黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

冷凍したパン生地による生産システムを科学する ~ 冷凍生地製パン法①

  童謡『あさ いちばんはやいのは(阪田寛夫作詞・越部信義作曲)』をご存知でしょうか。

 

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 🎵朝 一番早いのは パン屋のおじさん 汗かいて 赤い顔 白い粉 捏ねる ヨイコラショ ヨイコラショ 

 

 お次は 豆腐屋さん・・・🎵 の後、牛乳屋さん、新聞の配達、と続きます。

 

 この曲ができました頃と時代が変わっても、30年ほど前まではパン屋さんのイメージとしてそれほどの違いはなく、実際の(店舗での)製パン業務を如実に反映していました。

 

 そのような厳しい労働環境に一筋の光明が差し込まれる一助となりましたのが、冷凍生地製パン法です。

 

 実は私が以前の企業に在籍中、工場勤務から中央研究所へ異動となって最初に携わりました課題が、当時まだ発展途上だった、この製法でした。

 

【 目次 】

 

なぜ、パン生地を冷凍するのか

 製パン法にもよりますが、長い時間を要する作り方であれば仕込みから焼成・冷却が完了するまで5~7時間を要することもありえます。

 

 例えば、原材料の計り出しは前日に済ませたとしても、店舗の開店当日に仕込みから始めますと、午前10時の開店時にある程度の品揃えをするためには午前3時頃に起床しての準備が必要となる計算になります。

 

 この過酷な作業条件の緩和が、冷凍生地製パン法の第一の目的です。

 

 例えば、前日に冷凍庫から必要数の冷凍パン生地を取り出しておいて、ドウコンディショナーにセットしておけば、翌日の出勤時には解凍まで済んだ状態で、復温、成形といった工程から始めることができる為です。

 

 この製法であれば、朝6時に出勤しても十分な品揃えを開店までに済ませることが可能になります。

 

 もちろん、簡単にパンができるようになったからと言って、品質が落ちてしまうのでは本も子もありません。

 

 しかし、その製品品質も、原材料、パン製造、製パン機械の各メーカーの企業努力の末、現在はスクラッチ製法と同等程度の品質が確立されています。(その点に関しましては、追って解説していく予定です。)

 

 あと、冷凍パン生地を使用する利点としては、準備する機器類を簡素化できる点も挙げられます。

 

 このことは、店舗を経営していく為には非常に重要な項目のひとつで、初期投資および製パンスペースの抑制を図ることができます。

 

冷凍生地製パン法

 それでは、この冷凍生地製パンとは、どのような製法なのかを解説していきますので、まずは下の工程図を見て下さい。 

 

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 通常の製パン法の中に『冷凍~保存~解凍』といった操作が組み入れられています。

 

 この図では、成形の後に冷凍の工程が組まれていますが、パン生地を冷凍するタイミングは、製法によりまして丸目の後だったり、成形あるいは発酵の後だったりします。

  
 広い目で見るのであれば、今、流行の兆しが見え始めています焼成後冷凍のパンも含まれるかと思います。

 

一般的に、上記のそれぞれは玉生地、成形生地、ホイロ後冷凍生地と呼ばれていますが、次にそれぞれの製法について解説します。

 

玉生地冷凍

 本捏ねミキシング後の分割、丸目を行った生地を冷凍する方法です。

 

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 この玉生地のように工程の上流で冷凍した生地は、解凍後の製品加工のレパートリーが増えますが、作業者にとりましては成形の技術が求められ、作業時間も長くかかります。

 

成形冷凍

 その言葉の通り、生地の成形後に冷凍する製法です。

 

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 この製法での留意点は、分割・丸目後に生地ダメージを修復するための中間発酵を取りません。

 

 パン酵母は、発芽・活性しますと冷凍耐性が極端に低下することが知られている為です。

 

 その意味では、製法はストレート法として発酵の工程を取らないようにします。

 

 なお、作業者にとりましては玉生地よりも取扱いが簡便ですので、より製パンの技術を必要としません。

 

ホイロ後冷凍

 さらに工程が進んで最終発酵を取りました生地を冷凍する製法が、ホイロ後冷凍です。

 

 現在、この製法は対応できます品種がそれなりに限定され、加えて様々な研究や試行が行われています。

 

 ホイロ後冷凍生地では、解凍後の作業時間が短時間で済み、成形冷凍生地以上に簡便(製品によっては、冷凍の状態のまま天板に並べて、すぐに焼くことができるようなパン生地も開発されたほどです)に取り扱うことができます一方、なかなか手を加えて製品に変化を付けることは困難になってきます。

 

 そのような意味では、海外からも進展が最も注目されている技術と言えます。

 

製法の改良

 今では、ほぼ確立されました感のある玉生地冷凍の製パン法ですが、私が研究に取り掛かりました当初では、少し条件がずれるだけで生地がダレる、内相が荒れる、発酵してこない、といった不具合が乱立状態でした。(しかも、焼き上がったパンの品質は、焼き上げた自分でも食べたいと思えない程度のものしかできません。)

 

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 そのような折、私にできることは適正な冷凍条件を探し出すことでした。

 

 機械屋の私が取りました行動は、見ることができないパン生地の内部をコンピューターシミュレーションで見えるようにすること。

 

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 たかだかパンの作り方にコンピューター? と思われるかもしれませんが、私に言わせれば、パン生地の状態変化も分からずに試作の製パンを行う方がよほど不透明な気がしていました。

 

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 私のような人間は製パン業界では希少種でしたから、始めの頃は随分奇妙がられたように思います。

 

 でも、ちゃんとプログラミングをしてあげれば、コンピューターは再現性のある結果を教えてくれますので、研究の進捗に伴って周りの人達も徐々に興味を持ってくれるようになったことが嬉しかったですね。

 

終わりに

 最近の農林水産省の発表では、日本においてパン用に消費される小麦粉量の約10%は冷凍パン生地として製造されているそうです。

 

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 ホールセールの大型製パンラインでは、冷凍パン生地を使用して製造・出荷する製品はほとんどありませんから、小規模の製パンラインや店舗等では、非常に利用されていることが伺えます。

 
 近年ではスーパーマーケットの冷凍食品コーナーでも普通に冷凍パン生地を目にするようにもなりました。

 
 一般の家庭でも、オーブンレンジ等の普及によって、自宅でおいしい焼き立てパンを手軽に楽しめることができるような時代になってきたことを実感しています。

 

 勝手な想像ですが、コロナ禍でパン用の原材料がスーパーの棚から消えるような時代ですから、一般家庭で冷凍パン生地を作っても楽しいのでは・・・。
 

国産小麦のパン・ハルユタカと春よ恋 ~ ブーランジェリー LA TERRE(ラ・テール)

 以前の記事で、日本においてパン用として消費される国産小麦の自給率はたったの3%程度との解説をしました。

 

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 それは小麦の栽培に適さない雨の多い日本の気候が主な原因なのですが、そのような中、北海道の農業研究センターから奨励品種に登録されました春播き小麦2品種を使用してパンを作っている、こだわりのリテイルベーカリーがあります。

 

 今回は、そのような国産小麦で作られましたパンとベーカリーについてリポートします。

 

ブーランジェリー LA TERRE

 東急田園都市線の池尻大橋駅で電車を降り、そこから15分程度歩きますと北海道の厳選素材にこだわった商品を謳っていますブーランジェリー LA TERRE (ラ・テール)があります。

 

 今回、こちらのリテイルベーカリーへ足を運びました目的は、2種類の国産小麦・ハルユタカと春よ恋のパンを購入するためです。

 
 ところが、この日は30℃を超す猛暑日ながらコロナ禍の対応でマスク着用が求められる雰囲気にあり、全身の汗と口周りの蒸れが足取りを重くしていました。

 

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 それでも、なんとかお店の前に辿り着きますと店内への入場制限の張り紙が・・・。

 

 店内へ入れますのは7名まで・・・、中をのぞいてお客さんの人数を数えますと5名!、よし入れる!

 

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 店内には、食パン、菓子パン、ハード系、ペーストリー等々が陳列されており、私が店内にいた短い間でさえ、焼き上がったパンが次々に並べられている状況でした。

 

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 奥のラックには、クーリングを取っているとおぼしき数種類のハード系の製品が差し込まれています。

 

 パンの熱が取れた時点で、店頭に並ぶのでしょうね。

 

 そして、さらにその奥には存在感があり過ぎる石窯が鎮座しています。

 

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 この石窯で焼き上げているところを見ることはできませんでしたが、どう見てもセンサーを使用して炉内の温度制御を行っている感じには見えません。

 

 内燃の加減、排気と蒸気の操作でハースブレッド(直焼きパン)を焼成しているのでしょう。

 

 石窯の存在感でその隣のオーブンが希薄(普通)に見えてしまいそうですが、こちらもフランス・BONGARD(ボンガード)社製の内扉式デッキオーブンで、焼くことへのこだわりが備えられています機器装置からも伝わってきます。

 

 ちなみにボンガードのオーブンは本体の重量はあまり気にせず(?)、十分過ぎるほどの蒸気を出せることと、少々扉を開けていても焼成時には炉内温度が素早く復帰させられる十分な熱容量を持っていることが特徴的なオーブンです。

 

 オーブンサイズは、縦差し4枚用でしょうか、チラッと見でしたが、あまり見かけないサイズのようだった気が・・・。

 

ハルユタカ

 強力小麦のハルユタカは、パン用の国内産小麦の名を知らしめた最初の品種です。

 

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 ラ・テールでは、江別の農家で育てられたハルユタカを厳選して、砂糖、油脂、乳製品を使わない(麹糖使用)山形食パン『ハルユタカ (1/2斤 320円 税別)』を湯種製法で作っています。

 

外観

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 焼色はやや薄めながら、持ってみますとパンドミーのようなしっかりした骨格が分かります。

 

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 底面の焼色もやや薄めで、上面・側面とのバランスも取れています。

 

内相

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 気泡はやや大きめで少しばらついてもいますが、食感を軽く仕上げるための仕様のような気もしています。

 

食味・風味

 食べてみますと、まず小麦本来の素朴な香りを感じることができ、軽い口当たりながら適度な弾性の歯応えがあります。

 

 やはり、見た目にやや空隙が多い内相は特徴的な軽い食感を狙ってのものではないかと推測します。

 

春よ恋

 ハルユカタを改良して育種され、2000年に奨励品種として登録されましたのが、同じく強力粉の小麦・春よ恋です。

 

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 そして、その春よ恋を100%使用して、豆乳、生クリームを配合に加え、湯種製法で作り上げた山形食パンが、この『春よ恋 (1/2斤 300円 税別)』です。

 

外観

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 焼色は標準的な山形食パンに準じていて、やや高さが抑えられている形状です。

 

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 そして、底面には食型のガス抜き穴の跡が。

 

内相

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 膜は薄く、こちらの商品もやや空隙が多い内相のように見えます。

 

食味・食感

 生クリームと豆乳に因るところの乳製品系の風味が感じられ、少し甘めな食味が特徴的です。

 

 湯種製法を採用していることもあって、もっちりした食感と軽い口当たりに仕上げられています。

 

ミルクフランス

 我が家で定番のミルクフランス(180円 税別)も購入しました。

 

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 ミルクフランスという商品名なのですが、見た目には外観形状や焼色がドッグロールに近いイメージです。

 

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 底のこの状態から推測しますと、焼色の着色している部分が広く、おそらく直焼きではなく、天板を使用して焼成されているようです。

 

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 そして絞られてありますミルククリームは、しっかりこのような感じで。(軽い感じの生地なのですが、やはりフランスパンの配合なのでしょう、手で持っていないとすぐに閉じてしまいます)

 

 食べてみますと、生地は軽い感じながら弾性がありますので、何度も咀嚼(そしゃく)して生地とミルククリームの味覚を楽しみます。

 

サンタの豆知識

春播きと秋播きの国産小麦について

 小麦には、春に播いて秋に収穫する春播き小麦と、秋に播いて越冬し梅雨前に収穫する秋播きの小麦があります。

 

 冒頭に雨の多い気候は小麦に適さないと記載しましたが、梅雨と台風シーズンのリスクを抱えます春播き小麦は、北海道でさえもやはり作付面積が少ないのが実状です。

 

 ところが、日本では栽培が難しいとされてきました(パン用に適した)強力粉の小麦が、長年の研究の結果、春播き小麦で育種に成功しました。

 

 最近では、追って秋播きの小麦が奨励品種に登録され、既に北海道では作付面積が10%を超えてきました。(多くのスーパーでも、その商品を目にする機会が増えています)

 

 もうお分かりですよね、そう超強力粉の『ゆめちから』です。

 

 私は、秋播きの小麦には(かつての日本がそうであったように)稲の二毛作での対策のような可能性に勝手な期待をしています。

 

 原材料には素人の妄想ですので、解決すべき課題はまだまだあるのかもしれません。

 

 でも、日本の小麦でもっとたくさんのパンを作る事ができたら、と期待ばかりが膨らんでしまうのです。

 

天然酵母 酒粕パン ~ あんぱんと黒豆パン・梅鶯堂(うぐいすどう)

 原材料に疎い私ですが、いろいろな方の記事を読ませて頂き、少々自家培養酵母についても興味が湧いてきました。

 

 とはいえ、準備が全くできていませんので、パン作りの前に市場の商品を見てみることに。 

 

 今回は、京都・梅鶯堂(うぐいすどう)の天然酵母酒粕パンをご紹介します。

 

【 目次 】

 

梅鶯堂(うぐいすどう) 

 今回は、名古屋駅名鉄百貨店に臨時店舗が出ていたそうで、そこの商品を購入してきました。

 

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 あんぱんは、残り2個、なんとかゲットです!

 

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 ふと、横にありました空調機能が付いたショーケース内に並べられています商品を見てみますと、『冷やしずんだあんぱん』『冷やし十勝粒あんぱん』『冷やしほうじ茶あんぱん』『冷やしレモンあんぱん』と、冷やし尽くしです。(こちらも少々気になります)

 

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 立て看板には、無添加天然酵母の記載が・・・、んっ?、意図するところは汲み取ることもできるのですが、普通に日本語として?(食品添加物無添加の意味だとは思いますけど、少し略し過ぎでは www )

 

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 今回購入しましたのは、黒豆パンとあんぱんの2品です。

 

あんぱん

外観

 カヌレのような形状の型を使用しています。

 

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 波を打った側面の焼色は薄く、上面はきれいに艶が出た焼色に仕上がっています。

 

 オーブンはデッキ式のようですね、焼色のコントラストに輻射熱で加熱した特徴がよく出ています。

 

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 底の焼色も薄過ぎず、濃過ぎず、適度な柔らかさを連想させてくれる程度に付いています。

 

断面

 餡は瑞々しそうで好みの感じなのですが、ほんの少し希望を言えれば、もう少し案の量が欲しいかなぁ、と。

 

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食味・風味

 噛んで最初に口いっぱいの酒?酒粕?の風味がはっきりと感じられます。

 

 間違いなく酒粕パンと分かる生地に、餡の味が後から追ってくる感覚です。

 

 もしかしましたら、酒粕の風味と餡とのバランスはこれが良いのかもしれません。(今回の餡は食べた時も脇役で、生地の風味を引き立てているような気がしました)

 

黒豆パン

外観

 密集した黒豆が薄い生地越しにはっきりと分かる外観です。

 

 ところで、先述のあんぱんも追い種で少量のパン酵母を使用しているようです。

 

 天然酵母パンと謳っている商品でも、原材料表記を見てみますとパン酵母を併用している商品は結構ありますね。(100%天然酵母のパンとは、表記上、表現を分けなくても問題はないのでしょうか・・・消費者目線では・・・)

 

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 上面の焼色はやや薄めで、もしかしますともう少し色を付けた場合、黒豆の薄い生地の部分が剥がれるとかの不具合が出るのかもと思ってしまいます。

 

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 こちらの商品は特に高さを出さず、平天版を使用されているようです。

 

 上面の焼色が薄い分、底面を広くとってしっかりと火通りを取っているとか。

 

断面

 黒豆は生地全体に均等ではなく、表面部分に偏っていることが分かります。

 

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 黒豆は薄いながらもすべて生地に覆われていて、大部分の生地は底の部分に集中しています。

 

成形方法

 黒豆パンの断面を見て、以前に anopan で購入しました桜もち丸(桜あんパン)を思い出しました。

 

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 桜もち丸で包餡しているフィリングのさくら餡を黒豆に代替しますと、同様のこのような断面が得られるものと推測します。

 

食味・風味

 こちらの黒豆パンも噛んだ途端、酒?酒粕?の風味が口の中いっぱいに広がってきます。
 
 黒豆の食味も酒粕の生地によく合います。
 
 ちょっとした和風の重みを感じると言いますか、店舗の立て看板にありました『和菓子感覚の高級和風パン』が少し理解できたところでしょうか。

 

サンタの豆知識

 素人は素人なりに、酒粕・酒種について調べてみました。

 

 酒粕とは、日本酒などのもろみを、圧搾した後に残る白色の固形物のことを指します。

 

 酒米醸造すると重量比で25%ほどの酒粕が取り出されるそうです。

 

 その成分は、水分51%・炭水化物23%・蛋白質13%・脂質・灰分の他、ペプチド・アミノ酸・ビタミン・酵母などの栄養素を豊富に含んでいることから、健康効果にも期待される食品として価値が見直されているとか。

 

 そして、この酒粕に残っている酵母が酒種と呼ばれ、木村屋総本店のあんぱんがこの酒種を用いて作られたことは有名な話です。

 

サンタの研究室

 というほどの内容はないよう・・・。

 

 と、突っ込を入れたくなるお粗末さなのですが、自家培養酵母の準備として、とりあえず蓋付きの便を100均で購入してきました(この辺り、まったく考慮がありません)ところ・・・。

 

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 実は、容器の底を見てみると『耐熱温度:60℃』・・・えっ、たしか煮沸消毒が必要って読んだような・・・。

 

 安物買いの銭失い、とは正にこのこと!

 

 俺はダメだ、ダメ人間なんだ・・・、と落ち込んだ一日でした。

 

祝! Pasco(パスコ)・敷島製パン 創業100周年 ~ 生なごやん

 少し早いのですが、日本におけます製パン業界第2位の大手メーカー:パスコ・敷島製パンが、明日の6月8日に創業100周年を迎えます。

 

 多くの人がご存知のパスコについて、100周年記念商品も交えて解説します。

 

【 目次 】

 

PASCO敷島製パン

 敷島製パン株式会社は、名古屋市東区白壁に本社を置く製パン会社で、1920年大正9年)創業の老舗製パン企業です。

 

 国内の製パンシェアでは、山崎製パンに次いで業界第2位に位置しています。

 

 ちなみに、PascoPan Shikishima Companyの頭文字から命名)のブランド名は、名古屋⇒関西から東京へ進出する際に、ややハイクラスの購買層をターゲットに設けられましたものです。

 

 創業家は名家で、ミツカン(中埜酢店)や造り酒屋の盛田株式会社、そして盛田昭夫氏が創業者のソニー、その盛田家の同族企業となります。

 

 なお、現在の代表取締役社長である盛田淳夫氏は、安倍晋三首相とは成蹊大学アーチェリー部の同窓、先代社長の盛田慶吉氏は、竹下登元首相と早稲田大学の同窓です。

 

  

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 そして、敷島製パンと言えば、湯種製法で独特の食感を生み出しました超熟食パンが、食パンシェアでトップの売り上げを誇っています。

 

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 湯種製法の製品は食パンだけに留まらず、(これもパスコならではの商品の)イングリッシュマフィンや、近年ではフォカッチャにまで及んでいます。

 

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 新技術や新たな市場を開発・開拓しながら、パスコは今日に至っています。

 

なごやん 100周年記念商品 84円(税込)

 現在のパスコは、日本におけます食料自給率向上への貢献を目標のひとつに掲げています。

 

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 この国産小麦の小麦粉を使用したパンづくりに、社員から募集しましたパン・菓子のアイディアの中から商品化したものが、この生なごやん(100周年記念商品第2弾)です。

  

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 黄味あん入りクリームを国産小麦のカステラ生地に包んで蒸しあげた菓子です。

 

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 手に持った感じとしましては、ふかふかの生地で、まさに焼菓子であるなごやんの生バージョンといった感触です。

 

 また、食べた感想としましては、ぷにぷにと軽く伸びのある生地に、菓子としては流動性の高い黄身あんが相まって、手でちょっと引っ張りながら噛み頬張ることができます。

 

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 断面はこのように黄身あんが、平たい桜島のような形状で充填されています。

 

 使用しています成形装置の関係なのでしょうね。

 

なごやん

 生なごやんを語る上で、やはりオリジナルのなごやんの解説も必要かと思います。

 

 焼菓子であるなごやんは、販売開始以降60年以上に渡って、親しまれてきました超ロングセラーの商品です。

 

 なごやんは、国産小麦のカステラ生地でまろやかな黄味あんを包んだ焼き菓子で、しっとりとした食感とやさしい甘さが特徴の、Pascoのなかでも歴史のある商品です。

 

 使用する小麦は100%国産小麦を使用しているのですが、その内55%は愛知県産小麦『きぬあかり』を使用しているのだそうです。(愛知県以外にも出回っていますが、それなりに地産地消なのでは。)

  

さくふわさくらん 100周年記念商品(第1弾)

 桜の香りがふわっと香る桜餡を国産小麦のクッキー生地で包んだ商品と謳われています。

 

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 社名の敷島は、創業者が尊敬していた本居宣長の和歌

敷島の大和心を人とはば朝日に匂う山桜花

から採用されています。(ところで、敷島は日本の古称のひとつだとかで、言い換えますと『日本製パン株式会社』と同じという事・・・)

 

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 その社名の由来になった和歌にも謳われています桜は社章にも採用されており、Pascoと縁深いさくら味の焼き菓子:さくふわさくらんが開発されました。

 

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 もちろん、使用されています小麦はすべて国産小麦となっています。

 

 桜餡は形がしっかりしており生地もクッキー生地ですので、歯切れの良い食感と桜の風味・食味が楽しめる商品になっています。

 

ミニミニ工場見学

 パスコと言えば、最近は北海道での活動が目を引きます。

 

 国産小麦である『春よ恋』から近年では『ゆめちから』の生産拡大に関しては、日本の食料自給率の向上を掲げられています盛田淳夫社長の功績と言っても過言ではないと思います。

 

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 ちなみにパスコは、2013年に札幌市手稲区に「Pasco夢パン工房」手稲店をオープンし、2018年には江別市に「Pasco夢パン工房」野幌店と「Pasco札幌セントラルキッチン」をオープンしました。

 

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 私は札幌で開催されました昨年の学会の時間を使って、Pasco夢パン工房・野幌店とPasco札幌セントラルキッチンを訪れました。

 

 たまたま、現地で知り合いに出会う幸運もありまして、セントラルキッチンの見学通路へも通してもらうこともできました。

 

 なお、Pasco札幌セントラルキッチンは、Pasco夢パン工房各店舗への商品供給のほか、札幌近郊の一部スーパーへも商品を供給して北海道でも販売を開始しています。(つまり、まだほんの一部ですが、北海道でもスーパーでパスコのパンが買えるようになった、ということですね。)

 

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 現在パスコは、帯広畜産大学と地域包括連携協定を締結して、国産小麦のテーマを主としました研究活動に注力しています。

 

 以上、帯広畜産大学客員教授のサンタ(基本的には個人事業です)が、30年に渡って研究開発部門を勤めました製パン企業の解説でした。

(今、在籍はしていなくても、感慨深いものがあります)

 

シナモンロール・terre a terre (テーラ テール) ~ パンのトレンドを顧みる

 これまでの記事でも、1997~1999年のブームに乗っていましたパン・菓子類のトレンドについて紹介してきました。

 

▼平成9年(1997年) ベルギーワッフル

▼平成10年(1998年) クイニーアマン、 ロールケーキのスイーツ化

▼平成11年(1999年) エッグタルト、 シナモンロール

 

 

www.santa-baking.work

 
 
 前回のエッグタルト~アンドリュー & パスティス・デ・ベレンに続きまして、今回はシナモンロールを中心にリポートします。

 

【 目次 】

 

シナボン

 日本におけますシナモンロールのブームを語る上で、外せないのがシナボンです。

 

 当時、商品はシナボン1品種だけだった、その第一号店は1985年12月ワシントン州シアトルに開店し、2012年11月の時点では世界51カ国に約900店舗を構えるまでに成長しました。

 

 日本では、1999年に東京・吉祥寺に1号店をオープンし、三大都市圏にその店舗網を広げる程のブームとなりましたが、大多数の日本人にとってはサイズや大量に使用されていました砂糖類故に、カロリーを気にする層から敬遠されたことで、シナボンの店舗は2009年2月28日を以って完全撤退するに至っています。

 

 なお、社名&商品名のシナボンは造語で、シナモンの「シナ」と、フランス語で「良い」を意味する「ボン」から来ているそうです。

 

terre a terre (テーラ テール)

 今回はシナモンロールを求めて、名古屋市東区の terre a terre (テーラ テール)へ行ってきました(・・・今回も家族が)。

 

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 新緑の色合いが鮮やかなエントランスを通って、店内へ入ります。

 

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 シックな店内のショーケース内に商品が並んでいます。

  

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 近付いて見てみますと、こんな感じ!

 

 商品は、店員さんが取ってくれます(時間は掛かりますが、今の時期、衛生面では文句の付けようがありません)。

 

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 奥はレジと製造スペースになっています。

 

 新型コロナ対策で、飛沫感染防止用のシートが掛かっていて、店員さんもマスク着用です。


 左に見える階段を上っていきますと、そこはイートインコーナーになっていて、その場で買った商品を食べることもできます。

 

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 今回の狙いはシナモンロールですが、それだけという訳にもいかず、今回はこの4品を購入です。

 

シナモンロール

 帰宅して、やっぱり最初はお目当てのシナモンロールから。

 

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 私はシナモン大好き人間ですので、このシナモンとクルミの折込み量は十分納得なのですが、多過ぎると感じる人もいるかもでしょうか。

 

 1層のシート生地にフィリングを塗布した後、巻いて輪切りのカットですね。

 

 焼き色がやや薄めで、しっとりした食感です。

 

テーラ テール

 ここのベーカリーの看板商品で、店名を商品名に冠しました小振りのカンパーニュです。

 

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 もった感じがとても軽く、ハード系なのですが、弾性のある柔らかさを感じます。

 

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 内相は適度に大きな気泡があって、軽い食感なのですが、ハード系ならではの歯応えがあります。

 

 小麦の食味と風味がとても感じられるパンです。

 

クロワッサン

 この形状で、クロワッサンです。

 

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 もう三日月というよりは、半月からもう少し膨らんだ感じの月のようです。(そうか、逆の発想で影の隠れている部分が三日月とか・・・)

 

 そして、生地の層がとても細かくきれいに出ていることと、カット部分の層を全面に出してある、なかなか見られない成形方法にちょっとした衝撃を受けました。

 

 食べた感じは、層を縦に噛むことになりますので、これも新鮮な感覚です。

 

あんバター

 そして、我が家の定番、あんバターです。

 

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 生地はソフトフランスをもう少しソフトにした感じです。

 

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 中のフィリングを見てみますと、バターと小倉あんがびっしり詰まっています。

 

 やや歯応えのあるパン生地にバターとあんが混じって、噛んでいる内においしさが徐々に伝わってくる・・・だから、もっと噛んでいたい、と思えるような商品です。

 

ミニミニ工場見学

シート生地の延展

 シナモンロールの成形に関連して、シート生地の延展ついて解説しようと思います。

 

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 って、いきなりめんどくさそうな図が出てきましたが、これはパン生地に横方向の力を加えて延ばそうとした時の深さ方向に伝わる力の分布に関して示したモデルです。

 

 パンとどんな関係?、と思われるかもしれませんが、今回のシナモンロールやクロワッサンのようなペーストリー製品を作ります際、シート生地を延ばすという操作があります。

 

 その時、ゴムのような弾性体であれば、どの位置でも一定の力が伝わるのですが、粘弾性のパン生地は流体ですので力の掛かる地点から離れる程、伝わる力が小さくなってしまいます。

 

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 つまり、パン作りに慣れていない人はシート生地を均等に延ばしているつもりでも、実は生地の上下で大きな違いが出てしまっているという事になってしまっているかもしれないという事です。

 

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 リバースシーターというシート生地を延展する装置があるのですが、私はこの装置を見ると、つい蕎麦打ちでの麺の生地を延ばしている場面を連想してしまいます。

 

 一生懸命身体を使って、麺棒だけではなく生地も動かしながら延ばしている、あの風景です。

 

 あの動きというのは、麺の生地の上下から力を加えているように見えてしまうのですが、・・・実際に蕎麦打ちをしたこともない人間の戯言です。