機械耐性について
大型の製パン工場におきまして、多くのラインで採用されていますのが中種法なのですが、焼きあがった製品のソフトさや風味が際立つことに加えて、採用される大きな理由のひとつとしてパン生地への機械耐性が挙げられます。
この機械耐性とは、どのような工程の機械設備に対して検討される項目なのでしょうか。
耐性と言うからには、パン生地にストレスが掛かることを意味する訳ですが、この工程は回復の操作を探せば見えてきます。
フロアタイムやベンチタイムが、それです。
ここでは、分割・丸目工程のデバイダーに注目して、解説することにします。
以前にシリンダー式のデバイダーについて動作等を解説しました。
ホッパーと生地室を区画するために、トップナイフと呼ばれます平板が1ストロークごとに生地をスライスする訳です。
そして、密閉状態になった生地室にプランジャーが圧力をかけてパン生地をポケット内へ押し込むのです。
ここで、生地室内のパン生地はどのような状態になっているのか、推測してみましょう。
前後に往復運動しているトップナイフがホッパーとの境界を開口しますと、プランジャーが引かれることでポケットに入る分のパン生地が生地室内へ流れます。
しかし、その時に流れる生地は上図のように高さ方向の厚みが非常に薄い板状にスライスされてしまいます。
パン生地に力が加わる時、そこには流れ方向に垂直な”圧力”と流れ方向に沿った”せん断応力(流体をずらす力)”が生じますが、別の力として破断応力がここでは大きく付加されます。
しかもミキサーやラウンダー、モルダーでの破断応力が生地の引っ張り過ぎによる過度の剪断応力に由来していることに対して、デバイダーのそれは機械的な破断です。
近年のシリンダー式のデバイダーは、サーボモーターや油圧で位置や圧力を制御できますので、ほぼポケットから分けられるときのみ機械的な破断が生じる構造になっています。
これは、手作業での分割と同様の操作と考えられます。
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さて、中種法で向上する機械耐性はどのような力に対するものなのでしょうか。
実は、私も確認したことがありませんし、記述されている文献を読んだこともありません。
もし、対象となる力が剪断応力や破断応力であれば、既にシリンダー式のデバイダーでは手分割と同様のストレスフリーが実現されていることになります。
残りますのは圧力だけですが、この力はパン生地への吸水や脱気といった作用も確認されており、生地状態の変化が必ずしもストレスとは言い切れないのではないかと考えています。
近い将来に解明されることを期待したいですね。