OHP(オーバーヘッドプルファー)
分割・丸目が終わったパン生地は、ダメージが蓄積されていますので、一旦休ませて次の成形工程へスムーズに移行できるよう準備します。
中間発酵の目的ですが、分割時に受けたダメージの回復と次工程である成形加工に対して良好に生地の延展、ガス抜きとロール等の形状加工ができるよう、適度にパン生地を膨張させることにあります。
この中間発酵(ベンチタイム)ですが、手作業の場合はキャンバスを敷いた恒温ボックスに分割・丸目後の生地玉を並べて手粉を掛け、霧吹きをした後にキャンバスを被せて放置すれば、条件としては整います。
中間発酵時における環境条件は、生地玉を乾燥させず、かつ湿らさないことにあります。
つまり、無風状態の恒温ボックスに置かれた生地玉は相対湿度100%の状態で休ませることができています。
ところが、これを搬送装置を備えたOHP内で再現させることは、非常に困難を伴います。
と言うよりは、現実的にはほぼ不可能な課題です。
下図にOHPにおいて生地玉を載せるパケットの写真を示します。
見ての通り、手作業の時とは異なって、生地玉が空間に露出した状態でOHP本体の空間を搬送されていきます。
生地玉の周囲が相対湿度100%であれば問題はないのですが、空調を行っている為、その条件が当てはまらないのです。
空調を行うということは、空気に流れを起こしてセンサーで温度と湿度を計測し、入力した設定値との差異を判断して、加熱・冷却、加湿・除湿を行うことを意味します。
すると温度の制御に対しては問題はないのですが、相対湿度100%の状態でOHP内を制御した場合、本体の一部でも温度の低い箇所ができてしまうと、そこの水分は結露して雑菌の温床となってしまいます。
当然、OHP内を搬送されている生地玉に対しても周囲温度の変化は生地玉表面への水分の結露という形で弊害を招きます。
そのため、OHPの空調は生地温度より少し高めの温度で露点が生地温度となる湿度にまで下げた設定にします。
分かり難い表現となってしまいましたが、OHP内の少し高めの温度の空気が生地表面に近づいた時に相対湿度100%となるような操作を行う訳です。
例えば、25℃で相対湿度が100%だった場合、その空気を28℃に上げると相対湿度は83.8%になります。
この数値をひとつの目安として、生地玉が乾燥せず、かつOHP内の結露が起こらない、適正な条件を試行錯誤的に求めていくことになります。
ところで、例えば20分のベンチタイムがあった場合、その温度差に起因する生地玉の温度上昇が生じます。
ですので、当然のことながらOHP内の温度はできるだけ生地温度に近い温度に設定できるような条件が求められます。
OHPの構造や搬送の方法については、次回に解説します。