突然ですが、白焼き食パンが好きな方はそれなりにいらっしゃるかと思いますが、私もその一人です。
けっして褐変化したクラスト(耳)が嫌いな訳ではなく、白いクラストのパンのふんわりした食べ口も好きで、生でもトーストしてでもそれぞれの味わいを楽しむことができます。
今回は、山崎製パンのふんわり食パンを例にとって解説していきましょう。
【 目次 】
ふんわり食パン
外観
ルヴァン種を使用した1斤サイズの角形食パンで、全体的に焼色の薄さとそこから来るふんわりした柔らかさが特徴です。
以前は、チョコ風味やメープル風味もよく目にしましたが、最近はプレーンのアイテムしかなかなかお目に掛れません。(生産中止?)
取り出してみますと、改めてクラストの薄さに驚かされます。(すみません、1枚食べてしまいました m(__)m )
そして、焼色が薄い中でも側面の焼色はほぼ“白色”に仕上がっています。
製パン工程を知っている者としましては、よくぞこの焼色で角形食パンの形状を保持できるものだと感心しきりです。
そして、底面から見てみましても側面の白さは再確認することができます。
ところで、食パンの(特に)底面の焼色が他の面と比較して濃くなります理由としては、焼成するオーブンの熱媒体(熱風)が下方から上方へと流れていきますので、致し方のない状況と言えます。
内相
さて、スライス面を見てみましょう。
気泡の細やかさと生地厚の薄さ、そして縦目のすだちは、生地作りと巧みな成形方法の賜物ですね。
気泡が潰れて詰んだ跡もなければ、乾燥や手粉によるカギ穴も見られません、とてもきれいな内相です。
食味・食感
やはり特筆すべきはクラムと一体化しましたクラストの食感で、それでいて口の中でダマにならず、口溶けも良好です。
包装紙
随分以前の話になってしまいますが、以前の食パンの包装は閉じ口が解放されていてクロージャーという閉じ具で締めてあるだけでした。
しかし、パンの香りに引き寄せられての虫の混入等トラブルが多発しており、その対策として包装紙の口を『軽く』シールして密閉する方策が取られました。
実は、この包装紙のライトシールですが、思いのほか大変で、軽過ぎますとシールできていなかったり、重過ぎると包装紙がその部分で破れてしまいます。
この食パン(上写真)では、このライトシールを2列で施して、更に確実性を上げているのが分かりますね。
サンタの豆知識
パン焼成の温度コントロール
以前にも解説しましたが、パン生地の焼色の着色反応は温度に依存しています。
上図の通り、130℃でも着色は進みます。
ということは、ふんわり食パンの側面程度に焼色を抑えるためには、120℃くらいまでに生地温度をコントロールしなければならないことになります。
当然、形状を保持させるためにクラストをしっかりさせなければなりませんので、100℃超の時間帯は十分に確保して管理する必要があります。
本当に大変な操作を伴う製品だということが、これでお分かり頂けましたでしょうか。
褐変化反応を起こさない甘味料
ところで、原材料でなにか白焼き食パンに使えそうなものはないのでしょうか。
この辺りは専門外ですので詳細な説明が難しいのですが、前項のグラフの直線は共に糖に関係した反応であることは分かっていますので、甘味料で対応することができないか考えてみました。
このような記載を見つけました、
『糖アルコールは、砂糖や水飴と同じ「糖質」の仲間ですが、その特長を活かして食品、化粧品、医薬品、病者用食品など幅広く利用されています。
安定性が高く、加熱による褐変反応や、アミノ酸、タンパク質とのメイラード反応の原因になりません。
微生物の栄養源になりにくく、菌が繁殖しにくいため、品質保持に貢献します。また、虫歯の原因になりにくい素材です。
人の消化酵素で消化されにくく、吸収されにくいため、低カロリーです。また、血糖値やインシュリンレベルにも影響しません。
糖アルコールは安定性が高く、加熱による褐変反応や、アミノ酸、タンパク質とのメイラード反応の原因になりません。』
なんと! 糖アルコールはカラメル化反応やメイラード反応といった褐変化反応に関与しない、と!
まだまだ、勉強が不十分ですので、もう少し調べて、また御報告できればと思います。
サンタの研究室
ふんわり食パンに話を戻しますが、この白焼き食パンでもやっぱり底面のクラストは他の面と比較して焼色が付き易いですし、硬くなり易い傾向にあります。
その一番不人気のクラストをおいしくすべく、薄くてソフトに仕上げてみたいと願って研究を続ける今日この頃です(上のグラフは、130℃(上面)-140℃(側面&端面)-120℃(底面)で焼いた時のデータです)。