸びる生地が出来上がっていきます。

 

 ところが、今回のミキサーを使った時の音は・・・、ペッタン、ペッタン、です。

 

 どのようなミキサーなのでしょうか。

 

【 目次 】

 

スタンピングミキサー

 和菓子屋さんの製造現場であれば、このような装置を見掛けることも多々あります。

 

 そう、餅つき機です。

 

f:id:santa-baking:20200601105939j:plain

 

 パン用に製造されているミキサーは、スタンピングミキサーと呼ばれていますが、生地を捏ねる動作は餅つきと概ね同様です。

 

 製パン製菓の展示会へ行きますと、いつも参加者の注目を集めている装置のひとつです。

 

 そして、このスタンピングミキサーを使用してパンを作っているパン屋さんが名古屋市東区にあります、食パン工房 陽だまり(2019年2月22日オープン・・・ネコの日ですね)です。

  

f:id:santa-baking:20200601110040j:plain

 

 店頭の立て看板には『杵でついた生地のパンは、非常に柔らかく日持ちします。さらに従来の撹拌型ミキサーでは不可能であった、高加水のパンを可能にしました。』と、あります。

 

 どういったメカニズムなのでしょうか。

 

f:id:santa-baking:20200601110143j:plain

 

 パン生地をミキシングする際の目的は、大きく二つあります。

 

 ひとつは伸びる生地を作ること、そしてもうひとつが吸水の高い生地を作ることです。

 

 生地を捏ねる際、必然的に流れを生じますが、この流れに対して垂直に掛かる力を圧力、流れに沿った方向に掛かる力を剪断応力と言います。

 

 そして、生地に圧力を掛けることに因って、吸水が上がることは平衡状態にある物質の法則(ル・シャトリエの法則)から容易に推測されます。

 

 つまり、上図で明らかに高い比率でパン生地へ圧力を掛けることが容易なスタンピングミキサーは、高加水の生地を作ることに適したミキサーと考えられる訳です。

 

食パン工房 陽だまり

 実際に店舗へ出掛けてきました。

 

f:id:santa-baking:20200601110219j:plain

 

 大通りに面した角地という立地です。

 

 今にもパンの香りが漂ってきそうな素朴で親近感のあるお店の中へ入ります。

 

f:id:santa-baking:20200601110247j:plain

 

 店内には食パンのメニュー表が・・・、当然、ミキサーの特徴が一番映えるであろう『超加水食パン』がお目当てです。

 

 ・・・ですが、残念ながらこの日午後に行きました時には既に超加水食パンは売り切れていて、代わりに生クリーム食パンを豆乳クリームあんぱん、メロンパンと共に購入して帰りました。

 

杵つき生クリーム食パン (2斤640円)

外観

 全体的に焼色はしっかりと付いています。

 

 持った感じも、しっかりした形状を保持している感覚が手に伝わってきます。

 

f:id:santa-baking:20200601110329j:plain

 

 重量を量ってみますと、748g(2斤:680g以上)と私の想像より軽めでした。

 

 確かにクラストはしっかりしているのですが、形状が凹んでいたりしていませんでしたので、てっきり生地重量を多めにして仕込んでいるかと思ったのですが・・・。

 

f:id:santa-baking:20200601110400j:plain

 

 そして底面ですが、フラットな面となっていることから、食型は穴なしのものを使用しているようです。(すみません、半切りしてから写真を撮っていないことに気付きました)

 

内相

 全多岐的に白い内相が特徴的です。

 

f:id:santa-baking:20200601110433j:plain

 

 クラスト部は着色している部分でくっきりとクラム部分とのコントラストができており、断面を見た目にもしっかりしたクラストの印象が強くなっています。

 

 クラムは、全体的な色が白いことからも推測できますように、膜は薄く、よく伸びており、気泡も細やかできれいな内相です。

 

食味・風味

 食べてみますと、口触りの時点でクラストにはしっかりした歯応えを感じますものの、ザクザクとした食感で歯切れと口溶けはとても良好です。

 

 デニッシュ食パンとも異なります、強いて挙げればメロンパンのビス生地もしくはスナックパンをさらに焼き込んだ感じの食感に幾分近いかと。

 

 この製品の特徴として湯種法も使用していますことから、クラムはもっちり、しっとりした食感に仕上がっています。

 

 けっしてソフトでふんわりとは言えないザクザクしたクラストは、180度特徴を違えたクラムとの食感の組み合わせで、私は初めての体験をしたのかもしれません。(嵌まる人は、他の食パンでは納得しなくなるかもしれませんね)

 

豆乳クリームあんぱん 180円(税別)

 豆乳生地に豆乳クリームと低糖つぶあんが包餡されている白焼きのあんぱんです。

 

f:id:santa-baking:20200601110505j:plain

 

 見た目通りのしっとりふわふわの食感です。

 

f:id:santa-baking:20200601110537j:plain

 

 そして、断面を見てみますと、このあんこの量です(ちょっとビックリですね! 饅頭並みに入っています)。

 

 もちろんパン生地は杵つきミキサーで仕込んでいます。

 

 粒あんは、低糖でしっとりしたタイプのものを使用していて、食べ口が白焼きの生地によく合います。

 

 最後に・・・、すみません、メロンパンの写真を撮り忘れてしまいました。

 

 きっと、超加水食パンを買いにもう一度この店舗へは行くと思いますので、その時に忘れずリポートするようにします・・・ご容赦の程。

 

エッグタルト アンドリュー & パスティス・デ・ベレン ~ スイーツのトレンドを顧みる

 以前、クイニーアマンの解説をしました記事の中で、1997~1999年のブームに乗っていましたパン・菓子類のトレンドについて記載しました。

 

www.santa-baking.work

 
▼平成9年(1997年) ベルギーワッフル

▼平成10年(1998年) クイニーアマン、 ロールケーキのスイーツ化

▼平成11年(1999年) エッグタルト、 シナモンロール

 

 今回は、その中で1999年にヒットしましたエッグタルトにスポットライトを当ててみました。

 

 いつもより、ほんの少しだけ International です。

 

【 目次 】

 

1999年ってどんな年?

 1999年は、マカオポルトガルから中国に返還された年になります。

 

 これを機会にマカオは日本でも注目度が上がり、多くの日本人観光客がマカオに足を運んだそうです。

 

 そして、そのマカオでロード・ストウズ・ベーカリーは1989年から独自のレシピでエッグタルトを提供、人気を博しており、本場の味を口にした日本人もまた多かったのではないでしょうか。
 

アンドリューのエッグタルト

歴史

 イギリス人のアンドリュー・ストウ氏が、ポルトガルリスボンへ旅行した際、1837年創業の老舗カフェ『パステイス・デ・ベレン』を訪れ、そこでリスボン名物のエッグタルト(パステイス・デ・ナタ)に出合ったそうです。

 

 その商品に感動したアンドリュー氏は、これをマカオで再現させようと、改良を加えたレシピで独自のエッグタルトをつくり上げました。

 

 そして、このエッグタルトを看板メニューとする『ロード・ストウズ・ベーカリー』を1989年、マカオ・コロアン島のコロアンビレッジにオープンさせたということです。

 

 なお、香港でもエッグタルトはメジャーなスイーツのひとつとのことなのですが、マカオのものとは少し仕様が異なるようです。

 

 マカオと香港でエッグタルトの食べ比べをしてみても、おもしろいかもしれませんね。

 

日本進出

 そして1999年には、そのロード・ストウズ・ベーカリーが『アンドリューのエッグタルト』という名で日本・大阪に進出しました。

 

 今では、大阪名物・道頓堀スイーツとして、販売されています。
 

 名古屋へは名古屋駅前の名鉄百貨店地下1Fに2015年10月に展開されていましたので、例のごとく家族に買い物をお願いしました。

 

f:id:santa-baking:20200528031720j:plain

 

 購入しましたのは、イチゴとプレーンの2品種です。

 

f:id:santa-baking:20200528031857j:plain

 

 プレーンは、サクサクのパイ生地に卵黄の色も鮮やかなカスタードが詰めてあり、高温で焼き上げたであろう、ブリュレ(焦げた)状態になっています。

 

f:id:santa-baking:20200528032147j:plain

 

 そして、イチゴの方はカスタードクリームの下に甘さ控えめのイチゴソースが充填されています。

 

 こちらもパイ生地の食感はサクサクで、溶ろけるようなフィリングとの相性はばっちりです。

 

パステイス・デ・ベレン

 ところで、確かにブームの火付け役はアンドリュー氏のエッグタルトなのですが、その元となったポルトガルソウルフードであるパステル・デ・ナタも気になります。

 

 パステル・デ・ナタの発祥は、ポルトガルの首都リスボンの西部・ベレン地区にあるジェロニモ修道院の厨房です。

 

 1820年ポルトガルで起こりました自由主義革命の際、現在では世界遺産になっているジュロニモス修道院は閉鎖されて、多くの修道士・修道女たちが追放されたそうです。

 

 そんな彼らが生きていくために売ったものが、修道院の厨房でひっそりと作られていたパステル・デ・ナタなんだとか。

 

 このお菓子は世に出されると大変な人気となり、ポルトガル中に評判が広がっていったそうです。

 

以前の訪問

 そのようなことを記述していましたところ、以前にポルトガルでこのお菓子を食べていたことをふと思い出しました。

 

f:id:santa-baking:20200528032540j:plain

 

 デジカメの写真を探していると、・・・ありました、2009年、今から11年前の写真が残っていました。

 

 私もアンドリュー氏と同じく、パステイス・デ・ベレンを訪れ、そこでパステイス・デ・ナタ(エッグタルト)に出会っていました。

 

f:id:santa-baking:20200528032628j:plain

 

 とにかく、店内は大変込み合っていて(今なら確実に3密!)、お店の外でイートインの受付をしたと記憶しています。

 

f:id:santa-baking:20200528032709j:plain

 

 そして、パステイス・デ・ベレンからほど近く、リスボン世界遺産ジェロニモ修道院があります。

 

 ここから伝えられたという秘伝のレシピを守って、パステル・デ・ナタ(エッグタルト)は作られていたのですね。

 

ミニミニ工場見学

 そのパステイス・デ・ベレンの店内でパステル・デ・ナタを頂きました折、席へ通されます通路の途中からたまたま製造現場風景を見ることができました。

 

 こちらの写真も11年前のものですので、今はどうなっているのでしょうね~。

 

f:id:santa-baking:20200528032246j:plain

 

 奥側が焼成室で、手前側が冷却室のようです。(さすがに成形の様子までは見せてはくれませんね。焼いているところも見られませんでした。)

 

 多段ラックも見えますが、冷却効率が悪いためでしょうか、台の上にズラッと焼成したパステル・デ・ナタが並んでいます。(使用されているプレス天板は、ヨーロピアンサイズ程の大きさですね。)

 

 奥に並んでいるデッキ式のオーブンは、おそらく電気式と推測します(ガス式であれば、ガスコックを操作する必要がありますので、こんなに密に並べて設置できないと思われます)。

 

 どこかの記事で、パステイス・デ・ベレンではパステル・デ・ナタを400℃のオーブンで焼成しているといった記載を見掛けました。

 

 普通に考えますと、400℃もの高温で電気オーブンを連続運転することは難しいと思いますので、ここに写っていますオーブンはパイ生地用のオーブンかもしれません(それはそうですね、秘伝のレシピを外から簡単に見られるような作業環境には普通はしませんから)。

 

 そして、もう一点不思議なのが、パステル・デ・ナタを載せていますプレス天板の色が黒い事。

 

 生地表面を焦がすのであれば、型の塗装は必要ないですし、輻射熱をパイ生地の方へ回す意図は何だろうか、と。(当然、テフロンの色ではないと思います。230℃で損傷を受けますので)

 

 ブリュレになるほどの最後の焼成方法とは・・・。

 

新型コロナでパンの宅配を考える ~ ②パンとエスプレッソと嵐山庭園

 本来なら、新型コロナでパンの宅配を考えるシリーズを続けて投稿すべきところ、私のバースデーネタで1回分抜けてしまいました。

 

www.santa-baking.work

 

 前回のおさらいになりますが、焼き立てパンの常温流通での宅配サービスについて製品を中心にリポートします。

 

f:id:santa-baking:20200522165026j:plain

 

 それではペンディングとなっていました、食パン系:2品種、菓子パン系:1品種、食事パン・総菜パン系の4品種、のリポートです。

 

【 目次 】

 

ムー

 『パンとエスプレッソ』を代表するメイン商品です。

 

f:id:santa-baking:20200522111137j:plain

 

 1斤サイズでキュービック形状、焼色はやや濃いめの食パンです。

 

 成形は、2玉俵成形ですね。

 

 意外なのは、使用されている原材料で、小麦、バター、砂糖、脱脂粉乳、塩、イースト(パン酵母とは書いてないです)、と比較的シンプルな構成となっていて、最近の主流となっています牛乳や生クリームが入っていない反面、2番目にバターとなっていて、ふんだんにバターを使用した商品となっているようです。

 

f:id:santa-baking:20200522111214j:plain

 

 スライス面ですが、やや上面・側面の凹みや気泡の大きさは気になりますものの、詰みやスジシマはありません、色白な内相です。

 

 食べ口は気泡の大きさから連想される通り、軽い感じの口当たりで、他のお店では体験できない食感かと思います。

 

www.santa-baking.work

 

 この商品の重量(比容積)を測定していませんが、もしかしますと私が焼こうとしています、高い比容積の食パンと被っているのかもしれませんね。(私も、形状が保持できるよう頑張りませんと!)

 

チーズブール

 ハード系の小型ブールで角切りのチーズが生地に混ぜ込んであります。

 

f:id:santa-baking:20200522111336j:plain

 

 この商品は、スライス・トーストして頂きました。

 

f:id:santa-baking:20200525090913j:plain

 

 大きな気泡も見えるのですが、思ったよりもしっとりした食感でゴーダチーズの食感がアクセントになっています。

 

 食味は・・・、昆布だしが配合されていているのですが・・・、チーズと一緒に食べず、生地だけで食べれば、と後悔です。

 

塩バターパン

 乳製品と油脂は、牛乳とバターのみで製造されています。

 

f:id:santa-baking:20200525090952j:plain

 

 表面の焼色から、おそらくコンベクションタイプのオーブンで焼成していると推測します(側面の片側の焼色が濃く、反対側が薄くなっています)。
 

f:id:santa-baking:20200525091028j:plain

 

 クラストはハード系の製品とまではいきませんが、やや引きのある食感となっています(食事パン系の商品でしょうから、このように設計されたのでしょう)。

 

ハーブソーセージ

 粉は小麦粉とライ麦粉、油脂としてはオリーブオイルを使用しています。

 

f:id:santa-baking:20200522111504j:plain

 

 すみません、断面の写真を撮る前に食べてしまいました。

 

 風味が特徴的だったのですが、エルブド プロバンスというハーブが使われていました。

 

京野菜のカレーパン

 京都らしく、京野菜を包んだハード系のパンです。

 

f:id:santa-baking:20200522111559j:plain

 

 万願寺とうがらし入りです。

 

フランボワーズとピスタチオ

 フランボワーズのライトパープル色が目を引く商品です。

 

f:id:santa-baking:20200522111643j:plain

 

 生地には、卵、牛乳、生クリーム、バターと贅沢に使用されています。

 

2種のぶどうパン

 小型サイズのぶどうパンです。 

 

f:id:santa-baking:20200522111733j:plain

 

 サルタナレーズンとサンマスカットレーズンの2種類のレーズンが使用されています。

 

f:id:santa-baking:20200525091118j:plain

 

 2種のレーズンの色合いが異なりますので、スライス面の色彩が映えます。

 

 生地の内相は、気泡が細やかで膜も薄く伸びています。

 

 食味・食感ですが、・・・すみません、レーズンは苦手なんです。m(__)m

 

あとがき

 パンの宅配を考えるにあたって、流通形態としては今回のような常温での商品を扱うケースと、もうひとつは冷凍した状態で流通させるケースが考えられます。

 

 常温の製品を購入しました場合には冷凍保存や解凍といった手間が省かれる代わりに、時間経過と共にパンの老化が進行しますので、おいしく食べるのでしたら時間を掛けることができません(できるだけ早く食べなければなりません)。

 

 実際に、このパンとエスプレッソでも宅配のセットに冷凍されたパンが含まれていて、返ってこちらの商品の方が多い程です。

 

 常温の製品に関しては老化の問題があるように、冷凍の製品に関しましては冷凍・保存・解凍の技術的な問題があります。

 

 ただ最近では、焼成後冷凍製品の品質も飛躍的に向上していますので、焼き立てに近い状態のパンを楽しむことができるアイテムも増えてきています(この件は、また別の機会に・・・)。

 

サンタの豆知識

パンの食感を計測する方法

 前回はパンの老化に関しまして、デンプンのβ化の解説をしましたが、それによって実際に食べた時に感じますパンの食感を客観的に定量化する方法はあるのでしょうか。

 

 実際にテクスチャーアナライザーと呼ばれます装置が開発されていて、数値は出せるようになっていますが、現時点で活用できるデータとしましては随分限定された項目となっているのが、実状です。

 

f:id:santa-baking:20200526102439j:plain

 

 これは、AACC(American Association of Cereal Chemists):米国の穀物化学学会が定めました計測手法に則って(のっとって)、パンのクラム(内側のソフトな部分)の食感を測定する際のモデル図です。

 

 一定の条件でパンのクラムを押さえて、その時に掛かる応力を測定する訳です。

 

f:id:santa-baking:20200526102400j:plain

 

 活用できるデータのひとつが『硬さ』です。

 

 これは、パンの老化の指標にも適用されますが、クラムを1回押した時の最大応力値で示されます。

 

 上グラフで、1日目⇒2日目⇒3日目とグラフの山の高さが大きくなっていますが、これが老化を指しています。

 

 そして、もうひとつが『もっちりさ』です。

 

 これは、パンを2回押して、上のグラフの斜線で示されました面積 ②÷① で計算されます。

 

 老化が進みますと、パンを推した後の復元力が低下して②の面積が小さくなるという訳です。

 

 その他の歯切れ、口溶け、弾力、しっとりさ等といった食感は、今でも人が官能検査で評価しているのが実状です。

 

新型コロナからパンの宅配を考える ~ パンとエスプレッソと嵐山庭園

 新型コロナウィルスの感染被害拡大の影響を受けて、日本では4月7日に1ヶ月の期間をもって緊急事態宣言が発令され(5月6日には、さらに延長)、国民には不要・不急の外出を各企業・店舗等へは営業の自粛がそれぞれ求められましたことは、みなさんがご周知されている通りです。

 

 この間、日本の経済活動は日を追う毎に停滞感を強めていく中、特に飲食関係の店舗ではイートインからテイクアウトや宅配へ活路を見出す動きも見られるようになりました。

 

f:id:santa-baking:20200522110034j:plain

 

 今回は、パン業界での宅配事情に関してリポートしていこうと思っています。

 

【 目次 】

 

パンとエスプレッソと嵐山庭園『パンと』

 私がここのオンラインショップのサイトを見る時は、いつも SOLD OUT の表示しか見たことがありません。(発売開始は、通常10時ジャストに全商品一斉に公開 )

 

 そのネット通販で絶大な人気を誇る『パンとエスプレッソ』の店舗のひとつ嵐山庭園から、家族がオンラインショップで"嵐山庭園はんなりセット"(3,100円  税込+送料500円) を購入してくれました。

 

 常温流通で、賞味期限は『できるだけ早めにお召し上がりください。』とのことです。

 

 なお、商品には今回のような常温流通のアイテムもあれば、冷凍されてクール便で流通している商品もあります。(こちらは、またの機会に別途解説します)

 

 さて、早速送られてきました宅配品を開けてみます。

 

f:id:santa-baking:20200522110134j:plain

 

 こんな感じで、中にはパンがぎっしり詰められています。 

 

f:id:santa-baking:20200522153155j:plain

 
 取り出してみますと、食パン系:2品種、菓子パン系:3品種、食事パン・総菜パン系が4品種で、計9品種が入っていました。

 

 その中で、今回は包餡の菓子パン系:2品種について記載します。

 

抹茶あんぱん

外観

 抹茶あんを手包みしてプレス型で焼成している感じです。

 

f:id:santa-baking:20200522110334j:plain

 

 上部にトッピングされていますのは、エスプレッソの粉末のようです。

 

 表面の色艶や焼きムラから、オーブンはコンベクションタイプのものを使用しているのではないでしょうか。

 

f:id:santa-baking:20200522110424j:plain

 

 デッキタイプのオーブンを使用していれば、製品下部で全面の着色が強くなるのですが、生地が接触している部分の焼色が薄くなっています。(フィリングの抹茶あんが滲(にじ)んでいるのはご愛嬌!)

 

 側面の焼色が濃いのも、対流している熱風が横から当たっている故ではないかと。

 

断面

f:id:santa-baking:20200522110538j:plain

 

 抹茶あんは、ずっしりと充填されています(食べがいがありますね~!)

 

食味・食感

 配合は、牛乳、生クリーム、バターで乳製品と油脂のすべてを賄(まかな)っていますので、包装紙の開封後に芳醇な香りが楽しめます。

 

 食感に関してはソフトでしっとりしているのですが、表面の独特の歯応えもあって、この商品の特徴を表していると感じました。(焼成方法によるものと推測しています)

 

ほうじ茶クリームパン

外観

 形状は、抹茶あんぱんと同様ながら、トッピングは前面にほうじ茶パウダーが塗(まぶ)してあります。

 

f:id:santa-baking:20200522110635j:plain

 

 側面にはくっきりとプレス型の跡が付いています。

 

 焼色は全体的にやや薄めです。

 

f:id:santa-baking:20200522110707j:plain

 

 冷却用のネットは専用のものを使用されているのでしょうか(製品の底面に、一度ネットに付着したであろうほうじ茶パウダーが、この商品に付いています)。

 

 側面と底面の焼色のコントラストは、抹茶あんぱんと同様ですね。

 

断面(すみません、今後、パンの並べ方は揃えるようにします。)

f:id:santa-baking:20200522110742j:plain

 

 フィリング上下の生地量が抹茶あんぱんとは正反対で、生地底部に多くの生地が寄せられています。

 

 大きな空洞ができていますが、パン全体の形状がしっかりと保持されていることは少々ビックリです。

 

 食感の歯応えと関連しているように感じます。

 

食味・食感

 噛んだ瞬間にほうじ茶の風味がいっぱいに漂ってきます。

 

 生地の配合は乳製品がやや抑え気味で、ほうじ茶の風味を邪魔しないように設計されているようです。

 

 食感は抹茶あんぱんに近く、生地自体はソフトでしっとりしているのですが、表面のクラスト部分には独特の歯応えがあります。

 

あとがき

 オンラインショップのメニューには、こんなものも・・・。

 

 フレンチトーストの作り方 ¥0 ※こちらはダウンロード商品です

 

サンタの豆知識

パンの老化とは

 パンの原料である小麦粉は約70%がデンプンであり、通常の状態はβデンプン(生デンプン)です。

 

 βデンプンはパンの焼成過程で水と共に加熱するとデンプン粒の膨潤化に続いて糊状態となりますが、この変化した糊化状態を「αデンプン」と言います。

 

 焼成後のαデンプンは温度が低くなるに連れて、時間の経過と共にβデンプンに戻ろうとしますが、このβデンプンに戻ろうとする過程がパンの老化と呼ばれるものです。

 

f:id:santa-baking:20200522105821j:plain

 

 パンは、焼成後から時間が経つにつれて水分が蒸発して硬くなり、デンプンの変質によって味は落ちて、香りの成分も蒸散して失われていきます。

 

 以前に解説しました配合中の油脂(の脂の部分)は、この水分の蒸発を抑えてパンのソフトさを保持することに寄与しています。

 
 なお、一度α化したデンプンがβ化した場合、焼成過程で見られます糊化温度以下の温度で(トースト時のように)再α化してパンは一時的に柔らかくなりますが、冷却後の硬化は著しくなります。

 

あとがき

 現時点で緊急事態宣言の解除に至っていません北海道と関東の1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)につきましても、来週の状況から解除を判断するようです。

 

 引き続きの緊張の手綱は緩めることなく、経済活動の再開を模索していくことになるのでしょうか、来週の動きに注目しています。