黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

製パン機械設備の実際 ~ 国産スパイラルミキサー

スパイラルミキサーの特徴

 今やソフトなパンを作る技術において、日本は世界をリードする存在となっています。

 その製造過程で、製品品質に合致した製パン機械設備が選択されるのは当然のことなのですが、ソフトなパン以外の例えばしっかりした歯ごたえのパンを製造するために硬めの生地を仕込む際には、当然のことながら、その製品にあった設備をセレクトします。

 一般的に日本では縦型ミキサーを使用するケースが目立つのですが、硬めなハード系の生地を仕込んでいるベーカリーではスパイラルミキサーを採用しているケースも多いと思います。

 このスパイラルミキサーですが、やはり需要と供給の関係なのでしょうか、日本のミキサーメーカーにおいても自社製品を市場へ投入した時期は、縦型ミキサーと比較して随分後発となっている気がします。

 では、国産の製パン機械設備について解説します。

関東混合機工業

 1918年に創業し、昨年は創業100周年の記念イヤーとなりました同社は、1991年イタリア・サンカシアーノ社と販売提携してスパイラルミキサーの輸入・販売を開始します。

 当然、国内で導入しましたユーザーへは同社がメンテナンスを担っていましたので、必然的にスパイラルミキサーのノウハウも蓄積されることになります。

 そして時を経て、2008年に日本初のスパイラルミキサーの開発に着手し、2013年国産初の同機の開発、商品化に漕ぎ着けます。

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 同社が製造するスパイラルミキサーは、比較的小型のリテイルベーカリー向けの機種で50・100コートのボウル容量の機種がラインナップされています。

 参考までに、関東混合機工業のHPでは、生地の仕込み量が、小麦粉基準で4~8kg(50コート)、12~18kg(100コート:推算値)と記載されています。

 このミキサーを使用したこともあるのですが、縦型ミキサーと異なり、ボウルに投入した生地中の一定量をミキシングするスパイラルミキサーは、仕込み量によってミキシング時間を調整しなければなりません。

www.santa-baking.work

 ミキシング中のボウル内を見て頂ければ、その理由も推測ができるかと思います。

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愛工舎製作所

 同社は、1938年に創業し、現在では関東混合機工業と日本で双璧を成す、縦型およびスパイラルミキサーのメーカーです。

 1980年台にはスパイラル式ミキサーを(?輸入)販売を開始し、2010年に製パン専用「アイコー・スパイラルミキサー」を発売しています。

 ボウル固定式のミキサーは、店舗等比較的小~中規模な製造施設に合わせて、ボウルサイズは45ℓ~380ℓと幅広いラインナップを揃えます。

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 この設備では、回転しているボウル上部の安全カバーを外すと安全装置が働き、ボウル&フックの動きが停止します。

 そして、さらに規模が大きな製造ライン向けに、脱着したミキシングボウルのまま、発酵、ねかしを行うことができる機種があります。

 ボウルサイズは、154ℓ~673ℓ(ボウル固定式)とスケールアップします。

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 この機種では、ボウルの脱着の際にフックが引っ掛からないようにしなければならない為、フック部分が上下する構造となります。

 以前にも解説しました通り、ミキシング生地の出来は圧力と剪断応力の作用に由来すると考えています。

 特に、圧力に関しましてはフックとボウル壁面のクリアランスが重要なファクターと成り得ることから、下画像のフックとボウルの形状が実に絶妙に設計されていると思わずにはいられません。

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