焼いている最中にパン生地は伸びて、そして縮みます!
パン生地の発酵を取って窯入れしますと、オーブンキックで生地は膨張してボリュームアップします。
パンを膨張させる、作用するこのような一般的な力を工学的には推進力(Driving Force : ドライヴィング フォース)と言いますが、パンの焼成で主な源となっていますのは、発酵中に蓄えられました炭酸ガスとアルコールと言われています。
ところで、焼き始めにパン生地が膨らむことはよく知られていますが、焼成中にパン生地が縮んでいることはご存知でしょうか。
工学屋さんが考えますと、これが至極当然なのですが、パンが外側へ押し出されますのは外に向かう力が働いているからなんです。
そして、この力を発生させる源(生地中の炭酸ガスやアルコール)には限界があって、永久的に継続するものではないのですね。
エンジンで言うところのガソリンのようなものです(最近は、電気自動車も有りなので、バッテリーでもOKです)。
このガソリン(もしくは、バッテリー)が切れてしまいますと、パン生地を外に押す力がなくなってしまいますのですが、実はパン生地にはこの他に常時働いている力が存在するのです。
そう、重力です。
ガソリン切れのパン生地は、重力に対抗する力を既に持っていませんので、僅かずつですが、ボリュームは後退するようになってきます。
つまり、ボリュームは収縮してきてしまうのです。
ここで、焼いている途中のパン生地が収縮する様子を見てみましょう。
といいましても、焼いている最中のオーブンの内部を覗くのも大変ですから、 ここはテーブルに置きました食型を横からのぞき込んで見てみることにします。
えっ! オーブンじゃないのに食パンが焼けるの? とは、思わないで下さい。
先日に紹介しました木箱オーブンのヒーターのみを使って、角形食パンを焼いていますので、No Problem です。
上の写真を見てみますと、焼成開始4分後には既にオーブンキックで食型の蓋が遊びの分だけ持ち上げられているのが分かります。
そして、8分後には遊びの分がなくなり、ピークに。
しばらくこの状態は続くのですが(パン生地中の炭酸ガスやアルコールはで続けています)、25分程度経ちますと、なんとなく蓋が下がってきたような状態になってきます。
パン生地が金属製の蓋を持ち上げ続けることができなくなり(ガス欠状態)、縮み始めてきた状態です。
さて、この縮み始めてきた状態で私たちは何を考えればいいのでしょうか。
この状態が長く続くと、当然『窯痩せ』を起こしますし、良いことはありません。
ただ、パン生地を食型から外すまでのタイミングには、許容範囲(Allowance)がありますので、パンに障害が起きない限界を知って食型型外す作業に移らなくてはなりません。
この型外しの作業も、実は結構奥が深いので、この解説は次回に持ち越しとさせて頂きます。
追記
あっ、最後に、このパン生地の収縮の現象なのですが、いろいろな測定データから推測することもできるようになっています。
これも、機会があれば、いずれ解説させて頂きますかもです(パン学校の授業では、概要の説明はしています ⇒ パン学校では、基本的に製パン機械設備の授業を受け持っていますので、この解説は少し横道の話なんですね)。