黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

中種法と製パン機械設備 ~ モルダー

成形工程における機械耐性とは

 パン生地が受けるダメージを製造現場で最もよく知ることができるのが、この成形工程ではないでしょうか。

 以前に圧延+ロール成形でパン生地に過度な負荷を掛けない装置の構造として、大玉生地用に使用されますクロスモルダーを解説しました。
www.santa-baking.work

 これは、ベンチタイムで休ませたパン生地を圧延ローラーで延展した後にロール成形を行う際、伸び代のある方向で生地を伸ばしていこうといった考え方によるものです。

 さて、機械耐性の低いパン生地をモルダーに掛けるとどのような現象が出てくるのでしょうか。

 容易に視認できるのが、成形後の生地表面の破断です。

 実際に、もうこれ以上伸びきれない部分の生地が画一的に機械で延ばされると生地表面は破れたように捲れ上がってきます。

 中種法によって、成形装置の段階でパン生地の機械耐性が向上することは、生地の伸長性を意味することになると考えられます。

 私としては正直なところ、この内容に関しては文献の内容からの推測ですので、一度、もう少し掘り下げて検証していきたいと思っているところです。

 一般的に圧延ローラーでのガス抜きは、最終製品の内相に大きく影響してきますので、できるだけ狭いクリアランスに生地を通すことでサイズの大きな気泡を排除し、細やかな内相を得ることができるのですが、それもあくまで生地が伸長する範囲内でのことです。

 それでは、別の視点から手作業並みにパン生地にストレスが掛からない加工方法とは、どのようなことが考えられるでしょうか。

 ひとつには、徐々に圧延していってガス抜きをする方法で、これは既に単段式から多段式のモルダーが開発されています。

 もっとも、圧延ローラーの径が大きい場合、ゆっくりとガス抜きをするが故に、手粉が不十分ですと、圧延時に生地表面がべとついてローラーに付着し、ライントラブルの要因ともなり得ます。

 ローラーの径サイズは、生地へのストレスとライン生産でのトラブルリスクを考慮して、検討する課題と言えます。

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 ところで、一部の機種を除いてモルダーの圧延ローラーへパン生地は上方から投入されます。

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 圧延ローラーの周速度は、一般的に等速ですので、1段目から2段目、2段目から3段目のローラーへ生地が移動する際、生地の進行速度は当然のことながら同じ速度になります。

 上の画像は工揮製のストレートモルダーですが、三段の各ローラーごとに速度調整機能が付いている機種となります。

 使い方次第にはなりますが、さてさてどのような効果が期待できるのでしょうか。

 冒頭の生地ストレスの件と併せて、おもしろい使い方もできると期待しているのですけど…。