黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

街のパン屋さん ~ シニフィアン・シニフィエ

 最新の食べログ・東京 パン 人気ランキングを検索してみますと、


 東京都にあるパン屋のお店2,967件のランキングTOP20を発表!(2020年7月1日更新)で、次のように記載されていました。

 

 第1位 ラトリエ ドゥ プレジール 祖師ケ谷大蔵、成城学園前

 第2位 セントル ザ・ベーカリー 銀座一丁目、有楽町、京橋

(すみません、一度下書きに戻した以前の記事を再度アップしました。内容は以前のままです。)

 

www.santa-baking.work

 

 第3位 シニフィアン シニフィエ 世田谷本店 三軒茶屋、池尻大橋
⇒ 最高峰のパン、偶然見つけた!、パンドミとやらに感動 等々のコメント

 第4位 ブーランジェリー スドウ 松陰神社前、世田谷、若林

 

 というわけで、今回は東京出張の際に寄り道してきまして、東京での人気パン屋さん第3位のシニフィアンシニフィエへ行ってきましたので、リポートします。

 

【 目次 】

 

ホームページより

 シニフィアンシニフィエのHPを見てみますと、美味しさの7つの秘密、として、

 
 1.素材 ~美味しさ×栄養素

 2.発酵 ~手間と時間が美味しさの鍵

 3.高加水 ~パンであってパンでないほどのしっとり感

 「パンとは思えないほどしっとり・もっちりしてる」とよく言われます。

 4.気泡 ~大きな気泡は技術の証

 5.サイズ ~大きい方が美味しく焼ける

 6.オーブン ~日本に数台しかない窯で焼く
熱伝導がよく、石窯のような遠赤外線効果のあるルクセンブルグ ハイン社製のオーブンを使用。

 7.チーム ~パン作りはチームプレー

 

と、掲げられています。

 

 3と6のみ、のちの解説で参照して頂きたく、説明文を少しだけ残しました。

 

日本橋タカシマヤ

 前日は日本橋のビジネスホテルに泊まって、そこからの移動です。

 

シニフィアン・シニフィエ

 

 日本橋高島屋B1Fの一角にシニフィアンシニフィエの店舗はありました。

 

シニフィアン・シニフィエ

 

 そこで、ショーケースをのぞいてみますと、パン オ ヴァン 4104円!

 

 おいおい、いくら人気店だからってハーフでも2052円って、どういった価格設定?と疑ってしまいます。

 

 説明によりますと厳選した赤ワインを煮詰めて使用しているとか、・・・もしかしてワイン代?

 

シニフィアン・シニフィエ

 

 そして、気になったハード系商品では、国産小麦を使用したバゲットと40時間発酵させたバゲットに目を付けて、次の世田谷本店へ向かいます。

 

世田谷本店

 地下鉄の三越前から東急の三軒茶屋へは乗り換えなしで(テクテク)移動できるようで、このような時には i-phone の乗換案内アプリには本当に感謝します。

 

シニフィアン・シニフィエ 世田谷本店

 

 店舗は意外にも住宅街にあって、大勢の人達が行き交うような繁華街の雰囲気ではありません。

 

シニフィアン・シニフィエ 世田谷本店

 

 店内はショーケース内にハード系を中心とした商品が並んでいて、その奥では作業者の方が今まさに製パンをしている様子が感じ取れます。

 

 おそらく、ドイツハイン製のオーブン(まず間違いなくデッキ式)はこの奥にあるのだろうと思いながら店内を見渡しますと、左手奥にはこの先からが関係者以外立ち入りできないスペースとなっています。

 

 ちなみにドイツ製のデッキ式オーブンは、元々大量の蒸気を使用するドイツパンを焼くことができる仕様となっており、ハインの他、ミベやホイフトといった、その道では名をはせたオーブンメーカーがひしめき合って凌ぎを削っています。

 

 この日は、先述のバゲットの他、少し肌色の異なった商品4品を購入して、品川経由で新幹線に乗り込みました。

 

40時間発酵バゲット 1/2本 270円 税込

 帰宅して、まず一番気になっていました長時間発酵のバゲットを見てみます。

 

シニフィアン・シニフィエ バゲット

 

 成形はトラディショナルではなく、端は伸ばしたままの成形です。

 

 そしてフィッシュアイのような薄い色の粒々が表面に見えますが、きっとこれは問題ないのだろうと勝手に理解しました。

 

シニフィアン・シニフィエ バゲット

 

 断面はHPにもありますように、すごく艶々していて、たしかに光っています。

 

 気泡は粗くバゲットであれば良好な特徴なのですが、意外にも膜が厚いといった感じではなくて、膜の中に多数の気泡が入っているような珍しい内相です。

 

シニフィアン・シニフィエ バゲット

 

 なにより目を引いたのは底面に見られます、オーブン炉床との接地面です。

 

 一般的なバゲットであれば、オーブンでの焼成中にオーブンキックで生地表面が強く外側へ押し出されて、縦方向から見ますと円に近い形状にまで膨張します。

 

 その結果、炉床との接地面は非常に細い線状になって表れるのですが、このバゲットの底面はほぼ製品の幅と同程度の部分が炉床に接していた跡が付いています。

 

 すみません、比較の画像を探したのですが一般的なバゲットの底面の写真が見当たらず、いつかバゲットの解説をしたときに、いかにこの底面が特徴的なのかを解説したいと思っています。

 

 高加水の生地であれば、柔らかすぎて形状の保持は非常に難しくなりますし、加えてベタベタの生地を取り扱う作業は難航を極めます。

 

 配合は、小麦粉(フランス産、北海道産)、パン酵母、食塩、麦芽エキスのみで、小麦のおいしさが堪能できる一品でした。

 

 トーストして食べてみましたが、クラストの硬さとクラムのモチモチ感のコントラストは未体験のものでした。

 

オ ドゥ ブレ(チャバタ) 216円 税込

 イタリヤの食事パンとして定番のチャバタも売られていました。

 

シニフィアン・シニフィエ チャバタ

 

 チャバタは一般的な配合でも給水が高く、小麦粉に対して80%以上の給水を加えます。

 

 シニフィアンシニフィエの商品としては、馴染み易かったのかも。

 

クロワッサン オ ルヴァン 270円 税込

 ここの店舗で唯一の折り込みシート生地のパンです。 

 

シニフィアン・シニフィエ クロワッサン

 

 きれいに層も出ていて、普通においしかったです(簡単すぎるコメントですみません)。

 

パーネ トスカーノ 1080円 税込

 そして、こちらもイタリアの食事パンで、原材料には塩も使用していません。

 

 原材料は、小麦粉(北米産、ドイツ産、北海道産)、パン酵母麦芽エキス、となっています。

 

シニフィアン・シニフィエ パーネトスカーノ

 

 この商品、断面を見るためにカットしましたところ、パンナイフにべったりと生地が付着していました。

 

 ここからも吸水の高さが窺(うかが)い知れます。

 

シニフィアン・シニフィエ パーネトスカーノ

 

 クラムは、この商品でもツヤツヤしています。

 

シニフィアン・シニフィエ パーネトスカーノ

 

 そして、やっぱり底面は広い範囲が炉床に付いていたことを窺わせます。

 

 トーストして食べてみますと、バゲットと比較して断面が広い分、モチモチ感を強く感じます。

 

 あとで、他の食材をサンドして食べてみたら・・・、と思った時にはすでに食べきっていました。(一言で言ってしまいますと、おいしかった、と)

 

見て、食べて、思ったこと

 HPに記載の高加水(高吸水)の生地で仕込んでいるとなりますと、このもっちりとした食感やそこから来ます独特の風味食味も合点がいきます。

 

 そして推測されますこのような生地の取り扱いは、機械化された連続生産ラインでは非常にハードルが高いと言わざるを得ないと思っています。

 

 ベタベタで流動性が高く成形の装置でも通らない可能性が高い、さらには直(じか)焼きでさえも、形状の確保が難しい・・・。

 

 な~んて、そんな難しそうな課題があるからこそ、考えることが楽しくなってくるというものです。

 

 偏屈なエンジニアは、これからもパン作りに携わりながら過ごしていく所存です。

 

 最後に、まだ行ったことのない、第1位 ラトリエ ドゥ プレジールと第4位のブーランジェリー スドウへも、今後、いつか行ってみたいですね。

 

おいしくパンを焼く技術 ~ オーブンの下火・伝導

 パンの焼成工程でほぼ共通して必要とされるのが、焼成初期の強い下火(生地底面からの加熱)と言われています。

 

 パンを焼く時の下火で生地へ伝わる熱の形態は伝導しか考えられませんが、オーブンの選定や使い方でその熱量は大きく異なってきます。

 

パン オーブン

 

 今回は、オーブンの形式や焼き方で、どのようにパン生地へ熱が伝わっていくのか、そしてその効果について解説したいと思っています。

 

【 目次 】

 

デッキ式オーブンの下火

 ここではイメージしやすい様にパン生地は天板もしくは型に入れられて焼成するものを考えます。

 

 バゲットのようなハースブレッドでは直焼き(じかやき)で焼成する製品もあるのですが、それに関しましては最後に少し触れていこうと思っています。

 

 デッキ式オーブンのように、炉床に石質板を有するタイプでは炉床が保有している熱量が急激に天板へ流れ、急速に生地底面の温度が上昇します。

 

パン オーブン

 

 生地底面の温度が上昇しますと、発酵工程で生成されました炭酸ガスが溶出したり、アルコールが蒸発したりしてオーブンキックと呼ばれます体積膨張が生じます

 

 このオーブンキックは生地上面が糊化で固まらない内に充分な作用をさせることで、効果的なボリュームアップを図ることができますので、そのような意味ではデッキ式オーブンのような炉床はボリュームのあるパンを焼くのに適したオーブンと言えます。

 

下火の温度コントロール

 下図で、オーブン内に生地が投入されたことで温度センサーが温度の低下を感知し、ヒーター電源が入った状況から推測してみます。

 

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 最初に①ヒーター温度が上がり、続いて②そのすぐ上部の空間が自然対流で加熱されますが、ほとんど変わらないタイミングで②炉床の底部も輻射熱で加熱されます。

 

 続いて③炉床下部の空間が暖められて、温度センサー位置の温度が設定値に達し、ヒーターの電源が切れます。

 

 炉床の材質と空気とでは[比熱×密度]の値が2000倍ほど違いますので、一度パン生地に流れた熱量を補充するには、随分時間が掛かることが推測できます。

 

 焼成終了までには炉床の温度も設定値へ復帰しますが、焼成初期の段階でどれだけの熱量を炉床が持っているかで、焼成初期の下火の効果はほぼ確定することをお判り頂けましたでしょうか。

 

コンベクション式オーブンの下火

 縦に数段並べて焼くことができるコンベクション式オーブンでもパン生地は天板から熱を受けますが、デッキ式オーブンと比較しますと、随分、状況が変わってきます。

 

パン オーブン

 

 コンベクション式オーブンでは炉内の熱風を媒体として熱をパン生地へ伝えますので、パン生地が並べられている天板より熱容量の低いパン生地の方が先に温度上昇します。

 

 つまり生地内部の炭酸ガスやアルコールが体積膨張を起こそうとしても表層のパン生地の方が既に糊化して伸びない状態も起こり得ます。

 

 それでは、コンベクション式オーブンではボリュームのあるパンは焼けないのでしょうか。

 

 いいえ、そのようなことはありません、層状の部分が縦方向に伸びていくデニッシュ等のペーストリー類や型で熱風が遮断されています食パン等の製品は問題なく、ボリューミーな製品を焼くことができます。

 

 また、あんパンやバターロールのようなソフトなパンを焼成する場合には、最終発酵を少し長めに取ったり、(機能があれば)風速を落としたりして対処します。

 

 ただ、オーブンのタイプによって加熱の特性が変わってきますので、得手不得手があるといった感じでしょうか。

 

 誤解のなきよう、デッキ式オーブンでもコンベクション式オーブンでも一通りのパンは焼成できます、焼成できますが、あくまでも特徴があるという事です。

 

下火の温度コントロール

 前述の通り、コンベクション式オーブンでは下火の設定がありませんので、温度や風速を調整しますと下火と上火は同時に変化します。

 

f:id:santa-baking:20181028233946j:plain

 

 オーブンでの独立した下火のコントロールは難しいのですが、天板の材質をスチール⇔アルミと変えることで、上火と下火のバランスを調整する方法もあります。

 

伝導によるパンの焼け方

  パンを焼成する際の理想的な生地底面の温度履歴は、一気に炭酸ガスの溶出やアルコールの蒸発が起こる70℃以上まで加熱して、その後は徐々に加熱しながら160℃以下の温度をキープする・・・。

 

パン オーブン

 

 (すみません、写真がどら焼き焼成機となっていますが、こちらの方が分かり易いかと思いまして・・・)

 

 生地が金属板に接しますと、生地の温度が急激に上昇する一方で、金属板の温度は急激に低下します。

 

 生地と金属板の温度は、互いが同程度の温度になるまで近づいていきますが、焼成中はけっして温度が逆転することはありません。

 

 そう考えてみますと、天板にパン生地を並べてデッキ式オーブンで焼く方法は、その温度履歴に近い条件を容易に造り出すことができます。

 

 一方、コンベクション式オーブンでは天板を対流熱で加熱しなければならず、パンの外観形状が大きく変化する焼成の初期に、パン生地底面から押し上げる効果は見込みづらいと考えられます。

 

パン オーブン

 

 先の上火の解説の記事で出しました生地温度の推移のグラフに、上図の通り、下火の温度を加えてみました。

 

直焼き(じかやき)

 近年、石窯パンが人気を博しているようですが、この石窯オーブンも下火には特徴的な性質があります。

 

パン オーブン

 

 材質としての石は金属と比較して比熱が大きく、オーブンを製作した場合、炉床の重量当たりの熱容量を大きく設計することが可能です。

 

 その石窯を使って焼成する製品はハースブレッド・直焼きパンが多いのですが、これまでの記述にありました天板のような中間で熱を伝えるものがありませんので、まさに一気にオーブンキックの温度を超えて上昇します。(ですから、バゲットを直焼きで焼成しているところを縦方向から見てみますと、まん丸に膨れているところが見られます。見ていておもしろいですよ!)

 

もちクリームドーナツコレクション ~ ミスタードーナツ

 7月3日からミスタードーナツで販売開始されました『misdo meets MOCHICREAM もちクリームドーナツコレクション』を、販売開始2日後の今月5日に購入してしっかり食べていたことをすっかり忘れていました。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 この日は運よく全種類をコンプリートできましたので、余すことなく解説致します。

  

【 目次 】

 

ミスド

 いつものミスドへ行きますと、もちクリームドーナツコレクションののぼりがしっかりと立てられています。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 この日は比較的お客さんもまばらで、店内への入場制限は掛けられていましたものの、スムーズに入店することができました。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 店内では飛沫防止シート向こう側でマスクをした店員さんが忙しそうに対応されています。

 

 そしてその上には、もちクリームドーナツコレクションのPOPが。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 ショーケース内には、もちシリーズの商品が上段と中段に(見た目潤沢に)並んでいて、全種コンプリートの期待が高まります。

 

 で、買えました! と、いう訳で、以下がテイクアウト・帰宅後のリポートとなります。

 

大福ドーナツ いちご 220円・税別

  フレンチクルーラー似?のシュー生地にホイップクリームとイチゴジャムがトッピングされていて、さらにその上から求肥(ぎゅうひ)を被せて包んでいます。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 全体的な画像からは分かり難いですが、ドーナツの形状はリングドーナツです。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 断面では大きな気泡がふかふかの食感を連想させます。

 

 軽いホイップクリームとは生地の相性がいいですね、求肥のシートは薄くても存在感は十分です。

  

大福ドーナツ レモン 220円・税別

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 こちらは、シュー生地のリングドーナツにホイップクリームとレモンゼリーがトッピングされています。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 レモンゼリーの爽やかさがもちもち食感と共に楽しめる一品です。

 

ポン・デ・もちクリーム 160円・税別

 ポン・デ・リングを横スライスして、もちフィリングとホイップクリームが充填されています。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 外観は、グレーズとキラキラトッピングなるもの飾られています。(キラキラトッピングって、なんでしょう?)

 

 ポン・デ・リングの生地ももちフィリングも食感はもちもちなのですが、生地の方はより弾力を、フィリングの方は粘性を強く感じました。

 

ポン・デ・いちごもちクリーム 160円・税別

  ポン・デ・リングを横スライスして、もちフィリングとイチゴジャムが充填されています。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 外観は、ストロベリーチョコでコーティングされていて、ホワイトチョコで線掛け、そしてここでもキラキラトッピングで仕上げです。

 

レモンもちクリームフレンチ 160円・税別

  フレンチクルーラー生地のリングドーナツを横スライスして、もちフィリングとレモンゼリーがサンドされています。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

 外観は、ホワイトチョコでコーティングされたのちに、またまたキラキラトッピングの出番です。

 

あずきもちシュー 160円・税別

 大福ドーナツと同様のもちもちシュー生地で揚げたリングドーナツをホワイトチョコでコーティング、さらにもちフィリングと北海道産あずきあんがトッピングされています。

 

ミスタードーナツ もちクリームドーナツ

 

  仕上げは、またまたまたキラキラトッピングの登場です。

 

 もちもちのシュー生地はポン・デ・リングのもちもち感とも違って吸水を感じるような食感なのですが、この生地はこの生地でもちフィリングの異なる食感とのマッチングが楽しめます。

 

もちの加工について

 今回のシリーズでは、フライをする生地に蒸し練りをするもち生地を合わせるという奇抜なアイデアで商品が設計されています。

 

飽和蒸気圧曲線

 

 もち生地を大量に製造する際には、蒸練機という装置を使用するケースが多いのですが、イメージとしましてはミキサー容器を密閉して、その中に直接蒸気を噴き込んで加熱する、といったものです。(ミスドでは加工されたもちのシートを購入していると思いますが)

 

 工場の生産蒸気は一般的に3kgf/cm2程度で運用されていますので、このまま蒸練機へ噴出させますと、理論的にはもち生地の沸点を130℃程度にまで上昇させることが可能です。(上図の飽和蒸気圧曲線のグラフをご参照ください)

 

 ここまでの温度は必要ないのですが、実は抑えるべきポイントがあります。

 

 家電製品の炊飯器で圧力釜と表示されている製品がありますが、これは103℃辺りにありますデンプンの糊化温度をターゲットにしています。(一般的に餅米を使用した赤飯などは、この機能を利用して炊飯されていることが多いようです)

 

 同じく米を原料にしたお餅ですので、100~110℃での蒸し練りで理想とする品質を図っていると推測しています。

 

このような忘れ物も

ポン・デ・ちぎりパン シュガー 150円・税別

 ミスドでは、もちクリームドーナツコレクションの前に、ポン・デ・ちぎりパンのシリーズが発売されていたようです。(このシュガーの他、3種のチーズ、めんたいマヨソース、を含めました計3品種)

 

ミスタードーナツ ポン・デ・ちぎりパン

 

 もちもちの食感はあるのですが、ポンデリングよりもふわふわ感があって、パンに近い口当たりです。

 

 この日はメインがもちシリーズでしたから、ちぎりパンシリーズはシュガーをひとつだけ購入するに留めましたが、このちぎりパンの事を家族に話しましたところ、『話をしたけど、興味を示さずスルーされた』と、けっこう胸に刺さるご指摘が・・・。

 

反省点

 冒頭に戻りまして、どうして買ってきたドーナツのことが頭から抜けてしまったのだろうかと考えていましたが、その頃、インパクトが大きかったねこねこファクトリーへ行って、しばらくしてからのドメインのネームサーバー騒動で疲れ果てていた時期だったことを思い出しました。

 

www.santa-baking.work

 

 結論! 加齢からくる物忘れではないか、と。(以後、気を付けます。m(__)m)

 

おいしくパンを焼く技術 ~ オーブンの上火・輻射と対流

 パンは焼く工程を経ることで、その製品品質の大部分を確定させます。

 

 それ故、パンにとって焼成という工程は最重要な工程のひとつと言えます。

 

 焼くという操作には、装置や設定といったいろいろな面からの解説が必要になってくるのですが、シリーズで解説していく中で、今回はまず熱を加えるといった基本的なところから押さえていきたいと思っています。

 

【 目次 】

 

パンの種類にあった焼き方を

 私は生業(なりわい)としてパンと向き合いながらも主に熱工学に携わってきましたので、前回シリーズの生地冷凍の他、ミキシング工程の発熱・動的物性、発酵工程の温湿度制御、そして焼成での温度と熱流束、等々とデータの取り方も多岐に渡ります。

 

 とりあえず菓子パンを焼く時の上火を考えてみます。

 

 ここにふたつの菓子パンがあります。

 

アンパン

 

 ひとつは、ソフトな触感が好まれるあんパンで、側面のホワイトラインがおいしさを演出しています。

 

クロワッサン

 

 そして、もうひとつはクロワッサンで、サクッとした食感が大人気の定番商品です。

 

 これらのパンは、どのようなオーブンを使って、どのような設定をすればいいのでしょうか、となるのですが、一般的にはそれなりの修業を積んで技術を習得する方法が挙げられます。

 

 ですが、言い方を変えれば、どのように熱を加えて生地温度を上げていけば、希望する品質を得ることができるのでしょうか、という表現にもなります。

 

 そんな、とてもパン屋さんとは思えない言い回しでこれからのストーリーが展開していきます。

 

熱の伝わり方

 理科の授業で、熱の伝わり方にはレンジ加熱のような特殊な例を除いて、伝導、対流、輻射という3通りの形態があることを習われたと思います。

 

パン オーブン

 

 今回テーマとして取り上げていますオーブンの上火には、この内、輻射と対流が大きく関係してきます。

 

対流 輻射

 

 オーブンとは食品を収める空間を持った加熱機器のことで、輻射熱と言いますのは、その容器の内側の壁から電磁波として食材に伝わる遠赤外線等による加熱のことです。

 

 パン生地の上面は仰角が広く、たくさんの熱を受けますが、側面に近くなってきますと仰角が狭くなり、受熱量が下がります。(a>b)

 

 あんパンや日本式のソフトな菓子パンに対して、側面のホワイトラインを作るのに適しています。

 

 一方、炉内の空間に存在する空気を媒体として加熱する形態が対流熱です。

 

 空気の流れにもよりますが、均等に空気が接触していれば、パン生地の部位に関係なく、同程度に加熱します。

 

 ペーストリーのように全体を均等に加熱する製品群に適した熱源です。

 

熱流束の測定結果

 さて、ここに食パンを対象としたものですが、輻射が主体のオーブンと対流が主体のオーブンでそれぞれ焼成した時の熱の流れ方(熱流束)を測定した結果があります。

 

 横軸は、食型の上面の温度です。

 

オーブン 熱流束

(画像提供:三幸機械株式会社)

 

 対流熱は加熱するパンの温度が上がってくると、それに伴って直線的に熱の流れが低下してくるのに対し、輻射熱はそれほど大きく熱の流れが低下しません。

 

 この結果が、どのようにパンの焼成に影響するかを次の項で解説します。

 

輻射という加熱方式

 輻射伝熱は、遠赤外線効果に代表されるように電磁波として食材に照射されて加熱をします。

 

 最近では、石窯パンといったカテゴリーの商品も数多く市場に出回っていますが、この輻射伝熱(遠赤外線効果)を謳っているケースが大勢を占めます。

 

 それでは、輻射主体のオーブンとはどのような機種のことを言うのでしょうか。

 

 店舗のパン屋さんでよく目にする、炉床に天板や食型を並べて焼成するタイプのオーブンをデッキ式オーブンと呼びます。

 

 構造は至ってシンプルで、レンガを組み立てて作る石窯オーブンの延長と考えてもいいでしょう。

 

輻射によるパンの焼け方

 輻射による加熱の強さは、熱源となるヒーターや壁面の絶対温度の4乗に比例します。(これをステファン-ボルツマンの法則といいます。)

 

 

輻射 パン

 

 ただ、この説明を聞いて、そうか、こんな風にパンが焼けるんだぁ、とイメージできる人は正直少ないのではないでしょうか。

 

 上の図を使って、説明しましょう。

 

 パンを焼いていく工程において、パン表面の温度が上昇すると熱源との温度差が縮まって熱移動量が減っていきます。

 

 しかしながら、パンの表面温度の上昇と共に熱移動量が減少するものの、その割合は緩やかな曲線となっています。

 

 つまり、焼き始めの頃の加熱が、焼成の後半になってもあまり低下することなく継続することが示されています。(よって、生地温度は安定して上昇し続けます)

 

対流という加熱方式

 対流は、更に自然対流と強制対流とに分けられますが、一般的に対流式といった場合は、概ね強制対流を指します。(そう言われてみると、自然対流式のオーブンって聞いたことがないですね。)

 

 この方式はコンベクション式と呼ばれ、炉内に撹拌用のファンが取付けられていて、ヒーターは直接パンに作用する訳ではなく、媒体である空気を加熱します。

 

 家庭用のオーブンレンジでも2段式の機種があるように、この方式のオーブンは空気さえ送風することができれば、複数の段積みで焼成することが可能です。

 

対流によるパンの焼け方

 対流による加熱の強さ(熱伝達係数といいます)は、パンの温度の上昇と共に直線的に減少してきます。

 

 つまり、焼き始めの頃の加熱は比較的強いのですが、焼成の後半になってくるとパンの表面温度が頭打ちになって上昇が鈍くなってきます。

 

 このことは、何を意味するのでしょうか。

 

対流 パン

 

 パンの品質に影響する焼色と水分蒸発量を考えてみますと、表面の温度が大きく上がってこないということは着色の速度も大きく上がることはないことを意味します。

 

 つまり、安定した濃さの焼色に仕上げ易いことが分かります。

 

 一方、水分については着色の反応で使用される温度帯(140~150℃)でも十分に蒸発できる状態になっています。

 

 サックリした食感が特徴的なクロワッサン等を焼成するのに適した熱源と言えます。

 

補足

 ところで、熱せられた空気がパンに当てられて焼くわけですが、ここにはもうひとつ風速というファクターが存在します。

 

 風速は、その1/2乗(√:ルート)に比例して、熱伝達係数に寄与します。

 

 つまり、風速を上げれば、同じ温度でも強く加熱することができるのですが、どこまででも高くすればいいというものではなく、効率を考えて使いましょう、といったところが結論となります。

 

生地の温度を測定してわかること

 いろいろな文献を調べてみますと、日本パン技術研究所から下図のようなポイントを測定した案件が掲載されていました。

 

パン 温度測定

 

 そこで、この内、オーブンの上火に大きく影響を受ける①生地上面の温度を輻射と対流のケースで対比してみます。

 

パン 温度グラフ

 

 前述のように輻射加熱では赤色のラインのように比較的安定した温度上昇を続け、対流加熱では初期の温度上昇が著しいものの、途中から伸びが抑えられます。

 

 水分の蒸発量は、100℃を超えた斜線の面積と高い相関がありますので、輻射加熱(赤の斜線のみの部分)対流加熱(青の斜線のみの部分)の共通部分を除いた単色の面積部分の比較で、それぞれの水分蒸発に影響する程度を推して知ることができます。

 

 対流加熱でより多くの水分を蒸発させることで、デニッシュ類のあのサックリ感を効果的に出すことができる訳です。

 

 

※ なお、デッキ式でもコンベクション式でも、一通りのパンは焼成できますので、誤解されませぬよう。あくまで、特性について解説しています。

 

 

ぱんみみのプレミアム食パン そして、七夕の堂島ロール サロン・ド・モンシェール

 先のブロガーバトンでも少し触れましたが、私が以前にリポートしましたぱんみみ(名古屋市中区)のレギュラー食パンにとても衝撃を受け取りましたところ、家族が気を遣って上位の商品であるプレミアム食パンを買ってきてくれました。

 

santa-baking.hatenablog.com

 

 日にちは少し経ってしまいましたが、その時に併せて買ってきてくれました、サロン・ド・モンシェールの七夕ケーキと併せてリポートします。

 

【 目次 】

 

プレミアム食パン

 キューブタイプの1斤が450円(税込)と、レギュラー食パン(330円  税込)と比較して高価格帯に位置しています。

 

 原材料へのこだわりが強く、信州産&北海道産の小麦を独自にブレンドして、厳選した国産素材を使用して作り上げているそうです。

 

ぱんみみ プレミアム食パン

 

外観

 外観は上面が一般的な濃さの焼色で着色されている一方、側面は4面共に非常に薄い焼色しか付けられていません。

 

 レギュラー食パンの生地の繰り返しになってしまいますが、もう一点挙げられます特徴的なポイントが、これだけ薄い側面の焼色ながら、ほとんど腰折れしていない事です。

 

 きれいなキューブ形状です。

 

 外観から、成形方法は俵成形で型詰めされていることが見て取れます。

 

 今回も、製品重量を量ってみますと、464g(包装紙とクロージャーの重量:2gを差し引きますと462g)はレギュラー食パンとほぼ同量です。

 

 パンの1斤は340g以上と定められていますので、多くのベーカリーが表示法に沿って375~400gに調整された商品を出している状況の中、はるかにずっしりと感じる重量です。

 

 ちなみに、原材料は小麦粉・砂糖・油脂・脱脂粉乳・食塩・パン酵母・油脂・ビタミンC、とシンプルです。

 

内相

 スライスして、内相を見てみます。

 

ぱんみみ プレミアム食パン スライス面

 

 レギュラー食パンと比較して、やや荒れていました。

 

 気になりました点としては、荒れていたということよりは、膜が厚めで、その分、気泡は大きめになっていたことでしょうか。

 

 このような内相の要因としては、成形よりも前のミキシングかと推測します。

 

 原材料の関係で、レギュラー食パン程、生地の伸展性が得られないのでしょうか。(もしくは、この内相を意図している)

 

食感と食味

 まずは、生食がお奨めのようです。

 

 食味は、最近のトレンドにありますように、噛んでほんのりとした甘さが伝わってきます。

 

 そして食感ですが、内相と外観の焼色から予想されます通り、少し強めの弾力を感じます。

 

 表現が適正でないのかもしれませんが、中国で非常に人気となっていました、あるメーカーのキューブ形の生食パン(と記載されていました)が類似した内相と食感であったと記憶しています。

 

 中国では日本のパンが大人気で類似した商品も多く出回っていますが、前述の生食パンと称する食パンは日本には該当する商品はないと思っていました(乃が美でも、い志かわでも、セントル・ザ・ベーカリーでもありません)。

 

 私には、そのおいしさが分からなかったのですが、中国では大人気の生食パンだと現地で説明を受けました。

 

 もしかするとですが、中国のキューブ形の生食パンがモデルにしたのは・・・。

 

 最後に、ぱんみみで食パンを買うのであれば、私ならレギュラー食パンをリピートしたいと思っています。

 

製法について思うこと

 ぱんみみのキューブ形食パンの側面の焼色が、これほどまでに薄い理由として、使用しているオーブンはまず間違いなくデッキ式と思われますが、それぞれの食型の間隔を非常に詰めて置いているのでは、と推測します。

 

 

 ただし、その場合、オーブン全体に食型を配置しなければならなくなりそうですが、仮に側面の壁に面したサイドの対応は、どのようにされているか、考えてしまいました。

 

 その場合、壁との間隔をあまり設けることなく食型が置ければ問題はないと思われますが、別のパターンとして食型の数が十分ではなかった場合はどう対応するのでしょう。

 

 考えてみますと空の食型を並べるか、もしくは衝立(ついたて)のような物を置くことで側面の加熱は抑えることができるかと思われます。

 

 実際のところは、製造現場に入ってみないと分かりませんが。

 

サロン・ド・モンシェール

 大阪を拠点として、堂島ロールを展開しているモンシェールが名古屋駅前のミッドランドスクエア B1Fに本格サロンをオープンさせました。

 

 堂島ロールと言えば、従来のロールケーキは渦巻タイプが主流であったところ、ひと巻きの生地で、中身のクリームへお客様の視点を転換させた当時画期的なケーキでした。

 

 てっきり堂島ロールかと思いきや、今回は七夕ということもあって、(どのようなケーキかは全く知らされていなかったのですが)テイクアウトでサマーフレンドリー(1404円 税込)というケーキを買ってきてくれました。

 

サマーフレンドリー

サロン・ド・モンシェール

 

 パッケージは、このような感じでどちらかというと和風の色が濃くなっています。

 

 さてさて、中のケーキを取り出してみますと・・・、

 

サロン・ド・モンシェール ロールケーキ

 

 出てきたのは、なんとマイメロディ&キティちゃんケーキ・・・。

 

 技術系の人間(特に年配者)としては、コメントに最も苦労するタイプのケーキです。

 

 どのように解説しようか、本当に困ってしまいましたが、とにかく食べてみようとフォークを入れましたところ、中から出てきましたのは、定番の堂島ロール

 

 なんと、堂島ロールをベースにサンリオのキャラクターをデコレーションしていたケーキでした。

 

 この辺り、既に脳が騙されているっぽいのですが、中身が堂島ロールと気付いた途端に中のホイップクリームがおいしく感じるようになって。

 

 マイメロディとキティちゃんの顔にフォークを指すのは少々ためらいもありましたが、そこは十分おいしく頂くことができました。

 

 

 今年の七夕は、今ひとつの天候でしたが、みなさん、いかがお過ごしになられましたでしょうか。