黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

塩パンあんマーガリンサンド・丸大食品 ~ 異業種からの参入

 常識というものは、環境が変わりますと全く通用しなくなることがあります。

 

 昨今の高級生食パンが、それまでの製パン業界で常識とされてきました製法から逸脱して、新たなカテゴリーを切り開いたように、市場ではそのような動きがこれからも出てくる可能性を秘めています。

 

 そして、これまで多くのベーカリーが積極的に踏み込んでこなかった冷蔵の温度帯での保存商品を、主に食肉加工品を取り扱っています丸大食品が投入してきました。(春の新商品だそうです)

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 今回は、スーパーマーケットの冷蔵品コーナーで見掛けました、塩パンあんマーガリンサンドを紹介すると共に、パン生地におけますデンプンの老化について解説していこうと思います。

 

【 目次 】

 

冷蔵温度帯での物流・保存

 パンは焼成後の時間の経過と共に老化が進み、一般的に好ましいとされますソフトでしっとり、もっちりとした食感が失われていきます。

 

 そして、その老化の進行は保存温度と密接な関係があって、凍結温度以上であれば、温度の低下と共に老化も速やかに進行していきます。

 

 そのため、製パン業界では各社ごとに、例えば『冬季25℃、夏季30℃を常温』として賞味期限あるいは消費期限を設定し、保存温度の基準としているのが実状です。

 

 保存温度が高ければ、菌(主にカビ菌)の繁殖によります衛生面での問題から消費期限の短縮が懸念され、逆に低ければ、食感に関する早期の品質低下が起こる為です。

 

デンプンのα化・β化(老化)と再α化

 ところで、パンの老化は主に小麦粉中の糊化:α化したデンプンが戻るβ化によるものと言われています。

 

 最終発酵後のパン生地は、焼成工程で加熱されることによって(β)デンプンが糊化してαデンプンになります。

 

パンの老化

 

 この時、デンプンがα化する温度は配合でも異なってきますが、一次糊化で60~75℃、二次糊化で75~90℃程度で、一次と二次の違いは主にデンプン周りの水分の存在によって分けられるとも、デンプン粒の状態変化によるとも言われています。

 

 ちなみに、湯種法で活用されるのは一次糊化によるαデンプンが主と推測されます。

 

 そして、焼成されたパン生地は冷却保存後に徐々にβデンプンに戻る訳なのですが、ポイントは一度α化したデンプンがβ化した場合、(トースト等で)再度加熱すると最初のα化の温度より非常に低温でも再α化するということです。

 

 ここに目を付ければ、老化の速度に関わらずα化したばかりの食品を提供することができる可能性が出てくるという訳です。

 

塩パンあんマーガリンサンド (298円 税別)

 そこで、改めて丸大食品の塩パンあんマーガリンサンドを見てみますと、包装紙には温めて食べることを前提とした記載となっています。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 なお、賞味期限は製造日は不明ながら、購入日から10日間となっていました。

 

原材料表示

 包装紙の裏側には、調理方法と原材料表示等が記載されています。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 日本パン公正取引協議会の公正競争規約では、イーストではなく、パン酵母と表記する旨が謳われていますが、これは自主ルールですので、おそらく日本パン工業会に属していない異業種の丸大食品では従来通りの『イースト』表記となっています。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

調理方法

 そして調理方法は、ラップを掛けてレンジ加熱でできあがり、というものです。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 最近は、レンジ加熱でパンを温める方法を時々目にしますが、個人的には少々苦手ですね(商品によって、クリスピークリームドーナツはレンジで温めて食べるのが好きですけど)。

 

外観

 3本のサンドロールが個包装されています。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 それそれのパンはややサイズがばらついていますし、切込みが揃っていない上に、表面にネットの跡のようなものが付いてしまっています。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 外観としては、ドッグロールに粒あんをサンド充填し、角状のマーガリンを添えた状態です。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 なお、商品名の『塩パン』に関しましては、その特徴がよく分かりませんでした。(原材料に食塩の記載はありますが、パンであれば基本的に塩を使いますので。)

 

加熱後

 手順に従って、ラップを掛け、電子レンジで加熱しました。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 生地表面では、結露した水分でラップと密着しています。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 ラップを外しますと、蒸した後のようなロールパンに・・・表面はしわだらけ。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 底面を見てみますと、側面が裂けて割れていました。(最終発酵のタイミングがあっていなかったか、生地作り?焼成条件?)

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 加熱後の断面は、マーガリンが溶け出して浸みかけている状態です。

 

風味・食感・食味

 風味としては生茹でっぽい感じで少々苦手です。

 

 食感もソフトではあるのですが、そのまま蒸したロールパンの食感で、焼き立てのロールパンとは異なる歯応えです。

 

トースターで加熱後

 日を改めて、トースターで加熱して食べてみました。

 

塩パンあんマーガリンサンド

 

 加熱前のパンの温度が低いため、弱火で長時間加熱しましたせいか、生地表面が硬くなってしまいました。

 

 また、中心部の温度が十分に上がりきらず、やや生地の脆さを感じる食感となっていました。

 

www.santa-baking.work

 

 私見ですが、この商品は以前にアップしましたパーベイク製品のリベイクを参考に、まず軽くレンジ加熱で生地温度を上げておいてから、通常のロールパン用の設定でトースト加熱することで、生地のもっちりさと焼き立てのふんわり感が出せるのではないでしょうか。

 

 この商品の着眼点は悪くないと思いますので、まだ伸び代は十分にあるものと期待したいです。

 

リコッタチーズのパンケーキ

 実は、最初の写真でサンドパンと並んで販売されていました冷蔵のパンケーキも一緒に購入していました。

 

パンケーキ

 

 こちらの商品は、丸大食品と同業の日本ハムが製造していて、同様にレンジ加熱して頂きました。

 

リコッタチーズのパンケーキ

 

 ただ、このパンケーキに関しましては、日を改めまして別のスーパーマーケットへ買い物へ行きました際、この商品に加えまして、ふんわり生地のアメリカンドッグ、北海道産生クリーム使用フレンチトースト、の2品種も販売されていましたので、機会があれば、併せてご紹介したいと思っています。