連続式オーブン
ホールセールの製パンメーカーの工場では、概ね連続式オーブンを導入しているところが多いと思います。
連続式オーブンの代表的な機種はトンネル式ですが、スパイラル式やトレー式といった仕様の設備もあります。
トンネル式にせよ、スパイラル式にせよ、同じオーブンでも固定式オーブンとの仕様の大きな違いは把握したうえで、製パン機械設備を取り扱うことが重要です。
目的は『理想のパンを焼く』、これに尽きますので、いかに安定して理想とする焼き方を再現できるかを考えます。
では、各種連続式オーブンの仕様については、別途解説するとしまして、ここでは広く連続式オーブン故の焼き方について、留意点を述べることにします。
連続式オーブンは、一般的にはコンベアに製品を載せて炉内を搬送します。
オーブン内の経路は複数のゾーンに分かれていて、そのゾーン毎に焼成温度を設定してコントロールしています。
製品は、そのゾーンを通過する訳ですので、時間に伴って焼成温度を変えたい場合には、非常に都合の良い構造となっています。
ところが、ここに神経を使うポイントがあります。
それは、生産開始時の先頭の製品がオーブン内に投入される時です。
固定式のオーブンであれば、(温度ムラを考えなければ)すべての製品が同じ温度で焼成されますが、連続式オーブンの場合は投入される列毎に焼成条件が変わってきてしまいます。
つまり上図のように、あるゾーンに製品が流れ始めてきた時、ゾーン内には製品の進行に伴ってゾーン内で温度の差が生じてしまいます。
そして、ゾーンの温度をコントロールするためのセンサーは概ね進行方向のほぼ中央の位置に取り付けられていて、この1点の温度で熱源であるガスバーナーや電気ヒーターの出力を入切する訳です。
上図の状況を解説しますと、先頭の製品が温度センサー位置まで届いた時点で温度センサーは炉内温度が低くなったと感知して点火バーナーの出力を上げようとします。
しかし、この時には製品がまだ届いていない先の場所はパン生地のような熱を吸収するものがありませんので、炉内温度は過剰に高くなってしまいます。
その過剰に高くなった炉内を先頭の製品は通っていく訳ですので、当然のことながら先頭の製品は焼色が濃く、焼け過ぎの状態になってしまうのです。
工場には、オーブンの癖をよく知っている担当者の方がいたりして、巧みにバーナーコントロールを施して焼色を揃える技術を持っていたりしています。
この技術は、是非制御技術に応用したいですね。
下図のような、天板毎にゾーンを造ってパンを焼くような連続式オーブンは決して世に出てこないでしょうから。