黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

今が旬、栗シリーズ・フジパン、パスコ、神戸屋 ~ シート生地へ固形物の散布装置

 商品開発を考える際、新技術や新原材料などいろいろな切り口からのアプローチがありますが、季節の旬の食材やイベントは消費者への訴求力も大きいようです。

 

 季節が秋となって、栗を扱った商品もずいぶん目にするようになりました。

 

 今回は、ホールセールベーカリーが手掛けます栗関連のパンの紹介と、固形のフィリングをシート生地に撒く・散布するための製パン機械設備について解説していきたいと思います。

 

【 目次 】

 

散布装置

 『strew』という『まき散らす、ばらまく』といった意味の言葉から装置名が付けられている機械があります。

 

 生地シート上に粒状の レーズン、コーン、スライスアーモンドといった素材を均一に散布することができる装置です。

 

ストルワー

 

 後で紹介の『くるみ×栗デニッシュ(パスコ)』は、ベルトコンベア上をシート生地が流れてきたところにくるみの粒を均等に撒いていると思われます。

 

 その後、サイドワインダーでロール状に巻かれた生地は、一定幅でカットされて天板に並べられます。

 

焼きモンブランフジパン(98円 税別)

 栗のダイス入りケーキを包んで焼き上げているようです。

 

フジパン

 

フジパン

 

外観

 ケーキのモンブランに見立てた?帯状のマロンペーストが見られますが、おそらく成形時に掛けられていますので、流動性は低く、それなりにしっかりした物性のペーストと推測します(ただし、包装紙ではマロンペーストがパン全体に掛かっているように見えるのですが)。

 

フジパン

 

 包装紙の商品イメージでは、型もしくはセルクルを使用して高さを出しているかと思ったのですが、実際の商品は平天板を使用して生地をそのまま並べた状態で最終発酵・焼成を行っているようです。

 

フジパン

 

 マロンペーストは四方に垂れていますので、おそらくコンベア上を流れてくる生地に平口金でほぼ正方形状にペーストを絞っているのではないでしょうか。

 

フジパン

 

 生地の成形方法は、もしかしますと初めて見る方法かもしれません。

 

 底面には折ってある状態が見て取れますし、断面では底部に生地が厚くなっている状態が見て取れます。

 

フジパン

 

 栗のダイス入りケーキをシート生地で包んで、底で合わせているのでしょうか。

 

 栗のホイップクリームは、焼成・冷却後の後充填と思われます。

 

風味・食感・食味

 包装紙を開けますと、マロンペーストからの香りが飛び込んできます。

 

 しっとりした生地に栗のホイップクリームが、更にソフト感を感じさせますが、ケーキの感覚はあまり感じられませんでした。(もしかして、焼きモンブランのイメージからケーキ生地を包んだ、とか)

 

CAKE BOX リッチなマロン・パスコ(98円 税別)

 立派な厚手の包装紙で、デザインに写真も採用して高級感を出していますが、これが98円で売られていて、採算性を少々心配してしまいます。

 

パスコ

 

パスコ

 

外観

 上面はシンプルな形状で、標準的な焼色です。

 

パスコ

 

 CAKE BOXとネーミングされているだけあって、型枠等を使用して製品高さを出すように作られています。

 

パスコ

 

 側面にはフィリングが絞られた部分をカットした断面が見られますので、おそらくシート生地に連続的にマロン(甘露煮)フィリングを絞り、一定間隔で生地をカットして分割しているのではないでしょうか。

 

パスコ

 

 底面を見ますと、エッジがしっかり出ていますので、使用されたのは型ではなく、枠と推測します。

 

パスコ

 

 製品内には大きな空洞が空いていますが、そこへ栗ホイップクリーム焼成・冷却後に充填されています。

 

 生地クラムの色が黄色味を帯びていますが、マリトッツォ同様に卵由来の色彩と思われます。

 

風味・食感・食味

 生地がしっとりしていることもあると思うのですが、製品高さが出ていることで噛んだ時のホイップクリームのふんわり感がより強く感じられる気がしています。

 

くるみ×栗デニッシュ・パスコ(98円 税別)

 包装紙デザインと原材料表示から、粒状のくるみとマロンペーストがデニッシュ生地に折り込まれているようです。

 

パスコ

 

パスコ

 

外観

 デニッシュ生地ですので、ほぼ間違いなくシート生地から成形されていると思われますが、先述の連続ラインで生地のカッティング後、作業者が手作業で紙トレーに生地をひとつずつ載せていると思われます。

 

パスコ

 

 商品単価が低いホールセールの商品は、いかに効率よく作り上げていくかが課題となっています。

 

 既設のライン設備をフルに活用して、それでも作りきれないところは作業者の人の手で補っていく、付加価値と作業コストとのせめぎ合いです。

 

パスコ

 

 製品形状(厚み)からデニッシュ独特のサックリした食感を狙っていることが推測されます。

 

風味・食感・食味

 食感は見た目通り、サックリした歯切れの良さが期待を裏切りません。

 

 包装紙から栗の先入観がありますので、その感覚で食べてしまいましたが、食感からは素直にくるみの粒感が感じられます。

 

マロン&ホイップ・神戸屋(98円 税別)

 マロン味クリーム入りのデニッシュメロンパンにホイップクリームが充填されているようです。

 

神戸屋

神戸屋

 

 今回、購入してきました商品はいずれもシート生地から成形した商品のようです。

 

外観

 スクエア形状のデニッシュメロンパンですので、ビス生地もポンプで連続的に絞り出していると推測します。

 

神戸屋

 

 ちなみに、デニッシュとメロンパンの焼成方法は類似しています(初期:強熱⇒後期:弱熱)ので、デニッシュの製造ラインでメロンパンを焼成することは適応させ易いと考えます。

 

神戸屋

 

 商品の端面には、後充填でホイップクリームを注入した跡が残っていますが、もう少し高さがあった方が作業はしやすいのではないでしょうか。

 

神戸屋

 

 実際のパンの断面を見てみましても、ずいぶん狭い厚みのところにクリーム充填されていることが確認できます。

 

風味・食感・食味

 上面のビス生地からは泣きによるべた付きもなく、サックリとした食感が感じられます。

 

 ただ、製品の高さがなく、薄いパンを食べている感覚は否めませんでした。

 

あとがき

 栗シリーズで商品を集めてみましたが、よくよく見てみますと、今回(イオンで)購入のパンは価格がすべて98円(税別)でした。

 

 個人的な意見ですが、やはり栗を謳うのであれば、ペーストとかではなく、粒状の栗があって食感と共に味わうものを期待してしまいますが、価格が価格で、とも思ってしまいます。

 

 しばらくしますと、ハロウィン関連でカボチャのパンとか、棚を賑わせるのでしょうね(一部の商品では、既に出ているようですし)。

 

呪術廻戦・宿儺(すくな)のデニッシュコロネ ~ シート生地からのコロネ成形(連続生産ライン)

 結構アニメ好きで、呪術廻戦のTV放送はすべて録画して観ていました。

 

 そのような折、コンビニでふと目に留まった両面宿儺(すくな)の指、ならぬ『宿儺のデニッシュコロネ』。

 

 今回はノリで商品の紹介と連続生産ラインでのコロネの成形について解説します。

 

 そして最後にノリで買った商品も。

 

【 目次 】

 

コロネの成形

 既に定番商品として定着しているコロネですが、生産性を求める連続生産ラインに対して、成形は少々やっかいな工程となります。

 

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 一般的にコロネ型と呼ばれます円錐形の型に細長くロール成形した生地を巻きつけていくのですが、この加工操作の自動装置を私は見た記憶がありません。

 

 いかに近代化された工場においても、この操作はおそらく作業者の手作業に頼らざるを得ないのでは、と思っています。

 

 ところで、通常のコロネであれば玉生地からロール成形のモルダーを通して成形するのでしょうが、今回紹介の商品に合わせ、デニッシュ等のシートラインにおいてベルトコンベア上で成形するケースを推測してみました。

 

製パンライン

 

 画像では、特徴を示すために生地幅を広めに描いていますが、実際には非常に細長い生地にカットする必要があります。

 

 ストレッチャーで生地の厚さを調節した後、ハの字形に切り込みを入れるロータリーカッターを通し、その後に縦カットのサーキュラーカッターを通して、端生地を外します。

 

 生地の幅が一定であれば、ストレッチャー後にギロチンカッターでカットする方法も考えられますが、その場合は生地幅が狭すぎて生地がカッターにべた付いてしまう懸念が残ると推測します。

 

 そして、上図のように細長い台形状の生地がワークコンベア上を流れてきましたら、その後工程では作業者が流れ作業でコロネ型に流れてきた生地を巻きつけていきます(ここは、人海戦術になります)。

 

宿儺のデニッシュコロネ(160円 税込)

 アニメ『呪術廻戦』で、両面宿儺(りょうめんすくな)は最凶最悪の呪いの王として登場します。

 

 その宿儺の完全復活に必要な特級呪物(要は、かなりヤバイ呪いが込められた物)こそが、20本存在すると言われています宿儺の指という訳です。

 

デニッシュコロネ

 

 という訳で、アニメのストーリーに沿って考えますと、食べてはとてもやばい品物ということになってしまうのですが、そこに果敢に挑戦したのが山崎製パンと。

 

 なにしろ、ストーリーではこの特級呪物を食べてしまうと呪いに身体を乗っ取られてしまうという恐ろしい現象が起きてしまいます。

 

デニッシュコロネ

 

外観

 ところで、一般的にコロネはロール成形した菓子パン生地を使って製造しますが、今回はおそらく指の形を再現することを主目的にデニッシュ生地としたのではないでしょうか。

 

デニッシュコロネ

 

 また、配色も色黒なイメージをチョコフラワーペーストを使用(ロールイン)して表現し、折込み成形をしています。

 

 凝った表現としては、宿儺の指の爪の部分にピーカンナッツがトッピングされているところでしょうか。

 

デニッシュコロネ

 

 天板は平天板を使用されているようですが、もう少し(幅を抑えて)高さがあってもいいような気もしますので、プレス天板を使用するのも手ではないかと思われます。

 

デニッシュコロネ

 

 先のデニッシュ生地での成形ラインでも考察しましたが、おそらく成形時のシート生地の幅は一定ではなく、細くなっている爪の方を幅の狭い生地で、指の元の方を幅の広い生地で巻いているように思われます。

 

断面

 ところで、フィリングを注入する口の部分を覗いてみますと、充填されていますのはホイップクリームのようですけど、少々量が(宿儺(すくな)だけに)少ないようにも見えます・・・年配者のダジャレです。

 

デニッシュコロネ

 

 という訳で、デニッシュ(宿儺の指)を縦にカットして、フィリングの充填状態をチェックしてみましょう。

 

デニッシュコロネ

 

 端からは少なめに見えましたホイップクリームですが、中までびっしりと詰まっていました(失礼致しました)。

 

風味・食感・食味

 私はけっして器(うつわ:呪物を取り込んでも自我を保つことができる人)でもないのですが、実際に食べてみますとしっとりとしたチョコデニッシュ生地にホイップクリームが相まっておいしく頂けました。

 

感想

 今回は、アニメキャラクターとのコラボという形でデニッシュコロネといった商品開発に至っていると推測しますが、純粋にデニッシュ生地でのコロネといった視点で見ましても、とても興味深い商品と思います。

 

 以前にも少しこぼしていましたが、最近は製パン業界全体に技術的な商品開発がやや下火傾向になっている感を持っています中、このような商品は汎用性も伴って、製パンレベル全体の底上げが期待できるものと注視しています。

 

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 以前に、似たような注目記事も製造元は山崎製パンでした(業界トップは伊達ではありませんね)。

  

これって、ありですか!

 今年は、マリトッツォが全国的に大ブームでした。

 

セブンイレブン

 

 ところで、近所のセブンイレブンにてこのような商品を発見!

 

どらやきマリトッツォ

 

 『どらやきマリトッツォ(208円 税別)』?いやいや、これってマリトッツォですか。

 

どらやきマリトッツォ

 

 一般的な認識からすれば、普通にクリームどら焼きかと。

 

 ずいぶんいき過ぎた感もしましたが、でも食べておいしかったので良しとしました。

 

冷やさない”極くりーむぱん”・八天堂 ~ パンの温度管理

 冷やさないパンなんて普通でしょ、と思いますよね。

 

 ですが、くりーむぱんの八天堂が手掛けますとイメージが変わってしまいます。

 

 たまたまスーパーの棚で見掛けました八天堂の極くりーむぱんと極あんぱんを紹介しますと共に、パンを保管する際の温度に関して解説を加えたいと思います。

 

【 目次 】

 

パンをストックする際の保管温度について

 あるドラッグストアのパンコーナーでこのようなキャッチを見掛けました。

 

イチゴスペシャル

 

 『冷やしておいしい』といった文言に加えまして、雪の結晶のデザインも。

 

 ここで言う『冷やす』とは、凍らせるという意味でしょうか。

 

 写真の商品は、デコ缶を使用してバッター生地を焼成した洋菓子ですが、パンや菓子の小麦製品を保存する温度について考えてみることにします。

 

 まずは、食品衛生面での温度です。

 

 一般的な常温での保管の場合、30℃程度がカビ菌を始めとする細菌がもっとも活動し易い温度となっています。

 

パンの保管温度

 

 そのため、多くのホールセールベーカリーではこの30℃での保存テストを行っています。

 

 ただし、室温がそこまで上がる可能性の低い晩秋から春先の時期(11月~4月)は、少し温度を下げて、25℃での条件下で消費期限が確保できるよう品質管理に努めています。

 

 蛇足ですけど、更に条件的に厳しい真夏の時期には原材料表示に注目して頂きますとちょっとした違いが見られることもあります。

 

 次に冷蔵温度帯ですが、これは10℃以下(JAS法)で食品が凍らない温度帯となりますが、実はこの温度帯はデンプンのβ化(老化)の速度が高く、保存に向く温度帯ではありません。

 

 購入されて、長い時間を置かずに食べられる洋菓子等はクリーム等の品質管理と併せて、適用される温度帯です。

 

 その意味では、八天堂のくりーむぱんは画期的なチャレンジの商品と言うことができます。

 

 最後に冷凍の温度です。

 

 一般的なパン生地の凍結温度は、リーンな配合の生地で‐3℃程度、デニッシュペーストリー等のリッチな配合の生地では‐7℃程度まで低下します。

 

 ここで、問題となってきますのは『凍結温度以下でもすべての生地が凍結していない』という点です。

 

冷凍生地

 

 なに言ってるの?、と思われた方もいるかもしれませんが、水分を含んだ食品は上グラフのように温度によってどれだけ凍結しているかといった凍結率が変化します。

 

 温度の低下と共に凍結率は下がっていくのですが、遠洋漁業でのマグロの凍結を‐50℃程度で行いますのは、この温度まで下がってきますと、ほぼ凍結率が100%に近くなってきて、温度変動による融解・凍結の影響が微小になってくることによります。

 

 もっとも、一般的な単段式冷凍機の冷媒の凝集温度が‐40℃ということを考えますと、冷凍食品は‐18℃以下(冷凍食品自主的取扱基準)、あるいは‐15℃以下(食品衛生法)に安全率を考慮した‐25~‐30℃程度が実用的な冷凍温度帯かと思われます。

 

 ちなみに、パン酵母の失活温度は私が知る限りでは‐30数℃レベルの菌が開発されています。

 

極くりーむぱん(200円 税別)

 包装商品のパンで高額な価格ですから、包装のパッケージもそれを意識したイメージとなっています。

 

八天堂

 

 ところで、原材料表示を見て不思議に思いましたことが一点。

 

八天堂

 

 後で気が付いたのですが、小麦粉が使われていません。(『一部に小麦』の記載は、手粉等を含めましたライン由来と解釈しました。)

 

 いや、あれは100%米粉パンの食感ではなかったと記憶しているのですが、このパンが小麦やグルテン不使用のパンだとしたら、かなりの衝撃です。

 

外観

 艶出しの塗り玉は、塗り方が少々乱暴な気がします。

 

 手塗りではなく、装置に流しているのかもしれません。

 

八天堂

 

 側面を見てみますと、波上のプレスが入った型に詰められていると推測します。

 

 波の形状がはっきり出ていますので、シリコンケースのようなものではないと推測します。

 

八天堂

 

 生地の型離れが、所々歪な状態になっています。

 

 離型油を塗布するのも大変ですね。

 

八天堂

 

 底面の焼き色は、側面よりやや濃い程度で上面と比較しますとずいぶん薄いので、もしかしますと天板にセパレートの型を並べて最終発酵と焼成を行っているのかもしれません。

 

内相

 卵が効いているためか、クラムの色は黄色味が掛かっています。

 

八天堂

 

 小麦粉使用のパンのように、気泡膜は薄く、気泡サイズも大きいのですが、グルテンフリーでここまでの内相を初めて見ました。

 

 フィリングのクリームは、中央の位置にきれいな球状で充填されています。

 

 底面に綴じた跡もありませんし、レオン自動機の包餡機を使用している?

  

 違いますね~、通常ですと米粉100%の生地はバッター生地でしょうから、どのようにして包餡しているのかも私の考えが及びません(不勉強ですみません)。

 

風味・食感・食味

 生地の食感は内相の先入観があるのかもしれませんが、ブリオッシュ生地を彷彿させるような歯切れとソフトさでした。

 

 そして改めまして、これまでの100%米粉パンの食感では経験したことがなかったような気がしますし、ここまで軽く、そして薄い気泡膜と大きな気泡で膨張させる技術があることを知りませんでした。

 

極あんぱん(200円 税別)

 包装のパッケージは極くりーむぱんと同様ですが、カラーがピンクです。 

 

八天堂

 

 そして、原材料表示には極くりーむぱんと同じく、小麦粉の記載はありません。

 

八天堂

 

外観

 ゴマ付けの位置が、中心から少々ずれています。

 

 焼色は、やや濃い目でしょうか。

 

八天堂

 

 側面を見てみますと、けっして乱暴に扱った訳でもないのですが、形状が崩れています。

 

八天堂

 

 包装紙のサイズ設計では、断面の外周の長さを基本に考えられますが、このように高さを出す製品については別途考慮されるべきと思います(もしくはマチを付けるとか)。

 

八天堂

 

 底面の焼き色は、極くりーむぱんと同様ですが、こちらのあんぱんには底に綴じた跡らしきものが見えます。

 

 手包みなのか、分からなくなってきました。

 

内相

 くりーむぱんも同様でしたが、フィリングの上部に空洞が空いておらず、パン生地とフィリングが密着しています。

 

八天堂

 

 空洞ができるメカニズムを考えていきたいですね。

 

 確立できれば、空洞を作らない製法につながりますから。

 

風味・食感・食味

 しっとりした軽い歯切れの食感です。

 

 やはり、この極あんぱんも従来の100%米粉パンの食感ではなかったような。

 

 まさか、前提のバッター生地というところが違っているとか・・・勉強します。

 

あとがき

 20年前の今日2001年9月11日は、アメリ同時多発テロが起こった日ですが、その時私は成田発米国ラスベガス行きの飛行機の機内にいました。

 

 企業業務で、展示会での情報収集と市場調査が目的でした。

 

 日が明けてもう少しで到着という頃、機長からの機内アナウンスで米国の全空港がテロで閉鎖されて降りられない、と。(結果、カナダのバンクーバーに着陸。)

 

 とんでもない出張となりましたが、1週間後にはニューヨークへ移動の予定でしたので、最悪の事態は免れたと、プラスに考えようと思っています。

 

山型デニッシュブレッド・神戸屋 ~ 連続製造ライン

 イトーヨーカドーが今年100周年を迎えたそうです。

 

 1920年に現・セブン&アイホールディングス名誉会長・伊藤雅俊氏の叔父が浅草に『洋華堂』を開業したのが、始まりとか。

 

 これを機に限定の商品が多くのメーカーから出ていますが、その中でも、今回は神戸屋から発売されました山型デニッシュブレッドについてご紹介致します。

 

 加えまして、シート生地の連続製造ラインでの成形工程に関しまして解説を。

 

【 目次 】

 

イトーヨーカドー100周年

 今回紹介の商品も購入しましてから、ずいぶん日にちが開いてしまいました。

 

 念のため、昨日、近所のイトーヨーカドーで100周年イベント実施と、神戸屋のHPで山型デニッシュブレッドの商品の掲載を確認しましたので、販売されている店舗はまだあるような気がしています。

 

 ちなみに、神戸屋のHPを眺めていました折、同社も3年前の2018年に100周年を迎えていたそうです。

 

 そういえば、昨年もあるベーカリーの100周年を記事で紹介させて頂きましたような・・・。

 

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 この頃は、日本での企業の創設期だったのでしょうか。

 

山型デニッシュブレッド(429円 税込)

 改めまして、商品の紹介を。

 

 細長い形状はタカキベーカリーの小型食パンシリーズを連想させられますが、全体的には二回りほど大きめのイメージです。

 

 包装形態はピローバッガーと呼ばれます装置が使用されていて、ロール状の包装紙がパンを包むように送られ、ひとつひとつ底部と両端部をシールしていく方法が採られています。

 

山形デニッシュブレッド

 

 包装紙には、イトーヨーカドー100周年のデザインがプリントされています。

 

山形デニッシュブレッド

 

 包装紙には『発酵バターが香る』と記載されていますので、発酵バターは含まれているようですが、原材料としましては発酵バター入りのマーガリンです。

 

山形デニッシュブレッド

 

 重量は596g(包装紙とクロージャーの重量は引いてあります)ですので、1斤:340gとしますと、1.75斤となります。

 

 そう考えますと、一般的にデニッシュ食パンは高めの価格設定をされていますので、この商品の429円はそれほど高額でもないような気がしています。

 

外観

  外観形状は、オープントップの山型です。

 

山形デニッシュブレッド

 

 デニッシュ食パンでは、一般的に編み込み成形で層を見せる方法が採られることが多いのですが、あえて層を出さない設計になっています。

 

 また、一つ置きに山の出方が偏っていて、この時点ではそのような設計のパンと理解していました。

 

山形デニッシュブレッド

 

 側面を見てみましても、こちらの側面では2番目と4番目の生地が大きく見えています。

 

山形デニッシュブレッド

 

 そして逆の側面では中央の生地が。(両端の生地は、ほぼ等しくカット面が出ています。)

 

山形デニッシュブレッド

 

 成形時の生地の詰め方の偏りは、製品の底面を見てみますと、よりはっきりと確認することができます。

 

 意識的に交互に偏らせて、型詰めしているように見えます。

 

 なお、焼色は全体的に濃過ぎず、それでいてしっかりと時間を掛けて色付けした感じが伝わってきます。

 

内相

 クラムの色は黄色掛かった、やや大きめの気泡でデニッシュブレッドぽさが出ています。

 

山形デニッシュブレッド

 

 カット前は、あまり気になりませんでしたが、中央当たりの側面は食型の上部に出た部分で凹みが見られます。

 

 デニッシュ食パンは、クラストが圧縮され難く、十分な硬さが出ませんので、どうしても折れ易くはなりますが、その代わりに噛んだ時の歯切れの良さが特長となってきます。

 

風味、食感、食味

 包装紙のキャッチ通り、バターの香りがとても感じられます。

 

 クラストはサクサクとまではいきませんものの、十分に心地良い歯切れが、先のバターの香りやほんのりとした甘みと相まって、良好なレベルに仕上がっています。

 

 はい、素直においしいパンでした。

 

連続製造ライン

 デニッシュのようなシート生地から成形するパンは、コンベア上を流れてくる生地の端からぐるぐると巻いていき、その後に一定重量となるように分割していきます。

 

山形デニッシュブレッド

 

 この際、装置的には一定間隔でカットする装置が多いと思いますので、製造中はこまめに作業者が分割した生地重量をチェックして、カットするタイミングを調整することになります。

 

山形デニッシュブレッド

 

 ところで、今回の商品の外観を見ました際、私は上図のような成形方法を連想したのですが、神戸屋のHPに載っていました成形方法は少々異なるものでした。

 

山型デニッシュブレッド

 

 神戸屋のHPによりますと、山型デニッシュブレッドの成形方法は上図のようであり、最終製品の山も均等な山が五つ幌のように並んでいる状態が本来の姿のようです。

 

 シート生地版の俵成形?

 

 いやいや、できた商品の外観にHPの画像とはずいぶん違いがあるようなのですが。

 

 最後に推測ですが、おそらくシート生地をロールする工程で十分に細く巻くことができず、重量基準でカットしました際に規定の長さを出すことができなかったのではないか、と推測します。

 

 ホールセールの商品は、設計通りに作ることが基本ですが、広い気持ちで手作り感を感じられてよかったと思うようにしています。

 

レモンパイとクロッカンバー ~ パイとデニッシュの膨張

 季節柄、レモン関連の商品が市場に多く出回っていましたので、たまたまスーパーで見かけましたパイとデニッシュをご紹介と思いながら、実はずいぶん日にちが経ってしまい、暑さから大雨の心配が先行しています今日この頃です。

 

 各パンメーカーも季節戦略がありますので、そのような意味ではパンのシリーズにも旬があるのかもしれません。

 

 今回は、この季節のレモンを感じる商品3品の紹介と、パイ&デニッシュが膨らんでいくメカニズムについて解説していきます。

 

【 目次 】

 

パイが膨らむ、デニッシュが膨らむ

 以前の記事でもパイとデニッシュ(デニッシュペーストリー)の焼成の違いに関しましては解説していたつもりだったのですが、改めて読み直してみますと、まだまだ言葉足らずのところが気になります。

 

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 シンプルに生地膨張といった観点から見ますと、パイにはパン酵母が入っていませんので発酵はしませんし、当然このような工程も存在しません。

 

 つまり、膨張のほぼすべてが焼成工程で行われます。

 

 一方、デニッシュは成形後の最終発酵で2.5~4倍程度に膨張して最終製品の形状に近づきます。

 

パンの焼成

 

 一般的な食パンでは38℃程度で最終発酵をさせますが、バター等の油脂をロールインで折り込んでいるデニッシュでは発酵中に油脂が生地に溶け込まない様に、(油脂の融点-5℃) 27℃程度で温度調整されます。

 

 焼成工程では、デニッシュの場合、生地中のでんぷんが糊化する60~90℃の前に、炭酸ガスの溶出(40℃~)やアルコールの蒸発(60℃~)が起こりますので、生地に伸展性が残っている時点で体積が膨張します。

 

 結果、表面はサクサクしていてもクラムの部分はしっとりとソフトな食感になる訳です。

 

 改めまして、パイは ベイパーアクション(vapor action)と呼ばれます水蒸気による膨張で膨らみます。

 

 当然、温度は100℃程度ですから、生地が固まって伸展性がなくなった後に体積膨張が始まる訳です。

 

 この温度帯ではデンプンは糊化して生地自体が伸びることができませんので、膨張した蒸気によって一枚一枚の層が剥がれるように膨れ上がっていきます。

 

 結果として、内部までサクサクした歯切れの生地となりますし、この層を形成させるために如何に成形時の折込み温度が大切なのかが理解できます。(連続式の製造ラインでは特に。)

 

レモンパイ(105円 税込)

 包材に『愛知県、静岡県の国産小麦使用』と書かれていることろを見ますと、まず間違いなく地域限定の商品と思われます。

 

レモンパイ

 

 商品は神戸屋ブランドのようですが、印刷にはマルト神戸屋と記載されています。

 

 調べてみますと、神戸屋ブランドのパンを製造し、静岡県と愛知県・岐阜県で販売しているグループ企業でした。

 

 私は知りませんでしたが、静岡県には以前にマルトパンというベーカリー企業があったそうです。

 

レモンパイ

 

 

 原材料には、発酵をさせるパン酵母が含まれていません。

 

レモンパイ

 

 生地はスクエア形状で、ザラメ砂糖がトッピングされています。

 

 成形方法は比較的容易で、コンベア上を流れてくるシート生地をサーキュラーカッターで細長くカットし、その後、隔列毎の生地に一定間隔でフラワーペーストをデポジット(絞り)します。

 

 あとは、隣の列の生地を重ねて、一定間隔でカットすれば、成形完了です。

 

レモンパイ

 

 断面を見てみますと、残念ながら生地の層が密着してしまって、大きな空洞と厚い膜が形成されています。

 

 レモン風味のフラワーペーストは、厚めの層と一体化しています。

 

 こうなりますと、層を嚙み切るサクサクした食感は期待できません。

 

セブンプレミアム・レモンパイ(138円 税込)

 こちらは、セブンプレミアムの三角レモンパイです。

 

レモンパイ

 

 こちらも生地のカッティングはスクエア形状です。

 

 その生地にフィリングを絞って、その後に対角線で折りますが、この三角に折る作業は機械では難しく、おそらく手作業ではないでしょうか。

 

レモンパイ

 

 生地の上面には、ガス抜き用の穴開け:ピケが行われています。

 

 すみません、原材料表示の撮影を失念してしまいましたが、生地表面にピケをされているということはパン酵母が配合されていないパイ生地と推測します。

 

レモンパイ

 

 底面の焼き色はしっかりついています。

 

 パイは、蒸気で体積膨張をさせなければいけませんので、必然的に下火はしっかりかけることが求められます。

 

レモンパイ

 

 生地の断面は、カット面がやや決着しています。

 

 連続生産で、カッターの切れ味が落ちてきた?

 

レモンパイ

 

 そして、ほぼ中央の高さにホイップクリームを充填した際の跡が残っています。

 

レモンパイ

 

 生地の層はしっかり残っていますね。

 

 実際に食べた時のパイのサクサク感は、レモン風味のクリームのマッチングと併せて、しっかりと楽しむことができました。

 

クロッカンバー(105円 税込)

 レモンクリームをサンドした、山崎製パンのデニッシュで、底にはグラノーラ入りのビスケット生地が、トッピングにはマカロン生地が使用されています。

 

クロッカンバー

 

 『クロッカン』とは『カリカリとした』という意味のフランス語で、その言葉が、そのまま名前となりました南仏・プロヴァンス地方の郷土菓子です。

 

 なお、正式なクロッカンは中身には主にアーモンドが使用されているため、正式には『Croquants aux amandes/クロッカン・オ・ザマンド』という名前が付いています。(Amande= アーモンド )

 

 身体にやさしく、加えておいしく食べられるヘルシースイーツです。

 

クロッカンバー

 

 さて、クロッカンバーに話を戻しますと、フィリングにはレモンフラワーペーストが使用されていますものの、別途レモンジュースが、こちらは生地の方に使用されていると思われます。

 

クロッカンバー

 

 トッピングのマカロン生地で、外観の見栄えも増しています。

 

クロッカンバー

 

 ところで、側面のマカロン生地にはカッティングの形跡が見られませんので、ビスケット生地+デニッシュ生地のシート生地のカッティングの後に、マカロン生地はトッピングされていると推測します。

 

クロッカンバー

 

  底面のグラノーラ入りのビスケット生地には、穀物加工品のみならず、粒状の穀物がそのまま含まれているようです。

 

クロッカンバー

 

 サクッとしたデニッシュ+マカロンとモチモチのビスケット生地を同時に噛みしめます。

 

 食感が楽しめる商品でした、もちろんレモンの風味も、です。

 

 

今日のanopan

 最近は、ついに予約をしないと買えない程の人気商品になってしまいました、anopanのデニッシュです。

 

 使用されるフルーツは日替わりで、この日はキウイフルーツでした。

 

 いつみても、デニッシュ生地のきれいな層に食指が動きます。

 

anopan

 

 我が家が足繁く通っています anopan ですが、9月に1ヶ月のお休みを取られるようです。

 

 その1か月間、anopan のパンが食べられないのは少々辛いですが、オープンから1年半の間、ずっとご夫婦で営まれてきていましたので、ここで一度リフレッシュして頂き、また再開の日には確実に通いたいと思っています。

 

あとがき

 ・・・ 最近、投稿が滞り気味で、本来この記事は1ヶ月前に上げるべきものでした。

 

 もしかしますと現時点では、今回ご初回の商品が既に販売されていないかもしれません。(その際は、どうかご容赦ください。)