黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

ベーカリー&レストラン 沢村 ~ 研究テーマ・気圧

 名古屋の名所のひとつ:名古屋駅前ミッドランドスクエアの地下1階にベーカリー&レストラン 沢村があります。

 

 沢村は軽井沢発のパン屋さんで、軽井沢(2店舗)のほか東京に4店舗(丸の内、新宿、広尾(2店舗))を展開する人気店ですが、それ以外では名古屋が唯一の出店です。(なお、新宿(ベーカリー&レストラン 沢村 新宿)と広尾(ブレッド&タパス 沢村 広尾)の2店舗は、食べログのパン百名店tokyo2020にも選出されています。)

 

www.santa-baking.work

 

 私の中で軽井沢のパン屋さんと言えば、真っ先にブランジェ浅野屋が思い浮かぶのですが、今回は前述のベーカリー&レストラン 沢村の商品と併せて、高原のパン屋さんにまつわる研究テーマ・気圧に関して解説していこうと思います。

 

【 目次 】

 

圧力というパラメータ

 夏季の避暑地として軽井沢や清里は人気ですが、標高の高いところへ移動しますと、気温の低下以外に、気圧の変化に伴います様々な現象を目にすることがあります。

 

 例えば、開封する前のスナック菓子の袋がパンパンに膨れ上がっていたり、とか。(この日、ストローを挿すタイプのドリンクに、空気穴をあけていなかったせいで、運転中にストローからドリンクが噴き出てきてしまいました💦)

 

気圧 標高

 

 現在、日本で最も標高が高い集落と言われていますのは、群馬県万座温泉岐阜県濁河(にごりご)温泉の二ヶ所で、上の写真は過日に車で濁河温泉へ行きました折に、途中途中で撮影しましたものです。

 

 スナック菓子の包装は、膨らみが分かり易いように両サイドを押さえました。

 

 デジタル高度計を横に並べて、自宅(標高:30m)から濁河温泉(標高:1690m)までの変化を収めましたが、濁河温泉に付いた頃には包装紙がパンパンに膨らんでいますね。(高度計は気圧から高度を算出しますので、公称値と計測値の違いは、天候でも変わってきます。ご容赦ください。)

 

 濁河温泉辺りでは、気圧が825hPa程度にまで低下しますので、空気の体積は22.8%(= (1013.25/824.83-1)×100)増加する計算になります。(標高の高い所で、空気が薄いというのも頷(うなず)けます。)

 

沢村

 

 さて、中学か高校の理科の授業で、このような水の飽和蒸気圧曲線のグラフを見られたことがあると思います。(見られたこと・・・ありますよね~。)

 

 気圧が下がりますと、水の沸点も低下します。(万座温泉では、94.3℃程度まで下がります)

 

 すると、パンを焼成する時の生地表面温度と生地内部の蒸発層との温度差が大きくなり、蒸発速度が上がって特徴的な焼成条件となります。

 

 個人的な意見ですが、デニッシュやハード系のパンはおいしく焼けるのでは、と期待しています。

 

 私の仕事は、そのメカニズムを解析して製パン装置の機能に反映させることでしょうか。(データが揃えば、逐次、講演会や学会で発表しますね。)

 

 なお、デンプンの糊化温度は91℃程度ですので、日本の集落地でパンを焼くのであれば、火通りは問題ないと思われます。(一方、富士山の頂上では88.5℃までしか生地内部温度が上がりませんので、火通り不足ということになってしまいます)

 

ベーカリー&レストラン 沢村

 今回、家族には、デニッシュ系2商品とハード系2商品の計4商品を購入してきてもらいました。

 

沢村

 

 なかなか難しいですが、今後できれば同時に名古屋と軽井沢の店舗の同じパンを食べ比べてもみたいですね。

 

アプリコットクリームチーズ(370円 税別)

 ハード系の生地でアプリコットジャムとクリームチーズを包み、ホイロ後に上部をカットして焼成した商品です。

 

沢村

 

 写真の向かって左側面の焼色が濃いので、コンベクションオーブンを使用して焼成しているかもしれませんね。

 

沢村

 

 生地底面を見てみますと手粉は付着していますが、なんとなく直焼きの表情でもないような。

 

 離型油を使わずして、テフロンシートのようなものを敷いて天板で焼いている、とか。

 

沢村

 

 縦にカットしてみますと、クリームチーズの存在感が際立っています。

 

 食べてみますと、リーンな生地でアプリコットの甘酸っぱさが引き立ちます。

 

 食感としては、噛んでいる内に歯応えのある硬さをクリームチーズの滑らかさが補ってくれます。

 

渋川栗のデニッシュ(420円 税別)

 もう、これはパンというよりスイーツの領域ですね。

 

 そのまま、『モンブラン』として出しても通ってしまいそうです。

 

沢村

 

 生地にアーモンドチップと粉糖がトッピングされ、マロンクリームを絞って、その上に渋皮栗が一粒載せられています。

 

沢村

 

 そして、デニッシュの層がきれいに出ています。

 

 とても丁寧な仕事をされていますね。

 

沢村

 

 生地は、カップ状の型に端の部分がはみ出るように被せて成形されています。

 

 また、底部の焼色が濃いことから、型は金属製の天板に並べて焼成されていると推測します。

 

 生地の食感はサクサク感が心地良く、とてもおいしいです(ぜひ、軽井沢で食べてみたいですね)。

 

あんデニッシュ(280円 税別)

 デニッシュのシート生地に粒あんを絞って巻いていき、一定間隔でカットしています。

 

沢村

 

 表面に塗(まぶ)してあります芥子(けし)の実もいいアクセントになっています。

 

沢村

 

 こちらもデニッシュのきれいな層が出ていることは、渋川栗のデニッシュと同様ですが、はっと気が付きましたのは生地の端の部分がちゃんとカットされている事。

 

 生地の端の部分は、上からは隠れて見えませんが、折り返している部分のため、層がきれいに出ません。

 

 上からは見えなくても、そのような部分は使用せず、きれいな層にこだわっている意識が伝わってきます。

 

 もちろん、食べても歯切れのいい層の食感に大満足です。

 

ミルクスティック(260円 税別)

 ハード系の生地を白焼きして、ミルククリームを絞った商品です。

 

沢村

 

 白焼きながら、生地の側面は部分的に焼色が付いていますので、おそらくコンベクションオーブン焼成していると推測します。

 

沢村

 

 生地底面の形状が、扁平状になっていますし、その表情からも直焼きではなさそうです。

 

 そして中心部分には焼色のついているラインが確認できますので、おそらくこの焼色が付いている部分は焼成中に膨張し、炉床に接していた箇所で、焼成後に収縮して、このような形状になったのではないでしょうか。

 

 もっちりとした食感の生地で、かつ歯応えもありますので、咀嚼(そしゃく)している間、ミルククリームの味を楽しむことができます。

 

レジ袋(10円 税別)

 あっ、これはいいか!