黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

大丈夫! なんとかなる‼ Papi-Pain(ぱぴ・ぱん)前編 ~ 石窯オーブン

 今回、紹介しますPapi-Pain(ぱぴ・ぱん)は、私がリピートしています anopan のご夫妻が修業を積まれたお店とのことで、そのようなご縁で今回お邪魔することにしました。

 

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 ぱぴ・ぱんは、食べログ パン EAST 百名店 2020にて、初選出34位にランキングされています。(食べログ パン 百名店 2019 までは、全国でランキングされていましたが、2020では TOKYO, EAST, WEST の3ブロックに分けられたようです)

 

 ぱぴ・ぱんで使用されています『みかげ石床窯オーブン』に絡めて、石窯オーブンの下火の効果について解説すると共に、ぱぴ・ぱんについてリポートします(前編)。

 

【 目次 】

 

石窯オーブンの下火

 石窯オーブンと聞きますと、なんだか歴史的な重みも加わったようなイメージでおいしく感じてしまうことはありませんか。

 

 でも、実際に石窯オーブンでパンを焼成すると、どのような効果が得られるのでしょう。

 

石窯オーブン

 

 よく言われる効果のひとつに、材料となっています石の蓄熱性が挙げられます。

 

 金属と比較して石は比熱が高いので、同じ重量であれば、より多くの熱を蓄えることが可能です。

 

 つまり、パンを焼く時に必須となる焼成初期における下火の強熱を得ることができるため、高さのあるボリューミーなパンを焼き上げることができます。

 

石窯オーブン

 

 であれば、金属でも重量を増やして同じ熱量を加えられるようにすればいいと思われるかもしれませんが、金属は熱伝導率が高いため、パン生地が接していない部分の熱さえも生地へ流れるようになってしまい、結果として、下火の設定温度を下げざるを得なくなります。

 

 そうなりますと、必然的にパン周辺の雰囲気温度も下がることになり、石床のオーブンと同じ焼き方はできない、ということになる訳です。

 

Papi-Pain (ぱぴ・ぱん)

 名古屋市天白区の地下鉄植田駅から徒歩数分の場所に、そのBoulangerie Papi-Pain(ブーランジェリー ぱぴ・ぱん)はあります。

 

Papi Pain

 

 グリーンを基調とした店舗の外観は、思わずNATURALな気持ちにさせてくれます。

 

Papi Pain

 

 今回、調子に乗って少し買い過ぎてしまいました。

 

 という訳で、上写真印の5個のパンを前編として紹介することにします。

 

 実は、この後にも洋菓子屋さんともう一軒のパン屋さんへ寄ることになっていました。(この日は、家中、パン菓子だらけです)
 

バゲット・トラディショナル(290円 税込)

 長時間低温熟成発酵をさせて作っている、ぱぴ・ぱんの看板商品だそうです。 

 

Papi Pain

 

 クープは6つと多めで、焼き色はしっかりと付けられています。

 
 粉は、フランス産の小麦他を自家配合しているそうで、極秘のノウハウなのでしょうね。

 

Papi Pain

 

 生地の底面を見ますと、直焼き(ハースブレッド)であることが一目で分かりますし、焼成中は、おそらく断面がまん丸に近いくらいに生地膨張していると推測します。

 

 御影石は内部が密に詰まっていますから、生地が炉床に接している部分の温度が上がり易くなる傾向があります。

 

 つまり、上写真で焼き色が濃く出ている部分以外は(パン生地がパンパンに膨らんでいて)炉床から離れていると思って頂いて結構です。

 

 一方、レンガのような石質板や天然石でも気泡を含んだような状態の石であれば、一層熱伝導率が低く、特徴的な焼き方ができるようになります。

 

Papi Pain

 

 内相は、標準的に歪な気泡が見られますが、なんとなく縦に伸びているようにも見えなくはないような・・・。

 

 クラムの食感はモチモチしており、小麦粉の風味が十分に感じられる商品でした。

 

パン・オ・ショコラ(240円 税込)

 クロワッサン生地をベースにバトンショコラ(棒状のチョコレート)を巻いたパンオショコラは同店の2番人気の商品とか。

 

Papi Pain

 

 層の数は少し少なめでしょうか、生地の折込み油脂にはフランス産のピュアバター100%をされているそうです。

 

Papi Pain

 

 縦にカットしますと表面の生地がパラパラと崩れてくるほどで、食べてサクサクの食感が堪能できます。

 

ヘーゼルナッツクリームのショコラ(270円 税込)

 パン・オ・ショコラにヘーゼルナッツクリームを掛けて、焼き上げています。

 

Papi Pain

 

 冷やして食べるといった食べ方提案もされています。

 

Papi Pain

 

ピスタチオ・ショコラ(270円 税込)

 ピュアピスタチオペーストと自家製アーモンドクリームで作ったペーストを
クロワッサン生地のパン・オ・ショコラに塗って、焼き上げた商品です。

 

Papi Pain

 

 今では、上記のショコラ・ヘーゼルとピスタチオの三つを合わせて『ショコラ3兄弟』と言われているとか、いないとか。

 

Papi Pain

 

クイニーアマン(280円 税込)

 クイニーアマンは、元々フランス・ブルターニュ地方の伝統菓子です。

 

 このクイニーアマンという言葉は、ブルターニュ地方の古い言葉・ブルトン語で『バター(amann)の菓子(kouign)』を意味しています。

 

Papi Pain

 

  外側は焦げた糖がカリッとした食感を生み出して、バターの香りと相まって心地良い食べ口を与えてくれます。

 

Papi Pain

 

 この食べておいしいクイニーアマンですが、いざ作るとなりますと特に焼成の工程で焦げた糖とバターが型もしくはセルクルにべた付いてしまい、器具のメンテナンスが大変です。

 

レシートに注目

 支払いを済ませて、ずいぶん長いレシートを見ていたところ・・・。

 

Papi Pain

 

 ん?、レシートには『大丈夫! なんとかなる‼ (^0^)』の文字が。

 

 どこへ向けたメッセージなのかは分からないままですが、その場の雰囲気で、

大丈夫だ、なんとかなる! (やっと最後にタイトルの説明ができました)

 

生地と折込み油脂の物性 ~ グレープフルーツのデニッシュ・anopan

 近所の焼き立てパン屋さん:anopan が、期間限定でグレープフルーツのデニッシュを発売しました。

 

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 改めまして、anopan のリポートと併せて、デニッシュに絡めたシート生地の折込み油脂について解説していきます。

 

【 目次 】

 

シーティング時の生地温度

 デニッシュペーストリー類のように油脂を生地に折り込んでいく作業の際には生地の温度への注意が必要です。

 

パン生地 折込み油脂

 

  と言いますのも、デニッシュ類の生地の凍結温度は-6~-7℃程度と低めなのですが、バターですと凡そ+7℃以下の温度で固化してしまいます。

 

 つまり、生地を延ばす時には、同程度に油脂も延ばすことになりますので、温度がとえも重要になってくる訳です。

 

 一般的な生地の折り方のひとつに三つ折りがありますが、重ねて延ばすといった作業の繰り返しできれいな層が出来上がるイメージです。

 

パン生地 折込み油脂

 

 ちなみに、元の層の数:a に対して、三つ折りを1回行いますと、できる層の数は a×3-2 で計算できますので、2層⇒4層、4層⇒10層、10層⇒28層、と繰り返すごとに層の数も増えていきます。

 

 ところで、上下に金属製のローラーがあるシーティング装置でデニッシュ生地を延展する場合には、熱容量が大きいローラーからの熱移動と表面積が大きくなったことによる周囲からの対流熱伝達が生地温度を上げてしまいます。

 

パン生地 折込み油脂

 

 つまり、1回の延展で生地温度が上昇した分、手間が掛かりますが、一度、生地を冷蔵庫等で冷却する必要が出てくる訳です。

 

パン生地 折込み油脂

 

 もし、この作業を怠りますと、油脂の温度が上昇して生地に溶け込んでしまい、きれいな層ができなってしまいます。

 

パン生地 折込み油脂

 

 そして、一方、生地を冷やし過ぎたりしますと生地だけ流動して油脂は固まって動かず、先端が生地だけといったシートができてしまいます。

 

 ただし、熟練された方は、この操作も生地を冷凍庫で冷やして、表面の温度上昇分を考慮して取り出すタイミングを計っていますので、このような教科書通りの作業には当てはまらないケースは多々あると思います。

 

 匠の技ですね。

 

anopan

 これまで数回紹介していますが、このお店のデニッシュはレベルが高くて、このようなパン屋さんが歩いて行ける距離にできて嬉しい限りです。

 

 はっきり言って、リピーターです。

 

anopan

 

 今では、コロナ禍の影響で、レジの対面部分には透明のプレートが設置されており、袋詰めは購入した人が自身でする方式に変更となりました。

 

anopan

 

 購入しました商品は、上写真の5品です(と言いますか、何度も買いに行っていますので、とある日に購入しましたパンですね)。

 

グレープフルーツのデニッシュ(230円 税込)

 一番のお目当てのパンです。

  

anopan

 

 やはり、デニッシュの層の出し方が本当にきれいです。

 

パン生地 折込み油脂

 

 ちなみに、成形方法はデニッシュのスクエア生地を上図左のように切り込みを入れ、上下の生地の角を他方の角に合わせていますね。 

 

anopan

 

 成形後には中央の窪んだ部分にクリームチーズを充填して焼成し、冷却後にカットされたグレープフルーツの果実をトッピングしているのかと思います。

 

 断面からも、瑞々しいグレープフルーツの果肉感が十分に伝わってきます。

 

 実際に食べてみますと、生地のサクサク感とグレープフルーツのジューシーさがベストマッチングです。

 

anopan

 

 先ほどはピンクグレープフルーツでしたが、時期によっては色違いのグレープフルーツが使われていることもありました。

 

 どちらも、十分に堪能できましたよ。

 

anopan

 

 最後に、生地の横から層の感じをお伝えします。

 

 上と下の生地を丁寧・上手に繋げていることが窺(うかが)えます。

 

桃のパン(280円 税込)

 こちらは、ソフト系のパン生地に桃の半身の果実が載りました、桃のパン、です。

 

anopan

 

 こちらもパン生地とフルーツの間にはクリームチーズが使用されていますね。

 

anopan

 

 こちらは、イメージ通り、ソフトな生地の食感と桃のソフトさが相まって、溶ろけるような感じの商品になっています。

 

イチジクのパン(270円 税込)

 家族のお薦めで、イチジクの果肉を生地に練り込んだハード系のハースブレッド(直焼きパン)です。

 

anopan

 

 クープの間からイチジクの果肉が覗いています。

 

 食べた感想は、今度、家族に聞いてみます(すみません)。

 

ミルクフランス(200円 税込)

 そして、我が家の定番、ソフトフランスです。

 

anopan

 

 最近、anopan ではバゲット生地でも1本を3等分してミルクフランスやあんバターの商品を、お願いすれば提供してもらえます。

 

 私は、どちらかと言いますとバゲットベースのあんバターがマイブームになっています。

 

ぐるぐるのザクザク(焼き菓子 270円 税込)

 こちらは、デニッシュ生地を巻いてラスク風にした焼き菓子です。

 

anopan

 

 おもしろそうでしたので、ついでに購入してきました。

 

 サクサクして、おやつにはぴったりです。

 

お詫び

 今回の記事の投稿までに随分間隔が開いてしまいました。

 

 結果として、実は今回の記事の『グレープフルーツのデニッシュ』は販売が9月末で終了してしまっています。すみません!

 

 情報ネタが溜まって滞ってしまい、タイムリーな発信が叶わず申し訳ありません。

 

 今日の午後は講演会、来週は九州の学校の特別講義、再来週は学会での研究発表、と立て込んではいましたが・・・(単なる言い訳です)。

 

 とりあえず、これから講演会(リモートでは初体験です)頑張りま~す。

 

 

ミキサー 原材料の秤量と投入 ~ カンパーニュ他・スーリープー

 装置屋さんとしては非常に耳の痛い話なのですが、日本の製パンメーカーは自動化が進んでいないとの評価を耳にするようになりました。

 

 国内では、随分自動化された連続生産ラインを見てきましたし、海外の製パン工場も見学してきたつもりなのですが、つい最近までそれほど気にもなっていなかったところで、なぜ?

 

 そんな疑問を抱きつつ、ミキシング工程での原材料の秤量(ひょうりょう)&投入の解説と、日本パン百名店に名を連ねますスーリープーに再度訪れてきましたので、そのリポートとを併せて綴ります。

 

【 目次 】

 

原材料の秤量

 製パンの基礎は、原材料の重量を正確に量り分けるところから始まります。(ちなみに、私、一般計量士の資格も持ってます)

 

 ところで、以前にリポートしました惣菜パンの原材料表示を改めて見てみますと・・・。

 

パン 配合表

 

 決して特異な例でもないのですが、それでも生地作りに22種類の原材料が使われているようです。(ちなみに、水は表示に含まれていません)

 

 パンの定義では、小麦粉、パン酵母、塩、水を使えば、パンを作ることはできますが、目的や用途によって様々な原材料を使用しているのが実状です。

 

 原材料の種類が増えれば、それだけ量り出しの手間も増えていきます。

 

 余計なものは入れない発想は、製造サイドからも検討するべき課題であると思うのですが。(当然、消費者サイドからは十分な要望があることを理解しているつもりです)

 

ミキサーへの原材料の投入

 自動化が進んでいる工場では、小麦粉、塩、砂糖、油脂、水あたりは自動秤量でミキサーへ投入するプログラムがラインに組まれていますが、それでもフロアタイムを取った中種や前項にありました種々の原材料までは対応しきれず、別途作業者が手作業で量り出したものを投入しています。

 

 省人化が進まない理由の一つが、原材料の多さにあることは否めなさそうです。(生地に混ぜ物があれば、当然、いろいろなタイミングで投入の手間も発生します)

 

パン生地 横型ミキサー

 

 ちなみに、大型の食パンラインの本捏ねミキサーは1回のミキシングで800kg程の生地を一度に混捏する装置もありますので、けっして上図の人とミキサーの大きさの対比はオーバーな表現でもありません。

 

パン生地 横型ミキサー

 

 さらに最新のラインでは、ミキサーの裏から中種を自動投入して、捏ね上げ後の生地をドウボックスで受けるシステムが構築されていますが、それでも作業者は付かなくてはなりません。(このシステムに関しては、改めて解説します)

 

海外では

 では、海外ではどのような自動化が図られているのでしょうか。

 

 特にドイツにおける発展が目覚ましく、集中管理室でのオペレーターのみで管理するほどになっているとか。(私も、スペインの製パン工場生産現場(包装ライン)に2人 (内一人はほぼ清掃担当)だけのほぼオートメーション化されたラインを見学したことがあります)

 

 ちなみにドイツの方々のパンに対する愛着は絶大で、パン屋さんが近くにあると賃貸アパートの家賃も高くなる程だと聞きます。

 

 ただ、日本におけるパン事情とは大きく異なっていて、簡単な説明が難しいのですが、先述の原材料の秤量や生地の成形も無人でできてしまっています。

 

 答えになっていない、とお叱りを受けそうなのですが、ミキシングでは製品毎にミキシングボウルが入れ替わるシステムになっています。(これだけでは、全然分からないですよね。ただ、現状の日本の製パン工場では早々に変更することは困難なシステムです。)

 

 現時点では、東&東南アジアの国々での製パンレベルはまだ未熟ですが、今後、このようなシステムが標準化されてきますと日本の製パン業界ももしかしますと大変な事になるかもしれません。

 

パン 輸送

 
 ある講演会では、海を渡って安価なパンが日本へ入ってくる時代を予測する方もいるくらいですから。

 

スーリープー

 全国のパン屋さんで16位、愛知県では堂々1位にランキング(2019年)されていますスーリープーへ、またまた家族が出掛けてきてくれました。(感謝、感謝です)

 ※追記です。2020年のパン百名店は、①TOKYO, ②EAST, ③WEST と分けられていて、スーリープーは②EAST(東京を除く東日本)で2位にランキングされています。

 

スーリープー

 

 今回は、ハード系のパン2種とクロワッサンの計3品です。

 

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 前回の記事を読み返してみましたが、パンの解説はほとんどなかったですね。(すみません!)

 

クロワッサン 210円税別

 パンの両端を見れば、どれだけ丁寧にそしてきれいに生地の層を作っているかが分かります。

 

スーリープー

 

 翌朝、トースターで温め直して、サクサクの生地の食感とバターの風味を堪能しました。

 

ピンクベリー 239円 税別

 説明では、天然酵母を使用し、フランボワーズにクランベリー・ホワイトチョコを使用して(混ぜ込んで)いるカンパーニュとのこと。

 

スーリープー

 

 余談ですが、個人的にフランボワーズ・クランベリーという呼び名がしっくりこず、ラズベリーツルコケモモと聞くと妙に理解できている自分がいます。(齢ですね~!)

 

スーリープー

 

 自分で見に行けていませんので、使用しているオーブンは分からないのですが、直焼きしていることは確かなようです。

 

スーリープー

 

 内相は想像より細やかです。

 

 混ぜ込んだベリー等を包み込むには適した成形かもしれません。

 

 ちなみに、パン・ド・カンパーニュ はフランスパンの一種で、フランス語では田舎パンを意味しますが、ちょっと田舎パンと呼ぶには可愛すぎて・・・。

 

トロピカル 1/2カット 380円 税別

 こちらの生地も天然酵母を使用したカンパーニュで、パイン、パパイヤ、マカダミア、カボチャの種、他? が入っているそうです。

 

スーリープー

 

 クープの入れ方は独特です。

 

 これだけ、細やかにクープを入れますと、切り口が広がる分で生地の膨張分は収まってしまっています。(逆に、割れないよう意図しているかもです)

 

スーリープー

 

 ピンクベリーと同様に直焼きです。

 

スーリープー

 

 内相も気泡は細やかで、トーストしますともっちりした生地の食感とナッツ類の歯応え、そしてトロピカルフルーツの甘さが口の中に広がってきます。

 

 他のパンも含めて、愛知県でもっとも人気のベーカーリーの評価に頷(うなず)ける商品でした。

 

バゲットのクープ ~ PAUL のミニバゲットモーニング

 たまたま所用が東京であり、先日、立川駅の改札横にありますグランデュオ2FのPAUL(ポール)に立ち寄って少し遅めの朝食を取りました。

 

  カフェグラス(495円 税込)、カフェクレームグラス(528円 税込)、を注文する際、これに132円プラスでミニバゲットやクロワッサンをセットで付けることができます。

 

PAUL バゲット

 

 今回はドリンクのひとつにミニバゲットをセットで付けてもらったのですが、出てきたバゲットがこちら。

 

 これがミニバゲットの量ですか!(ちなみに、隣のテーブルの人がクロワッサンを注文されていましたが、こちらも随分大きいサイズでした)

 

 といったところで、今回はPAULのミニバゲットとクープ(生地上面の焼き色の薄くなっている部分がクープによる割れです)について解説します。

 

【 目次 】

 

PAULのミニバゲット

 たしかに通常のバゲットと比較しますとサイズ自体は小ぶりですが、モーニングで丸々1本が出されますと些(いささ)か目が点になってしまいます。

 

 とはいえ、早速品質チェックに、・・・外観はきれいな焼き色をしています。

 

 リーン(小麦粉・イーストなどの酵母・塩・水の基本材料で作られるシンプル)なパンの特有の濃さ(明度)、鮮やかさ(彩度)、色調(色相角度)、と思います。(別に計測した訳ではありませんが、(カッコ)内は、測色色差計での表示項目です)

 

PAUL バゲット

 

 生地の底面を見てみますと、デッキ式オーブンで直焼きしたハースブレッドの表情をしています。

 

 最近は、吸水が高めのパンが多いせいか、底面が這った形状のバゲットが多い中、この商品はしっかりと腰が出て(縦に伸びて)います。

 

PAUL バゲット

 

 内相は、歪な気泡が程よく混じっていて教科書のようなバゲットの内相です。

 

 食べてみますと、カリカリしたクラストともっちりしたクラムの食感はイメージ通りで、小麦の風味が十分に感じられました。

 

クープとは

 最終発酵後、生地表面をカミソリのような薄い刃物で浅くカットして、焼成後にその部分を割れたような外観にする操作のことです。

 

 一般的には、焼成初期に使用する蒸気量によって焼成後の生地表面状態は変わってきます。

 

 フランスパンのように生地表面温度が70℃程度までの加熱を蒸気で行う場合には、生地内部の温度が上昇する前に生地表面が乾いてしまいますので、クープの部分は裂けたような状態になります。

 

 一方、十分に蒸気を使用するドイツパンのような製品ではオーブンキックが継続している間も生地表面が濡れた状態で伸展性があり、クープの部分と元の表面の生地との境界が明確に出てこなくなってきます。

 

PAULのミニバゲット

 今回頂きました、ミニバゲットのクープは縦に1本直線を引いたように付けられています。

 

バゲット クープ

 

他のバゲットを見てみると

 こちらは過日にご紹介しました、食べログ・東京 パン 人気ランキング第1位のラトリエ ドゥ プレジールの日替わりバゲット(460円 税込)です。

 

ラトリエ ドゥ プレジール

(ラトリエ ドゥ プレジール)

 

 珍しいクロス状のクープです。

 

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 そして、こちらが前回ご紹介しました、バゲットラビットのバゲット(356円 税込)となります。

 

バゲットラビット

バゲットラビット)

 

 こちらは、比較的よく目にする一般的なクープの入れ方です。

 

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クープの入れ方について

 ところで、クープの入れ方について機械屋さんの見方で解説してみます。

 

 味気ないかもしれませんが、装置化する際にはとても大事なことですので、ご容赦下さい。

 

バゲット クープ

 

 一般的なクープを例えば上図のように縦方向に均等に入れますと、焼成時にクープの部分は横方向に広がってしまいます。

 

 クープ自体は斜めに入れられていますので、生地全体で見てみますと焼き上がったバゲットは下図のようなねじれたような状態になってしまいます。

 

バゲット クープ

 

 そこで、ねじれた後の形状を考慮して、クープを入れますと・・・。

 

バゲット クープ

 

 焼成後には、縦一直線にクープが並んだバゲットが焼き上がるという事になります。

 

バゲット クープ

 

 ただ、上の図では違いが分かり難いので、極端な図で解説します。

 

バゲット

 

 縦方向に均等に入れてしまいそうなクープを、この図の左側のクープは上方向に、右側のクープは下方向にずらして、下図のような切込みにすることになります。

 

バゲット

 

 その結果、ずらしたクープの位置が生地のねじられる応力によってちょうどいい位置に修正させるわけです。

 

 もっとも、このクープのずらし具合は生地の性質にも影響を受けますし、パン職人さんの感覚によるところが非常に大です(さすがにここまでは計算できないです)。

 

装置化

 以前に連続生産ラインでのクープについて解説したことがありますが、現時点におきまして上図のような作業は人の手だからこその技術です。

 

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 まず、個々に最終発酵後の形状が微妙に異なっているパン生地に対して、立体的に生地表面の位置情報を特定することさえ、最新のセンサー技術をもってしても非常に困難です。

 

 ましてや、ひとつひとつの位置をずらしてクープを入れていくとなると、それはもう至難の業です。

 

 でも、なんとかできないかなぁ、と妄想を交えながら楽しみ半分で考えていこうと・・・、最後に・・・人の手は偉大です!

 

シート生地の折り重ね(連続生産ライン)~ バゲットとデニッシュと・バゲットラビット

 食べログの愛知・パン人気ランキングTOP20で、第9位のバゲットラビットが今年の3月、名古屋・金山総合駅にありますアスナル金山1Fに新店舗を出店しました。

 

 このバゲットラビットは、マジカルチョコリングのアンティークやねこねこ食パンのネコネコファクトリーを展開する(株)オールハーツ・カンパニーが手掛けるブランドです。(なめらかプリンのパステルも同じ系列の店舗です)

 

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 今回も家族が出掛けてきてくれましたので、お店とパンのリポートと併せて、デニッシュやパイの生地を作ります成形ラインの製パン設備について解説することにします。

 

【 目次 】

 

シート生地の連続生産ライン

 デニッシュやパイ生地の層を作るためには、生地に油脂を折り込んで伸ばし重ねる作業が必要になってきます。

 

 リテイルベーカリーの店舗では、一般的にリバースシーターで三つ折り等の折り重ねを行いますが、大手製パン工場の連続生産ラインでは事情が異なってきます。

 

製パンライン

 

 最終の折り重ねを行う前の生地を①搬送コンベアに載せます。(この時、前に乗せた生地と端の部分で繋げます)

 

 コンベア上の生地は②ストレッチャーで薄く延ばされます(ストレッチャーの入口側コンベア速度は、延ばされた生地の厚さで自動調整されています)。

 

製パンライン

 

 ③揺動機(ようどうき パラレルパイラー)では、直角に交差する④搬送コンベアに生地を一定周期で揺らしながら折って重ねていきます。

 

 ひとつ前の画像のように、①搬送コンベアで端生地だった部分は、④搬送コンベアでシート生地の上下面に必ず含まれます。

 

 そして、再度⑤ストレッチャーで規定の厚さに延ばされて、次の成形に移ります。

 

どこまでこだわるか

 リテイルベーカリーの成形では折った生地の端生地は通常使用しませんので、非常に手間が掛かりますが、均一なきれいな層を創り出すことができます。

 

anopan

(こちらの画像は、anopanさんのイチゴのデニッシュです)

 

 しかし、上述の連続生産ラインでは①での繋ぎ目と③での折り重ねで、端生地が含まれてしまいます。(製造現場によっては、この際につなぎ目部分の端生地を切除して、内側の層には含めないようにするケースもあると思いますが)

 

 海外では、③揺動機を2台導入したラインも見られますが、当然、上図のラインで作るデニッシュよりきれいな層は望めないと考えられます。

 

 生産性と品質との折り合いをどこで付けるか、という視点で見られがちですが、私的には端生地を含まない連続ラインの装置ができないか、考えたいところです。

 

バゲットラビット KANAYAMA

 金山の商業施設・アスナル金山1Fにオープンしましたバゲットラビット3号店です(1号店:名古屋 一社、2号店:東京 自由が丘)。

 

バゲットラビット

 

 店舗の外観はシンプルながら、小麦を引く石臼の展示が目を惹きます。

 

バゲットラビット

 

 店内に入って、奥には製造現場にラック積みされたクーリング中の製品が見られます。

 

バゲットラビット

 

 壁側に並んでいる傘立てのバーのようなものは・・・?、店名にもなっているバゲットの棚でした。(現在は、感染防止策で包装した状態で立て掛けられていました)

 

バゲットラビット

 

 そして、クッキーやジャムのコーナーも。

 

今回の購入商品

 バゲットの他、人気のミニサイズカンパーニュやデニッシュ等、下図の計5品を購入です。

 

バゲットラビット

 

バゲット(356円 税込)

 バゲットラビットの看板商品です。

 

バゲットラビット

 

 バゲットにしては、焼色はしっかりと付いています。

 

バゲットラビット

 

 焼成は直焼きではなく、パンチングメッシュの天板が使われています(生地底面に凹凸の跡がくっきり!)。

 

 ところで、最近はハード系の製品で底面が這った感じのパンが多くなってきた気がします。(気のせいかもしれませんが)

 

 ハード系に限らず、食パンでも高加水を謳っているパンをよく目にするようになってきたことと関係が・・・。(吸水100%の食パンも出てきましたね。どのような生地で、どのような設備を使っているのか、気になります)

 

 クラムの食感はもちもちしますが、生地の取扱いは難しく、上手にまとめないと膜が薄く伸びずにちくわ・はんぺんのような食感になってしまいます。

 

 焼成は、コンベクションオーブンを使われているのでしょうか。(ヨーロピアンサイズの天板を使って、縦方向に生地を並べれば、ちょうどの長さになろうか、と)

 

 クラストの食感は、非常にカリッとしたものでした。

 

バゲラビ・フレーズ(421円 税込)

 人気商品のミニサイズのカンパーニュです。(上面の”B”の文字が象徴的です)

 

バゲットラビット

 

 中にはキャラメルバターを塗ってあり、ヴァローナ社のチョコレートがサンドされているそうです。

 

バゲットラビット

 

 中を開くと、このような状態です。

 

 このミニカンパーニュは定番が4種類あり、時期によってランダムでフレーバーが変わるとか。

 

ミルクブレッド(ハーフ 270円 税込)

 オープントップの小型食パンです。

 

バゲットラビット

 

 上面にクープが入っているところを見ますと、焼成時の初期に水蒸気を使用して伸ばしているのでしょうか。

 

 側面のケービングは、水蒸気の使用(生地中心部が早く温度上昇します)と焼成時間の関係で起きている可能性もありますね(もちろん、この商品だけたまたまだったのかもしれません)。

 

バゲットラビット

 

 内相はきれいな縦目が形成されていますし、ソフトな食感とミルクの風味でとてもおいしかったです。

 

パイナップルのデニッシュ(388円 税込)

 しっかりと焼き込んだデニッシュ生地にパイナップルがトッピングされた商品です。

 

バゲットラビット

 

 生地表面のサクサク感とフルーツのジューシー感が同時に楽しめる商品です。

 

 生地の層は・・・、食べた感じからもクラムは膜厚の印象を受けました。

 

アップルパイ(280円 税込)

 1/6カットのアップルパイです。

 

バゲットラビット

 

 前述のデニッシュと同様に、生地のサクサク感は十分に楽しめる一品です。

 

 今回購入しました商品は、ミルクブレッドを除いて全体的にしっかりと焼き込んでいる印象を受けました。