黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

街のパン屋さん ~ 高級食パン専門店(ベーカーハウステーブル)

空前の高級食パンブーム

 今は、空前の高級食パンブームである!

 価格も1斤当たり500円前後が中心ですが、中には1000円近くする商品も出回っています。

 その火付け役となったのは、このブログ(2018.12.11)でも紹介させて頂きましたセントル ザ・ベーカリー

街のパン屋さん ~ セントル ザ・ベーカリー - 黒猫サンタさんのパン作りブログ

と言われていますが、今ではその数も格段に増えて、東京*選、大阪*選という記事が乱立するほどの盛況ぶりです。

 ここ名古屋にも、多くの食パン専門店が凌ぎを削っている中、2月21日に栄セントラルパークにザベーカーハウスTable2号店がオープンしました。

 オープンしてから1ヶ月半が経ってしまいましたが、遅ればせながら紹介させて頂きます。

 このベーカリーの看板商品が、ベーカーハウス食パン(810円(税込み))で、北海道産小麦『春よ恋』を使用しています。

 かつて企業に勤めていた頃に、農水省の委託プロジェクト(ブランドニッポン)として研究開発に携わっていた者としては、非常に親近感の持てる小麦粉です。 

f:id:santa-baking:20190405221225j:plain

 商品を購入した際に、包んでもらえます包装紙と手提げ袋ですが、これがなんともシックな感じで高級感をにじませています。

 さて、実際に商品を見てみましょう。

 1.5斤サイズの角形食パンで、標準的な焼色です。

f:id:santa-baking:20190405221300j:plain

 実際にスライスして、トーストしてみます。

 この商品の特徴は、とにかく真っ先に食感として飛び込んでくる、クラムのソフトさです。

 ただし、ここまで柔らかいと好みとしては人によって分かれるのでは、と思ってしまいます。

 それほどまでにソフトで、もっちりとしています。

 しかしながら、差別化という意味では、この商品にしか出せない食感を出していて、ターゲットとして他店の商品との競合を避けることができる一品とも感じました。

 そして、今回購入しましたもう一品が、クロワッサン(270円(税込み))です。

 こちらも、結構長めの最終発酵を取っている感じの外観に見えましたが、風味・食味に関しましては芳醇なバターの香りが明確にアピールしており、満足できる商品です。

もうひとつの角形食パン
 この店舗では、もうひとつの角形食パンが販売されていて、それが北海道産(超強力)小麦『ゆめちから』を使った、極もち食パンです。

 国産米粉『みのり』を湯種として使っており、その他の原材料としましては、奄美諸島産『素焚糖(すだきとう)』を使用する等のこだわりようです。

 湯種製法を採用しているとの但し書きがありましたが、きっと今回購入したベーカーハウス食パン以上のもっちりさなのでしょう。

 正直なところ、想像が難しいです。

成形 ~ 思い込みは怖い? シート生地の圧延と流体力学?

シート生地の圧延(ストレッチャー)

 先日の記事の中で、パン生地を圧延する際、以前の機械設備では厚さ方向に均等に伸ばされないことに触れました。

パン学校 2日目 第213期 ~ そしてPain連載も一区切り - 黒猫サンタさんのパン作りブログ

 今日は、その内容について解説していきます。

 前回の記事では、パン生地は流体なので動きの速い部分と遅い部分とでは、流動性(粘性)が変わってくることを記載しました。

f:id:santa-baking:20190327231950j:plain

 しかし ながら、パン生地は非ニュートン流体で、流速が遅ければ(ゴムのような)弾性体に物性が近付いていく性質を持っています。

f:id:santa-baking:20190404194423j:plain

 上図で点線で示されるように、ゴムの変形は厚さ方向に等しく変化していきますので、伸ばして厚さが薄くなっても伸びの変化率が場所によって変わることはありません。

 しかし、水のような流体は粘性によって力が伝わりますので、実線のような状態に移動する訳です。

 そして、パン生地はその中間の粘弾性体ですので、その中間の物性を示す訳ですが、加工方法によって、いかに動的物性を弾性体に近付けられるかが、均一な層のデニッシュペーストリーやパイを造る課題となってくるのです。

f:id:santa-baking:20190328152334j:plain

 シート生地を延展する装置をストレッチャーと言いますが、以前のストレッチャーはコンベア上に流れる生地をローラーで伸ばす操作を行っていました。

 特に深く考えずに作業を行っていますと、生地の伸ばされ方について疑問に思ことはないのでしょうが、製造現場の作業者は経験から連続生産ラインのシート生地は品質が劣っていることを感じていました。

 リテイルベーカリーで一般的に使用されているリバースシーターを使った方が、きれいな内相のクロワッサンやデニッシュを作ることができていたからです。

 それでは、歪に延展されたシート生地の断面をコンベアの進行方向から見た状況を推測してみます。

 

f:id:santa-baking:20190404194446j:plain

 折り込み油脂をサンドして、それを何層かに折って生地を造っていく過程では、きれいな内相を造るために均等な間隔でパン生地と油脂が層をなしていなければなりません。

 ゴムのような弾性体であれば、等間隔で平たく理想的に伸ばされていくのですが、パン生地は粘弾性体ですので、動きの速いローラー側の生地がより伸ばされることになります。

 すると、上側の生地が横幅方向へ移動して、結果的には上図の3段目のような断面のシート生地ができあがってしまう訳です。

 少し視点を替えますと、コンベア上の摩擦が小さければシート生地の底面もそれなりに動きますので、コンベアにはシート生地との低摩擦性が求められていることは当然です。

 それでは、このような状況から、現在へはどのように延展装置(ストレッチャー)は進歩してきたのでしょう。

 それは、また改めて解説することにします。

旅先では予想外の出会いが待っているもの…。(京都2日目)

みたらし団子発祥の地

 昨日、行くことができなかった下鴨神社へはホテルから車で10分程度のところにあります。

 下鴨神社へ行く予定を入れましたのは、地元の人達も足繁く通うみたらし団子屋さんがあるとの話を耳にしたからです。

 車は一旦下鴨神社の駐車場(この入口がずいぶんと分かり難い!)に入れて、まずは神社へ参拝に行きます。(ところで京都では、民間の駐車場より寺社の駐車場の方がほぼ確実に安く済みそうです。ここでも、200円/30分でした。)

 昨日の八坂神社、今宮神社と、この下鴨神社は拝観料が無料です。

 八坂神社の時も結婚式を挙げている新郎新婦を見かけましたが、下鴨神社でも挙げられていました。

f:id:santa-baking:20190401221833j:plain

 目的の賀茂みたらし茶屋は、下鴨神社の入口からバス通りの向かいにあります。

 開店のAM9:30ちょうど頃の時間ですが、既に店の前には複数の車が路上駐車しており、信号待ちをしているお隣の家族も目的地は同じようです。

 とりあえず、店内には入ることができ、名物のみたらし団子(420円 税込)とお抹茶セット(730円)、いそ巻あべかわ(680円)を頂きました。

 みたらし団子は、先の1個が離れて串に挿してあり、これもなにやら由来があるようです。

 後醍醐天皇が参詣の際、御手洗池で水を掬おうとしたところ、最初に泡が1つ浮かび、しばらく経ってから4つの泡が立て続けに浮かんだことから、それを人の五体に見立て、人形を模して作られたのが、みたらし団子だとか。

人だかり…

 目的の団子も食べことだし、次の場所へ移ろうかと思っていますと、道路の向かい側に人だかりのお店を発見、行ってみますと…。

 それが、京都でおすすめのパン屋さん7選にも出ていました、ナカガワ小麦店でした。

 …店の看板も出ていません。

f:id:santa-baking:20190401221949j:plain

 この日は、寒の戻りで気温も低く、お客さんが全員店内に入ったタイミングで外観の写真を撮りました。(一見さんは、事前の情報がなければ、まず人気のパン屋さんとは分からないのでは、と思ってしまいます)

f:id:santa-baking:20190401222022j:plain

 店内には、人気の食パンが予約分並んでいます。

f:id:santa-baking:20190401222051j:plain

 そして、商品はショーケース越しに対面販売です。

 私の家族は、この販売形式が好みのようです。

 衛生面で安心できるからというのが 、その理由です。 

f:id:santa-baking:20190401222119j:plain

 せっかくの出会いですので、食パン(620円 税込)、クロワッサン(180円)等、計7個のパンを買って、帰ってからの楽しみに!

高台寺から二年坂

 天気予報では、午後から崩れる予想でしたので、足早に桜が満開との高台寺へ移動します。

 入口ではお供え用の大きなお線香を持たせてもらって、拝観料は一人300円です。

 京都リポートの最後になってしまいましたが、満喫できました桜の写真をアップします。

f:id:santa-baking:20190401222159j:plain

 この日は、この後、少し2年坂を散歩して、昼食(オープン4日目の洋食屋さんでした、これも予想外!)後、帰路に就きました。

京都の桜…と、やっぱり…パン、菓子も

本当に久々のレジャー

 私の年中行事として、毎年桜の季節には家族と京都へ足を運ぶことにしているのですが、昨年は訳あって、それが叶わず、今年は2年ぶりの京都となりました。 

八坂神社

 目的のひとつが、八坂神社の商売繁盛お守りです。

f:id:santa-baking:20190401044200j:plain

 見ての通り、金ピカ!

 昨年は、波乱万丈な年だったのも、この金ピカお守りの御加護を受けられなかったから?、ではないのでしょうけど、やはり縁起物で気分が良くなるのであれば、それはそれで担いでいくのもありですよね。

 八坂神社の隣には、円山公園があって満開少し前の桜を堪能したところで、祇園の街に足を運びます。

 祇園には、見たり、買ったり、食べたりする店には事欠かないのですが、今回は家族のチョイスで、金の百合亭というカフェで午前のおやつタイムです。

 AM11:00のオープンを前に既に店の前には行列が…。(このお店のパフェが、話題になっているそうです)

 なんとか、お店には入れましたが、ここのお店はオーダーから出てくるまでの時間が長いとの情報の通り、結局35分待って、ぜんざいセット、バナナのパンケーキ、桜のパフェを頂きました(家族3人で)。

 パンケーキはブリュレになっていて、カリッとした食感も楽しめます。 

f:id:santa-baking:20190401044423j:plain

京都高島屋

 そして、翌日の朝ご飯を買いに、歩いて河原町五条の高島屋へ。

 地下には、ドンク、進々堂、ペック、フォション、ブーランジェ・オクダといった異なるベーカリーの商品を好みでチョイスして買うことができるコーナーがあります。

 この販売形式は初めて見ましたが、焼き立てパンの在り方も変化してくるのでしょうね。

 結局ここでは、ドンク:1個、進々堂:1個、ブーランジェオクダ:3個、といった内訳で、海外ブランドのペックとフォションは選んでいませんでした。

 潜在的に、日本式の商品が合っているとか…?

 それにしても、レジの方も商品を見ただけでよく商品を見分けられるものだと、感心しきりです。(おそらく、アイテム数はゆうに100を超えていると思います)

f:id:santa-baking:20190401044401j:plain

今宮神社

 祇園河原町五条で買うものを買って、次の目的地へ移動です。

 玉の輿神社の異名を持つ今宮神社は、その参道の両サイドに2軒のあぶり餅のお店が対峙しています。

 写真右(北側)が『一和』、左(南側)が『かざりや』で、どちらのあぶり餅も食べてみましたが、個人的にはかざりやの味が好みです。 

f:id:santa-baking:20190401043813j:plain

 先述の『玉の輿』ですが、その語源の由来とされるのが、徳川5代将軍綱吉(1680年~)の生母桂昌院(お玉)出生の話だそうです。

 もともとは身分の低い西陣の八百屋の娘だったお玉が、3代将軍・徳川家光に見初められて側室となり大出世したという、誰もが憧れるシンデレラストーリーがそれです。

 この今宮神社は、その桂昌院の再建事業によるものと言われています。

パン屋さんかと

 ところで、河原町五条で『ハンカチーフベーカリー』の看板を目にして、店の中に入ってみると…。

 えっ、まったくパンがない!

f:id:santa-baking:20190401044330j:plain

 『ハンカチベーカリーは、ベーカリーでパンを買うような感覚で、気軽にそして楽しく、 その日の気分にあわせたハンカチを選んでもらいたいという思いが込められています。』だ、そうです。

 こんなのって、ありですか?

パン学校 2日目 第213期 ~ そしてPain連載も一区切り

製パン機械設備の授業

 今年で3年目に入りました、私の製パン機械設備の授業ですが、先日にも記させて頂きましたように、授業中の生徒のみなさんの反応を見ながら、次の授業の資料をあれこれと修正しています。

 当初は、(私としては抑えたつもりなのですが)何ページかの資料に計算式がそこそこ載っていて、教室の空気が冷ややかだったんですね。

 別に計算式の説明をすることはほとんどないのですけど、記載されている存在自体が受け入れ難い雰囲気のようで…。

 グラフもある意味同様なのですが、視覚的に入ってくるところもあって、まだ使い方によっては有効なツールのような気がしています。

f:id:santa-baking:20190327231950j:plain

 上のグラフは、レオロジーという学問の分野(物体の流れの科学)で、よく示されるグラフです。

 このグラフだけを見ていますと、どうやったら製パンの技術と結びつくの? と、思われる方も多いのではないでしょうか。

 それでは、連続生産ラインのコンベア上でシート生地を圧延する場合、深く考えることがなければ生地は均等に伸ばされていくように考えてしまいますよね。

 果たして、イメージ通りに事が運んでいるのでしょうか。

f:id:santa-baking:20190328152334j:plain

 圧延ローラーの前後でコンベア速度に違いはありませんので、シート生地は厚みが小さくなった分、横方向の幅が大きくなります。

 その際、ローラーの近くにある生地は押されて動く速度が速い反面、コンベア近くにある生地は変形の速度が遅くなります。

 つまり、上部の生地は良く伸ばされて、下部の生地はあまり延ばされないことになります。

さてさて、このシート生地の断面を進行方向から見たら、どのように見えるのでしょうか。

 少し時代を遡りますと、シート生地の圧延は、(バッチ式で)手間が掛かってもリバースシートを使って製造した生地の方が品質的にいいものができることは、多くの作業者が知っていました。

 ですから、なかなかホールセールの製品がリテイルベーカリーの品質に追い付けない状況が続いていたと言っても良いでしょう。

 最新のストレッチャーの構造については、日を改めて解説することにします。

 作業をマスターしていく過程において、『慣れて』『学んで』『創っていく』それぞれの段階からステップアップする時では、往々にして新たな発見があるものです。

 生産ラインで作業している人達でも、疑問に思っていることが装置の進化という形になっていくことは十分に起こり得ることなのです。 

月刊誌Pain(パン)

 私が日本パン技術研究所発刊の月刊誌Pain(パン)の連載を始めてから、そろそろ4年が経とうとしています。

 これまでの連載の期間とタイトルは以下の通りです。

 2015年4月号(~1年間)『知って得する製パン機械設備のサイエンス』

 2016年4月号(~1年間)『機械工学屋さんの製パン講座』

 2017年7月号(継続中)『製パン機械企業の訪問記』

f:id:santa-baking:20190327232021j:plain

 その長かった執筆活動も、現在取り掛かっています7月号の原稿をもちまして(今回のパン学校の授業の後に企業の取材訪問を行って)、一度お暇を頂くことになりました。

 次の連載(一応、構想はあるのですが)があったとしましても、さすがに充電期間が必要ですので、しばらくはネタ集めに頭を切り替えて、企画が通りましたら、また頑張ろうと思っています。