窯出し作業の重要性
焼成の後半ともなりますと、パン生地にとっても大きな変化はあまりないように思ってしまいがちですよね。
オーブンキックによる著しい形状変化が起こる焼成初期とは対照的です。
ところが、オーブンの出口に差し掛かったところから炉外へ出て、そして型なり天板からパン生地を外すところまでのほんの短い時間が、実は製品の品質に大きく関わってくることを今日は解説していこうと思います。
まず、大手製パンメーカーの工場(連続生産ライン)に多く導入されていますトンネル式オーブンやスパイラル式オーブンの出口構造について。
どちらのタイプのオーブンも自動搬送のコンベアが付帯されていて、コンベアで運ばれた天板類は、温度の異なる各ゾーンを一定速度で通過していきます。
スパイラル式オーブンはコンベア速度が比較的速いため、炉外へ出るとほぼそのタイミングで天板等の加熱環境は急速に焼成から常温へ推移します。
これは、固定式オーブンで窯出しをする際の操作と同様で、オーブンの扉を開けたら即座に天板等を取り出して、次の操作(ショック⇒デリッド⇒出パンニング)へ移ることができます。
次に、トンネル式オーブンの場合はどうでしょう。
天板等は各焼成ゾーンを通過した後に出口に近付いてきます。
そして、オーブン本体から出たところでアンローダーと呼ばれます急速の排出装置が起動して、天板等を横送りの搬送コンベアへ移載します。
そう聞きますと、特に問題は無さげのようですが、トンネル式オーブンを横から見た下図を見て下さい。
トンネル式オーブンは出口の開口部が比較的広く、炉内へ低温の空気が外部から流入し易い構造になっています。
そして、搬送コンベアの速度も上図のような5列であれば、単純に1/5の速度になりますし、更にトンネル式オーブンでは天板等をほぼ間隔なく並べることができますので、その点でもスパイラル式オーブンとの比較で搬送速度が下がる要因となっています。(スパイラル式オーブンの搬送方式に関しましては、
焼成 (② 連続式オーブン) - 黒猫サンタさんのパン作りブログ
を参照ください。)
もっとも、天板等を隙間なく敷き詰められますことは、装置のスペース効率を考えればプラス要因なのですが。
トンネル式オーブンの場合は、炉内を確実に設定した焼成温度にするために、燃焼ガスの流れについて考慮しなければなりません。
トンネル式オーブンの入口と出口にはフードが付いた排気ファンが一般的に設置されています。
そして、排気ファンは炉内の各ゾーンにも設置されています。
炉内の燃焼ガスがところてん式に出口の排気ファンで出されれば問題はありませんが、もし炉外の(低温の)空気が収縮し始めたパンに向かって流れてきたら、さて、どうなるでしょうか?
そして、みなさんでしたら、どのような方策をもってこの課題を解決しようと考えますか?