黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

街のパン屋さん ~ とく川・高級食パン専門店 純生

 2019年5月、名古屋市東区車道に高級食パン専門店『とく川』がオープンしました。

 

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 実は、以前に実験装置用の布(耐熱性の高い繊維)を買いに大塚屋という手芸センターへ行きました折、道路を隔てた向かいに見掛けましたのが、この高級食パン専門店です。

 

 今回、家族がプレーンの純生を購入してくれましたので、ご紹介します。

 

【 目次 】

 

とく川

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 外からも窓辺の棚に並んでいる商品の食パンが見えます。

 

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 右の扉から入って、窓辺の棚を店内から見るとこんな感じです。

 

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 そして、こちらが店内奥側の様子ですが、全体的にゆったりとした感覚・・・、これが高級感を醸し出している気もしています。

 

 取扱商品は、プレーンの『純生(2斤/800円 税別)』、名古屋名物・小倉&バターをコンセプトにした和菓子感覚の『あん巻(1斤/800円 税別)』、サンマスカットレーズンを使用した『果実宴(2斤/980円 税別)』の3種類です。

 

純生

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外観

 全体的に焼色は濃い目で色調としましては、褐色が強い気がしました。

 

 一般的に、糖による褐変化反応(カラメル化反応)はこのような色合いの傾向にありますので、配合中の糖量が効いている感じです。

 

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 パンの底面を見てみますと、おへそのような跡が4つくっきりと見えます。

 

 これはけっしてパンの不具合ではなくて、底にガス抜きの穴が付いた食型を使用して焼成している証なんです。

 

 食パンの型には、底部にガス抜きの穴が付いているタイプと付いていないタイプがあって、穴が付いていない食型ではパンの底面がフラットできれいに焼ける一方で、焼成中の底部に不規則にガス溜りができることが時々あります。

 

 ガス抜きの穴が付いていますと、画像のようにおへそのような跡がパンに付いてしまいますが、溜まったガスによる遮熱の影響がなく、安定した焼成条件で食パンを焼くことができます。

 

 焼き方にこだわる人は、穴付きの食型を選ぶ傾向にあるのかもしれませんね。

 

内相

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 内相の色は、とても白いです(写真がうまく撮れていません、失礼致しました m(__)m )

 

 目はとても細かいのですが、縦に伸びている感じはあまりなく、丸目の内相になっています。

 

食感

 食べてみますと、非常にソフトでしっとりとしています。

 

 そして、そのソフトさとしっとりさは購入の翌々日に食べてみても感じることができます。

 

食味

 まず、最初に感じる食味は糖の甘さです。

 

 これは、クラストの色からも推測ができますし、なによりとく川の商品説明でも甘さを謳っていますので。

 

成形方法が分からない・・・

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 純生食パンの側面を見てみました。

 

 今回、この食パンを見て、分からないのが、成形方法です。

 

 4つ玉でロール成形しているであろうことは、なんとなく分かるのですが、それにしても巻いた跡が両サイドの低い位置にしか見えません。

 

 内相の縦目と併せて考えてみると、もしかしますとかなりの高い吸水で仕込んでいるのかもしれませんね。(一般的な常識の範囲を超えたような)

 

 それであれば、成形時の生地の取扱いが非常に大変で、結果生地の形状を保つのも難しくなります。

 

 思えば、乃が美やセブンイレブンの金の食パンに関しましても、(これまでの製パンの)常識では考えられない程柔らかいレベルの高加水の生地で仕込んでいるといった話を聞いたことがあります。

 

勝手な妄想

 さすがに大手と言われますホールセールの製パン会社でも、既存の食パン製造ラインで高加水の生地に対応することは困難ですが、対応する設備は既に開発されています。

 

 この流れで、高加水の食パンがスーパーやコンビニの日販品のパンで発売されたりするのでしょうか・・・、予想はまったくつきませんが。

 

 

ホールセールのパン ~ (ロングライフ)天然酵母パン・デイプラス

 今日は東京都と近郊の県で不要不急の外出を自粛要請があったりと、ここ愛知県でもなんだかあまり外出できる雰囲気ではありません。

 

 ただ、生活必需品を買いに近くのドラッグストアへ。

 

 最近のドラッグストアには、医薬品以外に食料品の品揃えも素晴らしいものがありますので、ついでに覗いてきてしまいました。

 

 それで、結局用事が済めば帰宅するしかありませんので、今はこの記事を打っている次第です。

 

【 目次 】

 

パンの棚

 当初目的の買い物を済ませて、パンコーナーを探してみます。

 

 ありますね~、数社のパンメーカーの製品が並んでいます。

 

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 棚の端から順に覗いていきますと、・・・んっ?、少し品薄になっている棚が・・・。

 

 その商品を見てみますと、ロングライフのパンのようです。

 

 1週間ほど前にロングライフのパンについてリポートしましたが、その流れで別のメーカーの商品についてご紹介します。

 

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デイプラス

 今回は、デイプラス(群馬県高崎市)の天然酵母パンを購入しました。

 

包装

 まず、手に取ってすぐ分かることは、通常日配製品に使用される包装フィルムより、厚みを持ったものを包装紙として使用していることです。

 
 外気を通しにくくし、包含されていますアルコール製剤の効果を高める役割です。

 

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 この商品の賞味期限は製造日から70日となっています。(今回購入しました商品の賞味期限は、2020年5月11日でした)

 

 そして、賞味期限の長さを生かして、ネット販売もされているようです。

 

酵母

 デイプラスのパンには、天然酵母(発芽玄米酵母種)が使用されています。

 

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 発芽玄米酵母種には乳酸菌が含まれていて、その乳酸菌の働きにより、カビ等の繁殖しにくい生地環境になっていると考えられています。

 

 乳酸菌の生成する乳酸は、食品のpHを酸性にすることで、有害な菌の生育を阻害することが一般的に知られています。

 

水分活性

 水分活性値が低く(0.9以下)、微生物の繁殖しにくい環境になるように、商品設計がなされています。


 水分活性値は微生物が利用できる自由水の割合を示していて、水の水分活性は1で、1に近い程微生物は増えやすくなります。

 

 一般的に、水分活性0.9以下が微生物の繁殖しにくい、保存性の良い食品とされています。(ちなみに一般的に流通している食パンの水分活性値は、0.95くらいです。)

 

アルコール製剤

 個包装に入っているアルコール製剤からアルコール蒸気が包装内に拡散し、カビを殺菌あるいは抑制するしくみになっています。

 

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 アルコール製剤(食べられません! 通常は、商品の裏面にくっついていますので、ちゃんと取り剥がしてね~!)は、バージンパルプにエタノール主体の鮮度保持液を含浸させてあるそうです。

 

 もちろん、鮮度保持液は全て安全な食品添加物で調合されていて、エタノールの量も微量ですので、人体への影響はありません(ただ、アルコールの匂いが気になる方は、開封後少し間を取ってから食べられた方がいいかも)。

 

外観形状と食感

 この商品の特徴は、高さのある外観形状ですね。

 

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 見た目にもしっとり・ふっくら感が伝わってきます。

 

 この形状と食感は他社のロングライフパンには、あまり見られない特徴と思います。

 

成形方法

 さて、このふっくらしたロングライフのパンですが、どのようにして作られているのでしょうか。

 

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 当然、製造現場を知っている訳でもないのですが、考えられます作り方を記述していこうと思います。

 

 生地はフラワーペーストをロールインしたシート生地で、層の数は30層ほどになっています。

 

 そして、パンの高さを出すためにセルクルを使用していると思われます。

 

 シーティングした生地は厚みの4倍程度の長さにカットして4本を束ね、セルクルに層の面を上下にして詰めます。

 

 そうなりますと、束ねる前のシーティング生地の層の数は7~8層(=30/4)となりますから、折込みは(三つ折り1回+二つ折り1回)といったところでしょうか。

街のパン屋さん ~ ミスタードーナツ 桜咲くドドーナツ

 3月6日、ミスタードーナツから『桜が咲くドドーナツ』シリーズが発売となりました。

 

 生地は桜もちをイメージさせるようなもっちりしたドーナツが3種類と、フレンチクルーラーの『桜フレンチ』が3種類ずつです。

 

【 目次 】

 

いざ、ミスド

 

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 1月のパティスリードーナツコレクション(ピエールエルメとのコラボ)の時には、なかなか全種類制覇が叶わなかった教訓を思い出しながら、とりあえず平日にミスドへ出掛けました。

 

 

 

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 とりあえずお店の外までは行列ができていなかったのは、桜シリーズが始まってから2週間が経ち、少しは落ち着いているかと思いながら、中へ入ります。

 

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 しっかりと行列はできていました(しかも、品薄の商品もチラホラ・・・)。

 

桜が咲くドドーナツ

 

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 それでも買えましたよ、全品種!

 

桜もちっとドーナツ 桜フレーバー(120円 税抜)

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 桜もち感覚の生地に、グレーズでコーティングされたドーナツです。

 

 グレーズは、ピンク掛かった色合いで桜もち風味です。

 

 桜の風味を味わうのでしたら、一押しです。

 

桜もちっとドーナツ あずき(130円 税抜)

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 桜もち感覚の生地を横カットして、粒あんがサンドされています。

 

 下部の一部がホワイトチョコでコーティングされていて、これがアクセントになっています。

 

 

 桜もちっとドーナツ きなこ(120円 税抜)

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 先述の2品と同様の桜もち感覚の生地の裏側にグレーズが掛けられ、表面にはしっかりときなこシュガーを付けました。

 

 なんだか、素朴感が広がる一品です。

 

 今回の桜シリーズのドーナツ6個を一度に購入しますと桜もちっとドーナツ きなこだけ、グラシン紙に包んでもらえます。

 

 

桜フレンチ 桜フレーバー」120円(税抜)

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 ピンク色のフレンチクルーラー

 

 桜フレンチでは、もっとも桜をシンプルに感じることのできるドーナツです。

 

 桜もちっとドーナツ3品と比較しますとピンク色が鮮やかで、ビジュアル的にも春を楽しむことができるドーナツです。

 

 コーティングされていますグレーズもほんのりと桜色&桜風味が・・・。

 

桜フレンチ 桜風味ジュレ&ホイップ(150円 税抜)

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 桜色のフレンチクルーラー生地に、更に桜風味が感じられるジュレホイップクリームがサンドされたドーナツです。

 

 生地の下部にはストロベリーチョコが掛けられ、インパクトのあるフランボワーズの顆粒がちりばめられた一品。

 

桜フレンチ あずき&ホイップ(150円 税抜)

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 先述2品の桜フレンチと同様の生地に、相性の良いホイップクリーム粒あんをサンドしたドーナツです。

 

 仕上げのコーティングでは、ホワイトチョコレートとストロベリーチョコレートのツインチョコで飾り付けてあります。

 

いっぱい買ってもらって、おいしいドーナツを作る

 ?おいしいドーナツだから、いっぱい買ってもらえるのでしょう・・・。

 

 ここで、少しフライ油について解説しますね。

 

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 ドーナツのフライに使用する油は、温度や時間によって酸化等の劣化が進みます。

 

 新品の油は黄金色できれいであっても、経時的に濃い褐色な油へと変色に伴って、変質していきます。

 

 当然、古くなった油は取り換えればいいのですが、どうしても商品の売れ行きが芳しくないと油代も・・・、なんてことを考えない人が出てこないとも限らないですよね。

 

 ところが、ドーナツはフライする工程で熱の移動に伴います生地の温度上昇の結果、水分が蒸発するのですが、生地内では水分と油の置換も同時に生じています。

 

 つまり、ドーナツを揚げる度に油の量が減っていきますので、作業する側としましては、適宜新しい油をフライヤーに追加投入しなければなりません。

 

 ひとつの目安として、ドーナツをたくさん作れているところは、良質の油で揚げていると思って頂いていいと思います。

ホールセールのパン ~ ランチパック・山崎製パン

 もはや消費者から完全に市民権を得ています山崎製パンのランチパック。

 

 スーパーマーケットでもコンビニでも、まず間違いなく並んでいる商品ですよね。

 

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 今回は、そんなランチパックのお話です。

 

【 目次 】

 

ランチパックは、何種類のアイテム数があるの?

 ランチパックのアイテム数を調べにHPへ見に行ってきますと、現在発売されていますのは計64種類となっていました。

 

 商品は大きく『惣菜』『スイーツ』『全粒粉』の3シリーズに分けられています。

 

 惣菜シリーズでは、人気No.2のたまごやNo.3のツナマヨネーズを筆頭に全31品種が揃っています。
 

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 そして、スイーツシリーズでは(今回購入しました)人気No.1のピーナツ(140円 税込)の他、小倉&マーガリン等、計29品種がラインナップされています。

 

 今のトレンドを踏まえて、タピオカミルクティー風味クリーム&ホイップなる商品も一部地域で販売されているとのこと(どこだ?)。

 

 なお、全粒粉シリーズはサバマヨやダークチョコ等、計4品種です。

 

 ご参考までに、これまでに発売されましたランチパックのパッケージは、20個/ページの表示で91ページありました・・・。

 

 ということは・・・、1800種類以上の商品が世に送り出された、と。(ハンパな数じゃないです!)

 

ランチパック用の食パンは、実は生食パンだった!

  帰宅して、早速1番人気のピーナツを頂きます。(以前のヤマザキ春のパンまつりで頂きました白い皿に載せて・・・。)

 

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 ランチパックに使われています食パンは、専用の食パンで、そのままで食べても美味しく味わえるように、しっとりふわふわに焼き上げています。

 

 ということは、言ってみれば生食パンという訳ですね。

 

 独自の製法で作った食パンは、具材の水分やクリームが生地へ染み込むのを防ぎ、しっとりふわふわの食感をキープしてくれるのだとか。

 

製造工程

 焼き上がったしっとりふわふわの食パンは、専用のスライサーでスライスされます。

 

 この記載、すんなり通り過ぎてしまいそうなのですが、実は業界では随分画期的な製法だったのです。

 

 ランチパックの発売当時、クラストを切り落とすサンドウィッチ用食パンの製造では、一般的には先にクラストをカットしてからバンドスライサーやレシプロスライサーで一気に規定の厚さにスライスされていました。

 

 店舗のように1枚1枚スライスするような発想はありませんでした。

 

 しかし、この方法では効率は良いものの、焼きたてのソフトな食パンは潰れてしまってスライスできません。

 

 山崎製パンでは、あえて逆転の発想でソフトなランチパックの製造に成功した訳です。

 

 ちなみに、この製造技術に関しましては、特許庁関連の特許情報プラットホームで関係する技術を検索しますとヒットしますよ。

 

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 スライスされました食パンの上には具材が乗せられて、もう1枚の食パンでサンドをし、クラストをカットしたあと、包装していきます。

 

 このスライスから包装までの工程は、2分弱掛からずノンストップで行うそうで、結果として切りたての食パンはパサつくことなく、しっとりふわふわのまま密封されることになる訳です。

 

 ランチパックは、全国の工場で年間約150種類が製造され、昨年2019年の1年間で約4億個作られたそうです。

 

 あまりイメージが湧きませんが、全部並べると、長さは地球1周分(約4万キロ)を超える長さに相当するとのこと。

 

ヤマザキ春のパンまつり

 今回購入しましたピーナッツに付いていた点数は1点でした。

 

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 ダブルソフト(198円 税別)の2.5点と比較しますと、少々コスパが・・・。(この場合、ダブルソフトのコスパが高いという考え方もありますが)

 

 私としては、あともうちょっと、と言いたいところなんですけどね~。

 

 今から36年前の1984年に、4品(ピーナツ・青りんご・小倉・ヨーグルト)からスタートしたランチパックは、現在、他社の追随を許さず、確固とした地位を築いています。

 

 補足ですが、1984年からずっと人気No.1なのが、「ピーナッツ」なんだとか!

パン作りに欠かせない・・・手粉 ~ 今回は地味なテーマ?

 手粉、それは配合表にも記載されない隠れた原材料。

 

 そんな黒子のような存在の手粉にスポットライトを当ててみました。

 

【 目次 】

  

 手粉と言いますのは、本来、パン生地を加工する際に表面がべた付いて操作の妨げになることを防ぐ目的で用いられるものです。(下の画像は、使用した天板に手粉を散布し、そこに並べた冷凍生地を解凍後に取り出しているところです)

 

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 どのグレードの粉を使用するかは、それぞれのベーカリーの判断なのでしょうが、強いて言えば、そこにあった粉・・・、特に決まりはありません、半端な量が余ってしまったとか・・・。

 

 でも、大手の製パンメーカーでは使用量が多いこともあって、手粉用の専用粉を使用しているようですね。

 

 それでは、分割後の玉生地を丸める工程から成形までに焦点を当てて、解説することにします。

 

丸目

 手作業であれば、丸めた後の生地を目視しながら手粉が散布されたキャンパスに押し付けますので、ほぼ間違いなく生地の表面全体に手粉を付着させることができます(画像は、冷凍生地解凍後の再丸目)。

 

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 これは至って普通の作業なのですが、時として人の手というものの偉大さを知ることになります。

 

 手作業と比較して、装置(ラウンダー)を使用して連続的に生地を流す場合は、丸められた生地がハーフパイプ形状のシュートを転がりながら搬送されるシーンをよく見かけます。

 

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 このシュートの入口部分には、手粉を散布している装置があって、丸目を終えたパン生地は降り注ぐ手粉のシャワーを通過しつつ、手粉が溜まったシュートの坂を転がってくる訳です。

 

 ところが、これがなかなか確実に生地前面に手粉を付着することができず、往々にして一部がべた付いたままの状態で出てきてしまいます。

 

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 そこで考えられたのが、シュートの部分が回転してより確実に手粉を付着させようとした装置です。

 

 今、もっとも効果的な装置では、と思っています・・・、ただし、この装置でも若干の手直しが必要ではあるのですが。

 

ベンチタイム

 丸目直後の生地はダメージが残っていますので、15~30分程度、生地を休ませます。

 

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 細心の注意を払うところは『生地を乾かさず、そして湿らさず!』です。

 

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 つまり、ベンチタイム時の生地周囲の環境は『生地と同じ温度で、相対湿度100%』の状態が求められることになります。

  

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 手作業の場合は、パン生地をキャンバスで覆い、霧吹きした後に、閉じた空間で

一定温度を保てば対応できます。

  

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 しかし、連続生産ラインのオーバーヘッドプルファー(以下、OHP)では上図のようなメッシュ形状の籠に入れられて生地を休ませます。

 

 見ての通り、生地は露出しており、周囲の空間の影響を受け易いことは容易に推測できます。

 

 手粉の重要性はますます増します。

 

成形

 手作業の成形時には、めん棒に生地が付かないよう手粉を使用します。

 

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 ただし、手粉を付けすぎますとロール成形時に生地が結着せずに、最悪の場合、焼成後の製の内相にカギ穴と呼ばれます空洞ができたりしてしまいます。

 

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 成形機(モルダー)は、どのような構造になっているのでしょうか。

 

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 上図①の圧延ローラーの近傍には、ちゃんと手粉の装置が付いています。

 

手粉の付着が不適正だった時の不具合

 大まかにですが、連続生産ラインで丸目~成形時にパン生地への手粉の付着が不適正だった場合の不具合を列記してみました。

 

・OHPに生地が付着して、ライントラブルとなる。

・モルダー(特に圧延ローラー)に生地が付着して、ライントラブルになる

・成形後の生地が十分に結着せずに、製品内相の品質低下を引き起こす。

 

 どうですか、地味ですけど重要な手粉のお話でした。

 

雑談

 最後に、パスコの国産小麦使用食パンですが、配合表の記載では小麦粉はすべて国産小麦です。

 

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 しかし、以前に発売されていました国産小麦食パンには『国産小麦100%』の記載がありませんでした。

 

 どうして、国産小麦100%使用と記載しなかったのでしょうか。

 

 それは、生産ラインで使用しています手粉が外国産小麦だったから、のようです。(省庁の指導では、国産小麦100%の記載で問題なしとの回答を受けていたようなのですが・・・4)

 

 でも、今、発売されています超熟国産小麦には、しっかりと記載されていますね、『国産小麦100%』と。