ファイナルプルファー(空調)
最終発酵を行うための装置がファイナルプルファーであり、日本ではホイロ(焙炉)と呼ばれます。
ホイロという呼び名は装置の他、最終発酵のプロセスを指すこともあります。
今回は、最終発酵工程での装置設備であるファイナルプルファーにおいて、その空調設備の解説をします。
最終発酵では、パン生地に適度な温度・湿度を与えて良好な発酵を促します。
一般的に食パンや菓子パンに使用されている高温・高湿『38℃、85%』、ドーナツなどに使用される乾ホイロ『40℃、60%』やハースブレッド等に使用される『32℃、75%』等、があります。
この他、シート生地でロールイン油脂を使用したデニッシュペストリーやクロワッサンでは、折込みの層を綺麗に出させるために[油脂の融点-5℃]に設定します。
他の製パン工程では、風速等のパラメーターも考慮するケースがありますが、最終発酵の環境を制御する対象としては、温度と湿度が主となります。
温度と湿度
ファイナルプルファーの温度を昇降する方法はシンプルにヒーターのON/OFFで対応は可能です。
ところで、細かいところなのですが、後述の操作も含めまして、どの操作も単独にひとつのパラメーターのみを制御することは叶いません。
温度に関しては、空気の温度が上がることによって同じ相対湿度を維持するための蒸気圧も上がってしまいますので、結果として相対湿度は下がってしまいます。
また、温度を下げる際には冷却部で空気中の水蒸気が結露してしまいますので、温度の低下と共に湿度も低下します。
では、湿度を上げたい時はどうでしょう。
操作方法として蒸気を使用する場合には、蒸気を噴出させることで湿度が上がりますが、同時に温度も上がってしまいます。
よく家庭用の加湿器に見られるようなミスト(微細な水滴)を使用する場合には、逆に蒸発潜熱を奪って庫内の温度は下がります。
湿度を下げる場合は、前述の温度を下げる時と同様で、視点を温度から湿度へ移してもらえれば、湿度の低下と共に温度も低下することが分かります。
でも、そんなことは家庭用のエアコンでもできていることでしょ、と思われる方がいるかもしれません。
原理的には正しいのですが、特に湿度の設定値が高く、加えてより精度の高い制御が求められていることで必要とする熱や蒸気のエネルギー量は格段に高いものになってしまう危惧があるのです。
少しの温度や湿度の変動で加熱/冷却、加湿/除湿を繰り返していたのでは、膨大なエネルギーを浪費することにもなりかねません。
乾ホイロの場合は別にして、本来最終発酵時でもパン生地に与えたい条件は、一定温度で相対湿度100%です、…生地は乾かさずに湿らせない。