黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

バウムクーヘンの焼き方、ご存知ですか?

とにかく手間が掛かる焼成方法

 バウムクーヘンは円柱状の心棒に生地を1層塗っては焼き、1層塗っては焼くという工程を繰り返す、非常に手間の掛かる焼成方法で製造されます。

 一般的な20層程のバウムクーヘンの場合、1層の焼成に2分程度掛かりますので、1本を焼き上げようとしますと、焼成時間としては40~45分程度掛ってしまいます。

 (ここから雑談)その為、過去には辛い思い出も…。

 2006年のワールド・ベースボール・クラシック決勝の日本対キューバ戦は最後までもつれる大接戦の試合展開でした。

 回は忘れてしまいましたが、抑えの切り札として松坂大輔がマウンドへ上がるも、強力なキューバ打線も負けておらず、手に汗握る場面の連続です。

 その試合を8回くらいまで工場の休憩室でテストの合間に見ていました時、生産ラインから『次にテストのバウムクーヘンを仕込みますので、工場へ入って下さい』とのお呼びが…。

 そして、1本のバウムクーヘン焼成データを取って、再び休憩室に戻ってみると…、そこでは…王監督が胴上げされていました。

 最高の瞬間が見られませんでした…。

 と、そんな泣き言を言っていますと、工場なら自動焼成の機械設備くらいあるんじゃないの?と、言われそうですので、少し解説を。

f:id:santa-baking:20200227103229j:plain

 デパート等で見られます手焼きのバウムクーヘンは、本当にきれいな円柱状に仕上がっていて、これが普通と思われているかもですが、これはなかなかの技術なんです。

f:id:santa-baking:20200227121757j:plain

 例えば、なにも意識せず、単純に心棒へ生地を付けていますと、両サイドの縦面から生地が流れてきて、上図のように両端が膨れたような形状になってしまいます。

 当然、この膨れた部分は商品になりませんので、規格から外れた生地はロスとなってしまいます。

f:id:santa-baking:20200227121837j:plain

 大型のバウム焼成機は複数の心棒がリール状の回転軸に取り付けられて、手前の生地槽で1層分の生地を付けた後、周回している間に焼かれます。

 ちなみに、生地槽は生地を塗る心棒が定位置に来た時に、ちょうど生地の表面が触れる高さまで持ち上がる仕組みになっています。

 ですので、バウムクーヘン工場では作業者が両端の生地の太さをチェックしながら、ヘラ等で余分な生地を除かなくてはなりません。

 それは、焼成が始まってから焼き終えるまで製品に付きっきりの作業となります。

 断っておきますが、場所は焼成機の前ですので、決して涼やかな作業環境ではない事だけはご理解頂けると思います。

f:id:santa-baking:20200227121925j:plain

 そして、次はバウムクーヘン生地への熱の加え方について。

 焼成機の断面を横から見ますと上図のようにリール状の搬送系と熱源が配置されています。

 生地は下段で付けられて1周回って1層分の焼成が完了するというものです。

 さて、熱源には火で炙るイメージのブンゼンバーナーと天日で加熱するイメージのシュバンクバーナーがあります。

 生地温度が低い時には対流熱が効果的で、加熱されて温度が上がってくると遠赤外線のような輻射熱が効果的に均等な加熱を再現することができます。

 ちゃんと焼き方にもこだわった構造になっているんですね。

f:id:santa-baking:20200227122039j:plain

 ところで、バウムクーヘンには表面が波を打ったような形状の商品を見ることがあります。

f:id:santa-baking:20200227122126j:plain

 ひとつは、焼成の後半で塗った生地を書き落とす方法。

f:id:santa-baking:20200227122206j:plain

 そして、もうひとつは適度な間隔で1層ずつ凹凸を付けて生地を重ねていく方法です。

 後者の方がはるかに手間が掛かることは、想像に難くありませんね。