黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

吸水105%の食パン・まるご製パン ~ パン作りのメカニズムと装置・バシナージュとオートリーズ

 高級生食パンに代表されます高吸水生地のパンは、そのほとんどがリテイルベーカリーによって商品化されています。

 

 なぜ大手のホールセールベーカリーは、人気で差別化が顕著なこの技術を積極的に手掛けないのでしょうか。

 

 今回は、生地吸水105%を謳っています『まるご製パン の 奇跡の角食105%』の紹介に加えて、主に吸水を上げる目的で用いられますバシナージュとオートリーズといった手法について解説していきます。

 

 なお、冒頭から言い訳になってしまいますが、私自身はバシナージュもオートリーズも実際に用いて製パンしたことがありません、と言いますか、ライン化の検討をしたことがありません。

 

 製パン技術に関しては、私より腕のある方が大勢いらっしゃると思いますので、少し視点を変えて、連続製パンラインでの対応の難しさと、いかに人の手作業が高度な加工技術を持っているのか、といったことを述べていこうかと思います。

 

【 目次 】

 

バシナージュとオートリーズ

 バシナージュは、別名『加水法』あるいは『足し水法』と呼ばれます。

 

 これは、グルテンを形成させた生地に、さらに水を加えてミキシングしていく方法で、元来は、チャパタ等の高加水生地による製パンに用いられていました。

 

 一般的に生地の吸水を上げますと、ミキシング時の生地は粘性が低下して、物性として最適なフルディベロップのタイミングが遅くなります。

 

 下のグラフで、動力負荷がピークを迎えて反落するポイントです。

 

パン生地ミキサー

 

 遅くなるだけであればまだしも、極端に吸水を上げますとそのフルディベロップのピークさえも出てこなくなってしまいます。

 

 つまり、グルテンが形成されなくなってしまいます。

 

パン生地ミキサー

 

 一般的なパン生地用のミキサーは、フックと呼ばれます撹拌棒が回転するタイプであり、生地を伸ばしながらボウル壁面近傍では生地に圧力を掛けてグルテンの形成を図っています。

 

 つまり、吸水を上げて生地の粘性が低下しますと、ミキサーを回しても生地への圧力が掛からなくなってグルテンが形成されなくなってくるという訳です。

 

 そこでバシナージュでは、すべての吸水量を一度に入れるのではなく、一部の吸水量でグルテンをしっかりつなげてから、パンチを2~30分おきに入れ、時間をかけて生地を作ったあとで、ゆっくり、少しずつ加えていくことになります。

 

 速くこねたり、水を一気に入れたりすると、水和が追い付かず、水が生地に入っていかないそうです。

 

 ここまで記載しましたところで、バシナージュという手法が生産性を重視する連続生産ラインに向いているか否か、ひとつの方向性は出ていると思います。

 

 続いて、オートリーズですが、これは初めに小麦粉と水分だけを混ぜて、常温で30分~1時間程度生地を寝かせる操作を言い、これによってグルテン形成が進むそうです。

 

 この際、塩やパン酵母は生地を締める方向に作用してしまいますので加えません。

 

 元々フランスパンを作る時のようなストレート法に用いられる手法ですが、連続製パンラインで多用されます中種法に適用できるものか否か、私自身よく理解できていません。

 

 仮に効果があるとしても、現行の工程からさらに増えることになります。

 

製パン工程

 

 もしかしますと、べた付く高吸水の生地でも分割~丸目~中間発酵~成形の工程でトラブルなく流れる装置改良を考えるべきなのかもしれません。

 

まるご製パン&cafe

 食パンの配合で、吸水は一般的に68~70%と言われています。

 

 実際に私が仕込んでみた経験でも80%が上限で、それ以上の吸水増は試したことがありません(もっとも、バシナージュ等は行っていませんが)。

 

まるご製パン

 

 ところが、このまるご製パンでは生地吸水105%を実現できたということを聞き及んで、その奇跡の角食を求め、名古屋市天白区にあります同店舗を訪れました。

 

 お店の看板には大きく食パンのデザインが・・・、力の入れ具合が見て取れます。

 

 

 店内へ入りますと、レジの奥が作業スペースになっていまして、今まさに食パンサイズの生地を丸めています。

 

 ただ・・・、扱っている生地は若干軟らかめには見えますが、自分がイメージしていましたダラダラ・ベチョベチョの生地物性ではなく、しっかりとまとまっている感があります。

 

まるご製パン

 

 これが、吸水105%の生地?と首を傾げたくなりますが、原材料や作り方にノウハウがあるのでしょう、とても興味があるところです。(実際に先述のバシナージュやオートリーズのような製法のみならず、小麦粉等の原材料でも吸水を増やす選択肢はあります)

 

 ところで、このお店はカフェも併設されていますので、お目当ての食パンは帰りの際にテイクアウトで持たせてもらうことにして、朝ごはんのモーニングを頂くことにしました。

 

モーニング

 店内は満席で、すでに空席待ちの方々がけっこういらっしゃいます。(ちなみに、お店の駐車場も満車状態で、仕方なく、少し歩いたところにありますマツモトキヨシの有料パーキングに車を停めました)

 

コーヒー(440円 税込)+小倉トースト(山形食パン105%)のセット

 せっかくですので、話題の食パン(ここでは山形ですが)がトーストで付いてくるモーニングセットをオーダー。

 

まるご製パン

 

 小倉餡もついてきます。

 

 食パンの食感は、いかにも吸水が多いモチっとした食感です。

 

 たしかに、他店の食パンでは経験したことのない食感でしたし、モチモチしたパンが好きな人にはたまらないのではないでしょうか。

 

まるごパンケーキ(715円 税込)

 一方、家族はもうひとつの名物メニューとなっていますパンケーキを注文。

 

まるご製パン

 

 『卵をふんだんに使用したジャーマン生地をオーブンで焼き上げたドイツ風パンケーキ』との説明がありました。

 

 粉糖、発酵バターホイップクリームにレモンが添えられています。

 

 一口頂きましたが、卵とバターの風味が存分に楽しめるパンケーキです、それと映えますね(他のお客さんも結構写真を撮られていました)。

 

奇跡の角食105%(864円 税込)

 テイクアウトしました食パンのサイズは、103 × 114 × 207mmと一回り~二回りほど小ぶりのサイズです。

 

まるご製パン

 

 重量は、646gですので、斤(340g以上)表示では安全率を10%見込んで『1.7斤』といったところでしょうか。

 

まるご製パン

 

 冷却後の1%程度の収縮と焼減率:11%を仮定して、求められます型生地比容積は3.29(一般的には、3.8~4.0)とずいぶん膨張を抑えたパンであることが分かります。

 

まるご製パン

 

 比容積を抑えていますので、その点では形状がしっかりしていることも頷けます。

 

 なお、やはり特筆すべきは食感で、モチモチ好みの方には癖になる商品ではないかと思います。

 

あとがき

 コロナ禍となって丸2年以上、海外での仕事も叶わず、春恒例の京都旅行へも出掛けられず、それでも初えびすはきっちりとお参りを(記事掲載の時期が、ずいぶんずれてしまいました、すみません)。

 

初えびす2022

 

 昼間の時間帯は、神社入口の道路が大渋滞しますので、夜中から日の出前の早朝を見計らって出掛けます。

 

 ところが、えびす様とは別に初詣でに出掛けます地元の神社にお稲荷様があることを発見。

 

八王子神社の稲荷

 

 今年は、えびす様とお稲荷様のダブル効果となりますやら。

 

ダブルダイヤモンド富士

 

 ダブルと言えば、遅くなりましたが、お正月のTV番組でWダイヤモンド富士の中継の中、?おみくじ付きの画像が流れていましたところ、たまたま撮影しました画像が『大吉』でしたので、ここに(今年は、いいことがたくさんありますように)。