あれから、すでにもう30年が過ぎようとしているのが、なかなか信じられないのですが、1990年(平成2年)に北海道の日糧製パンが発売しましたチーズ蒸しパンは、今も北海道を始め、日本全国で定番商品として定着しています。
(画像提供 日糧製パン)
えっ、なに? と思われたかもしれませんが、現在はチーズ蒸しパンの製法と味わいがそのまま受け継がれて、山崎製パンが北海道チーズ蒸しケーキとして全国で販売しています。
そう、山崎製パンは日糧製パンと業務提携して、北海道以外の全国でチーズ蒸しパンを展開しているのです。
【 目次 】
チーズ蒸しパン
1990年代に起こりましたスイーツの遍歴を確認してみますと、
・1977年のクレープ
・1990年 ティラミス
・1991年 クレーム・ブリュレ
・1992年 タピオカ
・1993年 ナタ・デ・ココ
・1994年 パンナ・コッタ
・1995年 カヌレ
と、なっており、この後は、既にリポートしているアイテムもあります、1997年:ベルギーワッフル、1998年:クイニーアマン、ロールケーキのスイーツ化、1999年:エッグタルト、シナモンロール、と続きます。(こうして見てみますと、スイーツ類は誰かが頃合いを見て仕掛けているように見えて仕方ないのですが・・・。)
日糧製パンがチーズ蒸しパンを開発・発売した時期は、イタリアンデザートとして人気を博しましたティラミスのブームの時期と重なります。
市民権を得たチーズの風味と味で、かつしっとりとしたソフトな食感は瞬く間に日本全国で受け入れられ、チーズ蒸しパンは大ヒットとなりました。
日糧パンでは、卵や小麦粉を小型の容器で少しずつかき混ぜることで、これまでにないふっくらとしたきめ細かい生地に仕上げることに成功したとのことで、その年の日経優秀製品賞も受賞しています。
しかし、(私が在籍していました企業も含めて)類似商品が多数出回るようになったこともあり、関東の工場の稼働率が下がる等の理由で撤退を余儀なくされます。
北海道チーズ蒸しケーキ
細かいところですが、チーズ蒸しパンにはパン酵母が配合されていませんので、正式な定義と照らし合わせますとはパンとは言えません。
関東から撤退しましたチーズ蒸しパンは、前述の通り、業務提携をしました山崎製パンに引き継がれるのですが、名称もこれを機に北海道チーズ蒸しケーキと変更して発売されます。(北海道の名を残すところは、なんとも気が利いて憎い限りです)
外観
包装紙から取り出す際に、少し側面がつぶれてしまいました、すみません。
上面は、北海道を形どって焼色を付けないように着色されています。
着色部分の境界はとてもくっきりと出ていますので、おそらく大きめの焼き印のようなもので加熱されているのでは、と推測します。
オーブンのような加熱機器で焼き色を付けるのも効率が悪いでしょうし、水分が過剰に蒸発する、型のグラシン紙が焦げるといった懸念も生じるからです。
断面
断面の肌目は、とても細やかで揃っています。
そして切ってみて気が付いたのですが、随分中央付近の生地が盛り上がっていることが分かります。(この状況は、後の蒸し方のところでも解説します)
風味・食味
やはり真っ先に感じる風味はチーズですね。
その風味は食べる時にまで余韻を楽しませてくれ、しっとりとした食感と相まって、けっして他では味わない楽しみを与えてくれます。
北海道チーズ蒸しケーキの蒸し方について
蒸し製品を見ていますと、下写真のように生地上部がパックリと割れた蒸しケーキをよく目にすることがあります。
さて、このような商品と北海道チーズ蒸しケーキとの製造条件は何かが違っているのでしょうか。
以前に蒸しではなく焼きなのですが、バッター生地の加熱条件に付いて、解説したことがあります。
この時は、オーブンの上火の強弱でスポンジケーキの形状が異なってくるメカニズムを解説したのですが、似たような現象が蒸し工程においても起きています。
蒸し工程の初期において、強い蒸気で一気に加熱しますと生地内部が膨張する余力を残している時点で生地上部が固まり、その後の継続した蒸し加熱で上表面の生地が割れるようになります。
一方、蒸しの初期をゆっくりと加熱することで生地全体が徐々に加熱されて膨張も緩やかとなり、生地中央は膨らみますもののきれいなフラット面を形成して蒸し上げることができます。
追記
たまたま、今日のTVニュースにも出ていたのですが、このチーズ蒸しケーキを冷凍して食べると非常においしいとか。
この時期だからといったこともあるのでしょうけど、ネットでは味が濃厚になり、食感も本物のチーズケーキのようでおいしいと、評判は上々のようです。