トンネル式オーブンの上火
固定式オーブンであっても、連続式オーブンであっても、上火は主に製品の上面を加熱して、パンの形状やボリューム、クラストの色や厚さを決定させます。
ここでは、熱源として主に使用されています、ガス式オーブンを取り上げて解説することにします。
連続式オーブンでは、縦列毎に見れば、すべての製品が同じ経路を通過しますので、その点では固定式オーブンのような加熱ムラの心配は低くなります。
ところが時系列的に見てみますと、状況は少々異なります。
熱源として使用しますガスは、その炎の温度が1800℃程度と非常に高く、このままでは加熱が強すぎて使い難い状況にあります。
そこで、ガスバーナーの炎を遮蔽するようにバッフル板が設けられて、輻射熱の熱源としては、より温度の低いバッフル板の下面と天井から得ることになります。
もしもですが、この炎からの輻射熱を有効に利用することができれば、大幅な省エネルギーが図られることは言うまでもありません。
話を戻しますが、天板等がオーブン内の搬送コンベアで流れていきますと前述の点火バーナーの下を通って進んでいきます。
確かにバッフル板で直射の加熱は防げるのですが、それでも機種によっては天井の温度と比較すると高温になっているケースもあり、そのような場合にはここを通過する際にパン生地の上面温度は顕著に上昇し、そしてここを通過し終えると生地上面温度は一時的に下がってしまいます。
パンに限らず、オーブンで食品を焼成する場合、その途中で温度を下げるとあまりいい現象は起こりません(ケーキ等の洋菓子では、水分の戻りが起きたりします)。
地味ながら、バッフル板の仕様は結構重要なのです。
それと、燃焼ガスは物質ですから、使用して入れた分はオーブン外へ放出しなければなりません。
一般的に排気口は天井に設けられていることが多いのですが、なにか気になる点はありませんか?
気体は温度が高いと体積膨張して軽くなりますので、上方へ移動する性質があります。
つまり、天井近くには温度の高いガスが溜まっていて、この高エネルギーのガスをわざわざ放出している状況にあるのです。
確かに安全面で、もし未燃焼ガスが発生していた場合には、それをオーブン外へ逃がす役割もあるのですが、高価な(高エネルギーの)ガスを惜しげもなく排気することにはやはり抵抗があります。
トンネル式オーブンの下火
パンへの下火の掛かり具合を考えるうえで、まず確認しなければならないことが炉床の仕様です。
トンネル式オーブンの炉床でよく目にしますのが、上図の3タイプで、食パンのように高さのある型製品を焼く時には燃焼ガスが下から通り易いグリッドタイプを選択し、菓子パンのように天板を使用する製品には、初期の十分な下火を得るためにフラットなプレートタイプの炉床を選定します。
プレートタイプで穴開きの仕様の炉床は、メーカー曰く、型製品でも天板製品でも焼けます、とのことですが、裏を返しますと…。
デッキ式オーブンのところでも解説しましたが、上火と比較して下火によります加熱はシンプルです。
そして、下火では高温の燃焼ガスがそのまま天板等に作用しますので、エネルギーロスの懸念も上火ほどではありません。
通常の使い方では、入口ゾーンで強熱をして、出口ゾーンでは天板等の温度を保持できる程度の熱量があればいい訳ですので、徐々に設定を下げていく感じになります。
バッフル板で燃焼ガスの直噴を避ければ、下火の空間で燃焼ガスを十分に混合させることで、比較的容易に温度コントロールが可能です。