黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

街のパン屋さん ~ ZEBRA Coffee & Croissant

店名のクロワッサンに感動!

 横浜みなとみらいの MARINE & WALK にあります、ZEBRA Coffee & Croissant へ行ってきました。

 

 歩き疲れて、ちょっとお茶を飲みながら休憩~って感じで入ったお店だったのですが、店内は開放感のある木を基調とした落ち着ける空間で、若いお客さんで賑わっていましたね。

 カウンターレジに並んで、ガラスのショーケース内のいろいろなデニッシュ類を眺めながら順番を待ちます。

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 HPでは、フランスボース産小麦粉を100%、無精製のきび砂糖、地中海産の塩、北海道産のバター100%を使用しているとのこと。

 そして、前日に捏ね上げられた生地が、(おそらくリタード法かと)14時間の発酵時間をかけているようです。

 ZEBRAのクロワッサンは、そのサイズが特徴的で、一般的なクロワッサンの二周りはサイズアップされているのではないでしょうか。

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  それでいて、毎朝、店内で手作りされ、開店に合わせ焼きあがりますクロワッサンは、外観形状、内相、食感のいずれも、非常にレベルが高く、またリピートしたくなる、そんな製品でした 。

 この大きなサイズにも関わらない腰高の形状、加えて生地の層がしっかりとできているため、クラストの部分は1層1層のクラストに存在感があって、サクッとした食感が感じられます。

 クラムはしっとりしていて、ロールインのバターの風味も十分に堪能できました。

 ちなみに、当然、コーヒーにもこだわりが満載で、アイスコーヒーは(紅茶ではよく見ることがあります)砂時計で抽出時間を調整し、布フィルターの取手を手で押して、氷の入ったカップに注ぎ込む方式です。

 これもまた趣きがあって、味わい深いです。

 店内では、製パンの作業場が見えるレイアウトになっていましたので、そのリポートを少々。

 作業テーブルの傍らには、RONDO製のリバースシーターが置いてあります。

 RONDO社は、シート生地の延展装置を世界に先駆けて開発・製造しました、ヨーロッパのメーカーです。

 その歴史は長く、積み重ねられました技術は、(一次側コンベア) - (ローラー) - (二次側ローラー)の搬送速度比や生地を圧延するプログラミングに凝縮されていて、海外製の装置ですが、適正なシート生地を製造するためにはお奨めです。

 そして、その生地を焼成するオーブンですが、ここにはデッキ式の南蛮窯バッケン(七洋製作所)が導入されていました。

 このオーブンは、洋菓子類の焼成では非常によく目にする焼成装置で、街のケーキ屋さんでもよく見かけるのではないでしょうか。

 オーブンというのは、その構造によって、焼成する製品の焼き方に影響が現れます。

 この南蛮窯バッケンというオーブンは、外観のフォルムもさることながら、焼成工程中の熱の掛かり具合に強いこだわりを持っているように感じます。

 今回は残念ながら、焼成している場面を見ることができませんでしたが、このオーブンの特徴的な炉内の密閉性とガス抜きに関する作業が見られたら、と思いました次第です。

ホールセールの菓子 ~ 山崎製パン・ホボクリム

ほとんどがクリーム

 山崎製パンが、またユニークな新食感の商品を発売しました。

 たまたま、家族が近所のローソンへ買い物へ行きました際に見つけてきたようで、なんでも名古屋市内のローソンでは、どこも完売状態で入手が非常に困難だとか。(ここは、田舎ならではのメリットですね)

 ほぼほぼクリームのシュー(200円 税込)というのが、正式な商品名のようなのですが、包装紙の印刷で最初に目に飛び込んでくるHOBOCLIM(ホボクリム)の名称にインパクトを感じるシュークリームです。

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 ちなみに、包装紙にはUchi Cafe の表記があるところから、ローソン限定のスイーツのようです。

 ところで、このアルファベット表記のHOBOCLIMですが、最初はてっきりHOBO=概ね、CLIM=クリーム(カスタードとか、ホイップとか)、と、思いきや、CLIM? 違う、CREAMじゃない!

 フランス語ではclimで、空調という意味があるみたいですが、??? ちょっと。

 また、近い単語に英語ならclimbがあって、一般的な(山等に)登るという意味の他に、上がる、増大する、出世する、という意味があるので、語呂合わせと縁起担ぎ的な造語?かと思っています。

超薄皮のシューは新食感!

 そのシュー皮の部分は、従来のシュークリームの食感とは大きく異なって、焼色はほぼ着色されておらず、外観形状も歪な感覚はありません。

 ですからシュークリームと言われなければ、白焼きのクリームパンと思われてしまいそうな外観です。

 実際に食べてみた感想ですが、クリームの部分はカスタードクリーム、生クリームとホイップクリームがシュー皮にできた空間を満たすように充填されており、この状態からほぼクリームのキャッチコピーを実感することができます。

 確かに新食感なので、何かに例えることも難しいのですが、強いて挙げるとすれば、薄焼き・固焼きのデニッシュ生地を密にしたような感じ?って、お分かりになるでしょうか。

 ですので、食べる際には気を付けないと、口で加えた以外の部分から3種類のクリームがはみ出るような事態になってしまいます。

 なお消費期限は、10℃以下の冷蔵保存が条件ながら、製造日+3日に設定されています。

 ん? 後充填でホイップクリームを使用したようなホールセールのシュークリームは、通常どの程度の日持ちがあるのか、よく調べていませんので、またコンビニ等へ行った際に比較してみます。

製パン機械設備の実際 ~ 国産スパイラルミキサー

スパイラルミキサーの特徴

 今やソフトなパンを作る技術において、日本は世界をリードする存在となっています。

 その製造過程で、製品品質に合致した製パン機械設備が選択されるのは当然のことなのですが、ソフトなパン以外の例えばしっかりした歯ごたえのパンを製造するために硬めの生地を仕込む際には、当然のことながら、その製品にあった設備をセレクトします。

 一般的に日本では縦型ミキサーを使用するケースが目立つのですが、硬めなハード系の生地を仕込んでいるベーカリーではスパイラルミキサーを採用しているケースも多いと思います。

 このスパイラルミキサーですが、やはり需要と供給の関係なのでしょうか、日本のミキサーメーカーにおいても自社製品を市場へ投入した時期は、縦型ミキサーと比較して随分後発となっている気がします。

 では、国産の製パン機械設備について解説します。

関東混合機工業

 1918年に創業し、昨年は創業100周年の記念イヤーとなりました同社は、1991年イタリア・サンカシアーノ社と販売提携してスパイラルミキサーの輸入・販売を開始します。

 当然、国内で導入しましたユーザーへは同社がメンテナンスを担っていましたので、必然的にスパイラルミキサーのノウハウも蓄積されることになります。

 そして時を経て、2008年に日本初のスパイラルミキサーの開発に着手し、2013年国産初の同機の開発、商品化に漕ぎ着けます。

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 同社が製造するスパイラルミキサーは、比較的小型のリテイルベーカリー向けの機種で50・100コートのボウル容量の機種がラインナップされています。

 参考までに、関東混合機工業のHPでは、生地の仕込み量が、小麦粉基準で4~8kg(50コート)、12~18kg(100コート:推算値)と記載されています。

 このミキサーを使用したこともあるのですが、縦型ミキサーと異なり、ボウルに投入した生地中の一定量をミキシングするスパイラルミキサーは、仕込み量によってミキシング時間を調整しなければなりません。

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 ミキシング中のボウル内を見て頂ければ、その理由も推測ができるかと思います。

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愛工舎製作所

 同社は、1938年に創業し、現在では関東混合機工業と日本で双璧を成す、縦型およびスパイラルミキサーのメーカーです。

 1980年台にはスパイラル式ミキサーを(?輸入)販売を開始し、2010年に製パン専用「アイコー・スパイラルミキサー」を発売しています。

 ボウル固定式のミキサーは、店舗等比較的小~中規模な製造施設に合わせて、ボウルサイズは45ℓ~380ℓと幅広いラインナップを揃えます。

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 この設備では、回転しているボウル上部の安全カバーを外すと安全装置が働き、ボウル&フックの動きが停止します。

 そして、さらに規模が大きな製造ライン向けに、脱着したミキシングボウルのまま、発酵、ねかしを行うことができる機種があります。

 ボウルサイズは、154ℓ~673ℓ(ボウル固定式)とスケールアップします。

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 この機種では、ボウルの脱着の際にフックが引っ掛からないようにしなければならない為、フック部分が上下する構造となります。

 以前にも解説しました通り、ミキシング生地の出来は圧力と剪断応力の作用に由来すると考えています。

 特に、圧力に関しましてはフックとボウル壁面のクリアランスが重要なファクターと成り得ることから、下画像のフックとボウルの形状が実に絶妙に設計されていると思わずにはいられません。

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長崎を歩いて ~ ご当地パン?

スーパーマーケットとコンビニ巡り

 10月27日(日)から長崎に来ています。

 自宅の最寄り駅をAM6時40分に出て、長崎に着いたのがPM12時40分頃ですから、ほぼ半日が移動時間です。

 目的は、第40回日本熱物性シンポジウムの参加と長崎大学での講義なのですが、事前にご当地のソウルフード的なお菓子情報があったこともあり、長崎に着いて最初のミッションは、スーパーマーケットとコンビニ巡りです。

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 長崎の地元の商品というのは、実はパンではなく、アイスクリーム。

 竹下製菓という佐賀県のメーカーが出しているブラックモンブランとミルクックがそれです。

 愛知県にいる私にとっては、好物のチョコバリというアイスクリームの話題が出ていましたところ、九州なら…と紹介のあった商品です。

 COCOWALKというショッピングモールやセブンイレブン等のコンビニを覗いてきましたが、行ったすべての店舗でこれらのアイスは売られていました。

 ところで、さすがにまったくパンに触れない訳にもいかないと、ホテル近くのファミリーマートで店員さんに地元の特徴的なパンを教えてもらいました。

 ・・・それがコールスローサラダパン(128円 税抜)、で、?とは思ったのですが、店員さんに尋ねた手前買わない訳にもいかず、結局購入してホテルで試食です。

 ただ、この製品、包装紙の裏を見てみますと山崎製パンが製造元となっていて、そこを考えますと何らかのリサーチが効いているかもと思ってしまいます。

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 製品は、至ってシンプルです。

 食事パン系の生地に、ハムとコールスローサラダを挟んだものなのですが、ハムはサラダから生地への水分移動を防ぐ目的もありそうです。

 さて、アイスに話を戻しますと、購入したミルクックはシャリシャリ感に練乳味で、バーの部分にはくじが付いています。

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 残念ながら、はずれ~!

 当たりはポイントになっていて、点数を集めるともう1本もらえるとか。

 ブラックモンブランもホテル近くのセブンイレブンへ買いに行きました。

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 もう、この頃には、わざわざ探さなくても、どこでも買える気になっています。

 上の写真がアイスコーナーの様子ですが、あのブラックサンダーブラックモンブランが売り場で凌駕していることがヒシヒシと伝わってきます。

 そして、ヨーグルトでも(私にとって)目新しいものが!

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 愛知県でも”しろくまアイス”はよく見かけるのですが、ここで売られていましたのは”白くまヨーグルト”です。

 たっぷりのフルーツに小豆甘納豆のアクセントが、絶妙です。

 すごく感動したのですが、よく見てみますと、このヨーグルト、森永乳業の神奈川県の工場で製造しているみたいです。

 う~ん、長崎まで来たのに福岡県の丸永製菓じゃない!

 まあ、考え方を変えれば、愛知県でも探せば見つかる?

中国のパン事情 ~ キャッチコピーは『日清製粉の粉を使用!』

中国で『生食パン』

 中国の製パンメーカーHolilandが生食パンを発売しました。

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 他にもいくつかのメーカーが出しているようですが、事の流れは日本での生食パンブームが中国にも届いたということのようです。

 以前にもご紹介しましたように、中国のみならずいくつかの国々で日本を模倣する動きが見られます。

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 ふーん、それで、と思われた方も多いと思います。

 また、日本のブームをコピーして、と。

 ところが、よくよく考えてみますと、日本では一般的に食パンをトーストして食べますから、そこへトーストしなくてもおいしく食べられる生食パンが登場した背景があります。

 一方、中国では元々トーストして食べる習慣がありません。

 つまり、既に生食パンの状態で食パンを食べている環境にあります。

 ここで、あえて日本の生食パンのトレンドが入り込むのですから、どのようなパンなのだろうと興味が湧きませんか?

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 この商品はネット通販の食パンで、添付のパンフレットには日本のパン用粉と書いてあるそうです(すみません、中国語が完全に理解できていませんので、通訳してもらった内容を基に記載しています)。

 また、日清製粉のパン用粉を100%使用している、とも。

 ただ、この『日本の小麦粉』という記載と『日清製粉の小麦粉』という記載が混在していて、ぱっと見では日本産の小麦で作った小麦粉と読めてしまいます。

 ここは想像なのですが、明確な記載がないところで、きっと中国産あるいは日本以外の外国産の小麦を日清製粉の中国の工場で挽いているのでは思ってしまいます。

 中国では、生吐司と書いて生トーストと読み、意味としては生食パンを示すそうです。

 つまり、焼かなくてもトースト=食パン、ということなのですね。

 トーストするといった日本の慣習が、製品の名称になってしまっている訳です。

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 だんだん、言葉の意味が理解できなくなってきていますので、製品について解説します。

 立方体に近い1斤サイズの食型で焼成した商品で、重量は420gと重めです。(日本では1斤:340g以上と定義されていますので、その10%増の375g程度が最近では一般的なトレンドです)

 ここで、HolilandのHPでおもしろい記載を見つけました。

 『普通の小麦粉は給水が50%であることと比較して、使用している日清製粉の粉は70~80%の給水で仕込むことができる』と、いうものです。

 当然、パンを作った経験をお持ちの方なら、まさか!っとかなりの驚きを持たれることが想像に難くありません。

 一般的な、食パンであれば60~68%の給水で仕込むところ、50%とか80%といった数値が出てくるのですから。

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 外観から、リテイルベーカリーで一般的な俵成形の二つ玉で型詰をしています。

 焼色は極端に薄くはないのですが、若干薄めといったところでしょうか。

 そして、気になります内相ですが、目は丸目で縦目のすだちは確認できませんでした。

 生地は伸びている感じではなく、非常に膜厚です。

 また、ずいぶんと粗い感じでところどころに大きな気泡が点在しています。

 端的に、先述のパンフレットの記載内容とこの商品の品質から、ずいぶん給水率の高い製品では、と推測しています。

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 ただ、誤解されませぬよう。

 けっして、この商品を否定している訳ではなく、私の感覚と異なる商品が中国の市場で認められているのであれば、そのニーズに応える商品を提供していくために製品開発を行っていかなければ、と思う次第です。

 中国では、私の想定外のことが頻繫に起こっています、まさにドラマチックです!