黒猫サンタさんのパン作りブログ

プロのベーカリーと製パン企業のみなさまへ

極食パン・泉北堂 ~ そして、石窯オーブンの解説

 メディアで紹介されることも多い大阪府堺市の泉北にあります泉北堂は、2007年創業の比較的新しいベーカリーです。

 

 私が学生の頃(ですから、”昔々あるところに”くらいのお話です)にオープンされていれば、近くに住んでいましたので通っていたかもしれません、そのベーカリーでフワフワの食感とずっしりとした重さで現在人気となっていますのが、極食パンです。

 

 今回は、その極食パンのリポートと、デッキタイプの石窯オーブンついて解説していきたいと思います。

 

【 目次 】

 

極食パン

 2斤サイズの山形食パンです。

 

泉北堂 極食パン

 

 製法としては、『生命の命を感じ取る独自』の中種発酵法を採用しているとのことですが、詳細は分かりません。

 

 熱湯で生地を捏ねているそうですので、湯種法?と普通に考えてしまうのですが、あえて湯種法とは記載されていません。

 

 まさかとは思いますが、熱湯で捏ねた後に冷却せずにそのまま本捏ねに入るとか・・・、いやいやさすがにそれはないですよね、パン酵母が失活してしまいますから。

 

 原材料は、小麦粉、牛乳、砂糖、バター、ショートニング、食塩、全粉乳、パン酵母と、シンプルな構成となっています。(保存料等は、一切使用されていません)

 

 そして、とても興味深い配合です。

 

 牛乳を使用して更に生クリームや練乳ではなく全粉乳、バターに加えて無味無臭のショートニング・・・、きっとなにか意図があるのでしょう。

 

 ちなみに全粉乳というのは、牛乳をそのまま濃縮・乾燥させた粉末状の乳製品で、およそ10倍の水を加えることで栄養的にも味的にも元の牛乳に近いものに復元します。

 

外観

 成形方法は俵成形ではなく、玉生地成形で4つ玉を詰めています。

 

泉北堂 極食パン

 

 HPを見ましても掲載されている製品側面にケービングの見られる商品が写っていますので、随分オーブンで焼き込んでいることが推測されます。

 

 石窯オーブンで焼成している割には、この製品高さで上面の焼色が抑えられている感がありますので、上火の設定温度はそれなりに下げられているのでは、と思ってしまいます。

 

 製品重量は840g(1斤420g)ですので、山形という事を考えてみましても、随分重い重量感です。

 

 話が飛んでしまいますが、そうして考えてみますと、やはり『ぱんみみ』の食パン(1斤460g)は突出していますね。

 

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 そして話を戻して生地上面の光沢ですが、普通に艶出しコートを塗布していると思われますが、もしかしますと焼成時のオーブン投入直後に蒸気を使用しているかもしれません。(焼成初期に蒸気を使用しますと、水分が凝縮する影響で生地重量が一時的に増加します)

 

 山形食パンでの焼成では、ボリューム増や上面の光沢を目的に蒸気を使用することが多々ありますし、表面のシワからも蒸気加熱を連想させられます。

 

底面

 底面にはくっきりと食型のガス抜き穴の跡が付いています。

 

泉北堂 極食パン

 

 穴の跡がここまでくっきりと見られること、底面の生地が比較的一様に型に接触していた感じから、最終発酵は随分長めに取っていると推測されます。

 

 それは、窯伸び(オーブンキック)を抑えて、側面のケービング(腰折れ)を防ぐ意味もあるのかもしれません。

 

断面

 山形食パンですので、全体的に気泡サイズは大きく、やや不揃いの状態です。

 

泉北堂 極食パン

 

 生地膜は薄く、内相は白くてきれいです。

 

 山形食パンの傾向として製品の上方が収縮している感がありますが、湯種、最終発酵、焼成条件のどれに大きく由来しているかは、やはり不明です。

 

触感・食感

 全体的にソフトな手触りですが、弾力がやや強く、ゴム性が感じられます。

 

 クラスト部はやや引きが強く、歯切れが少々といった感じです。(けっして、食感の良し悪しを言っている訳ではありませんので、誤解のなきよう。あくまで、このような食感と感じましたままの表現です)

 

 この点からも、蒸気加熱の可能性はありそうな気がしています。

 

風味・食味

 食べて感じますのは、ミルクの風味と軽い甘さです。

 

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 山形食パンで、この食味は同じ大阪のベーカリー:レブレッソの商品に近いかと思いますが、外観、内相、食感は、まったく異なります。

 

 今では高級食パンも激戦の様相を呈してきていますので、どのようなパンを目指しているか、しっかりとコンセプトが定まっていて差別化が図られている商品が残っていくのでしょうね。

 

石窯オーブンについて

 パン屋さんのこだわりの中でよく見かける文言に、石窯オーブンを使用して焼成している旨の謳い文句をよく目にします。

 

 では、石窯オーブンの特性とは、どのようなものなのでしょうか。

 

 一般的に、言われていますのは、石から放射されます遠赤外線の効果と石が保有している熱エネルギーです。

 

 遠赤外線は確かに放射されますし、石の熱容量が大きく(扉の開閉時でも)壁面の温度変動が小さいことから放射される熱量は安定しています。

 

 ただし、金属パネルのデッキ式オーブンでも遠赤外線は同様に放射できますし、制御が正確で・あ・れ・ば・安定性も問題はありません。

 

 では、石窯の特長はないのでしょうか。

 

石窯オーブン

 

 そんなことはありません、石質の単位重量当たりの保有熱量は金属と比較すれば数倍高いので、強力なオーブンキックと高温での焼成を必要とする焼き方をしたい時には炉床が石もしくは石質板のオーブンを採用することをお奨めします。

 

泉北堂のオーブン

 泉北堂のHPに『大谷石の石室窯を採用』と、ありました。

 

 おそらく、コトブキベーキングマシンのデッキ式オーブンを採用されていると推測します(業界の人なら、すぐに分かることですが)。

 

 ちなみに大阪の生食パンベーカリー:乃が美でもコトブキベーキングマシンのデッキ式オーブンを採用しているようですが、こちらは石室窯ではなく、一般的なキャメルオーブンのようです。

 

 このキャメルオーブン、私が知る中では数あるデッキ式オーブンの中でも機能・性能面でかなりレベルが高いことを確認しています。

 

 おそらく、泉北堂では山形食パンの焼成方法に合わせて、石室窯の方を選択されたのではないでしょうか。(あくまで個人の感想です)

 

お茶タイムとおやつタイム ~ スターバックス・ピーチシリーズと茶の菓・・・

 なかなか遠出の外出もかなわない中、随分出遅れた感もありますものの、比較的近所にできたスターバックスへ家族と一緒に行って、桃シリーズのフラペチーノとケーキでお茶タイムを楽しんできました。

 

スターバックス

 

 フィローネのサンドイッチはテイクアウトにして、帰宅後には、改めておやつタイムという事で・・・、その結果、リラックスのし過ぎでポカを・・・。

 

【 目次 】

 

ジューシー ピーチ フラペチーノ

 ⽩桃の果汁、ピューレに果肉が加わったフラペチーノ(Tall 630円 税別)にホワイトモカシロップ(+50円 税別)をカスタマでトッピングしました。

 

スターバックス

 

 こちらは家族が注文していますので、一口だけ飲ませてもらっての感想です。

 

 とてもフレッシュな甘さは桃の甘さと理解して、この季節ならではの一品ですね。

 

 旬のものをスタバで頂けるというのもありがたいです。(これも食育になっているかも)

 

ピーチ&マンゴーケーキ

 スポンジ生地、ラズベリーソース、そしてマンゴームースと絞ったホイップクリームの上に、本命のピーチ果肉をどっさりとトッピングです。(440円 税別)

 

スターバックス

 

スターバックスラテ

 私の定番、スターバックスラテ(Tall 380円 税別)です。

 

スターバックス

 

 そして、いつもの通り、Tallサイズ(夏ですので、当然アイス)で、ホイップクリーム(+50円)をたっぷり(サービス)トッピングしてもらい、チョコレートソース(サービス)を掛けてもらいます。(今回は、お願いしていなかったのですが、チョコレートソースもたっぷりにして頂けました)

 

きのこ&モッツァレラ 石窯フィローネ(480円 税別)

 すみません、このサンドイッチのみテイクアウトにしたため(という言い訳です)、写真を撮るのを失念してしまいました。

 

 記事の性格からして、本来はこの商品がリポートのメインになるはずのところ、すっかり気が抜けて家族との団欒を過ごしてしまっていました。

 

 モッツァレラチーズときのこの感じをお伝え出来ませんでした、改めて申し訳ありません。

 

 使用しているパンには石窯という名前が示す通り、石窯オーブンで焼き上げたハード系のフィローネを使用しています。

 

 ちなみにフィローネというのは、高加水(高吸水)のハード系のイタリアンブレッドの一種で、クラストはカリカリで、クラムはもっちりとした食感が特徴のパンです。

 

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 先日のシニフィアンシニフィエの商品もそうでしたが、東京都のパン屋さんランキングで上位を占めていますお店の商品に高加水のパンが目立つようになってきた感があります。

 

 実は、その後、第1位のラトリエ ドゥ プレジールへも行ってきたのですが、このお店のパンも高加水のパンでしたし・・・。(近い内にリポートを上げるようにします)

 

 もしかして、ちょっとしたブームになっているとか・・・。

 

お濃茶ラングドシャ・茶の菓

 帰宅後、改めておやつタイムです。

 

マールブランシュ 茶の菓

 

 今年は恒例の春の今日旅行にも新型コロナの影響で行けず、京都のお菓子もご無沙汰だったのですが、家族が関西への所用の際に京都北山の『茶の菓』をお土産で買ってきてくれました。

 

マールブランシュ 茶の菓

 

 マールブランシュラングドシャである茶の菓はとてもお気に入りで、例年であれば、八坂神社へ金ピカの商売繁盛お守りを購入したその足で、祇園のお店へ寄ってくるのが通例となっていました。

 

マールブランシュ 茶の菓

 

 ただ、いつもならホワイトチョコレートを挟んだ定番の茶の菓なのですが、今回は夏限定で生地にホワイトチョコと練り込んだ『夏もの 涼茶の菓』を買ってきてくれました。(焼印の文字も涼となっていますね)

 

マールブランシュ 茶の菓

 

 この商品は、ラングドシャを2枚重ねたもので、定番商品のようにサンドされたホワイトチョコのようなものはありません。

 

 お濃茶には定番の茶の菓が山の茶葉主体で生地を作っているところ、涼茶の菓には川の茶葉が多く使用されているとのこと。

 

 苦味を際立たせた一品になっているとのことです。

 

そして・・・

 お茶タイムとおやつタイムをご満喫して、きのこ&モッツァレラ 石窯フィローネの写真も撮らずに仕事場へ行ってしまいました、とさ。

 

 

凍らせてもおいしい ・・・ なので! 北海道チーズ蒸しケーキを冷凍してみました・山崎製パン

 前回の投稿で、北海道チーズ蒸しケーキのリポートの際、末尾に冷凍の紹介をさせて頂きましたところ、ブログだけではなくツイッターからも多くのコメントを頂きました。

 

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 私自身、このような経緯で記事を投稿することが初めてなのですが、せっかくの機会ですので、今回は『試してみましたバージョン』で冷凍した北海道チーズ蒸しケーキをリポートしたいと思います。(えっ、表情が硬いですか?・・・不慣れなもので)

 

【 目次 】

 

北海道チーズ蒸しケーキ、再び 

 今日はローソンで北海道チーズ蒸しケーキを購入しました。(冷凍後、14時過ぎに食べましたので、夕食時は少々お腹が張って・・・)

 

 仕事場には、240ℓの業務用冷凍ストッカーがありますので、そこで凍らせます。(通常は、テスト用の冷凍パン生地等をストックしています)

 

包装紙

 包装紙の内側には、うっすらと結露した水滴が付着しています。

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 

 あれ? 前回の時と包装が少し違っています。

 

 そう、『凍らせてもおいしい』のシールが、まるでこの記事を書かんとすることを予知していたかの如く貼られています。

 

 ところで、この時はあまり気にしていなかったのですが、シールの吹き出し部分に何やら模様が・・・。(後に続きます)

 

外観

  さて、製品を取り出しますが、今回は凍っていますので、持った時、前回のように製品が凹んだりすることはありません。

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 

 外観も小さな氷の結晶が付いていたところが光っている程度で、大きな違いは見られません。

 

内相

 今回は、まず縦にカットしてその断面から内相を見てみます。

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 

 生地が凍っている感覚はあるのですが、パンナイフの刃は、スムーズに生地に入っていきます。

 

 内相は気泡が細かくて、均一で、それでいて底の部分が詰んでいることもありません、とてもきれいです。

 

 ところで、この時点で包装紙に貼ってありますシールの吹き出しに見えていました、なにかの模様のようなものはきれいになくなっています。(またまた、後に続きます)

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 

 ちなみに、チーズ蒸しケーキを載せている白いお皿は、以前のヤマザキ春のパンまつりで点数を集めて交換したお皿です(使い易くて、とても重宝しています)。

 

食感

 そして、たべ易く四分割にカットして、実食です。

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 

 写真では見づらいかもしれませんが、この時点で製品を冷凍ストッカーから取り出してから5分ほどが経過している状況で、製品は表層から5mm程度の部分が既に解凍されていて、その部分は普通に冷たいチーズ蒸しケーキの状態です。

 

 そして内側の凍結している部分は、当然解凍部分より歯応えはあるのですが、ソフトクッキーのような状態でサクサク普通に噛めます。

 

 当然のことですが、噛んだ瞬間に冷たさが伝わってきます。

 

 これまでにない食感+触感を感じられることは間違いないですね。

 

風味・食味

 いつもの風味・食味に冷感が加わって、まろやかさ⇒凝縮した味わい、のような感覚と表現していいのでしょうか、少々風味・食味が濃くなっても受け止められるといいますか、ある意味さっぱりと後味を残さず食べられるような感じです。

 

 すみません、本当に表現が難しいです。(冷凍したままの風味・食味を比較したことはあまりありませんので ☜ 言い訳です)

 

状態の経過

 カットしたことも影響しているかもしれませんが、この後室温で10分程放置しておきましたところ、すでに凍結している部分はすべて解凍されて、普通の冷たいチーズ蒸しケーキになっていました。

 

 『凍らせておいしい』を体験するには、冷凍庫からの長時間の放置は避けたいところです。

 

包装紙のシール

 さて、気になっていました包装紙のシールですが、よく見てみますと『冷たく冷やすと文字が出ます。』との記載が。

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 

 という訳で、中身を外しました包装紙のみを冷凍ストッカーに入れてみます。すると、

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 

 あの吹き出し部分には『さあ☆めしあがれ』の文字が浮かび上がってきました。

 

 でも、包装紙が冷えていないと読めませんよ~、山崎製パンさ~ん!

 

冷凍した時の生地の熱物性値

 なんとなく、今回のケーキが冷凍庫から取り出されて解凍されるまでに掛かった時間は、感覚的に短かくなかったですか。

 

パン生地の有効熱伝導度

 

 多くの食品は、その内部に水分を含有しており、比熱や熱伝導率といった熱物性値は水の影響を大きく受けます。

 

 上のグラフはパン生地の(有効)熱伝導率を対温度でプロットしたものなのですが、凍結温度を境に凍結後の値は凍結前と比較して2~3倍に顕著に高くなっていることが分かります。

 

 これは、パンやケーキを冷凍すると熱の伝わり易さは、冷凍前の2~3倍高くなることを示しています。

 

 そして比熱の場合、今度は逆に凍結温度を境に凍結後の比熱の値は凍結前と比較して1/3~1/2倍に顕著に低くなります。

 

 つまり、パンやケーキを冷凍すると、熱が伝わり易く、さらに一定量の熱エネルギーで温度が上がり易くなるため、冷凍時と比較して解凍の時間は短くなるという訳です。

 

感想

 とても、おもしろかったです。

 

 この季節ならではの体験でしたし、解凍の速さは理論的に頭には入っていたものの、実体験で具体的な感覚を身に付けられたことは貴重でした。

 

菓子のトレンド ~ 北海道チーズ蒸しケーキ・山崎製パン

 あれから、すでにもう30年が過ぎようとしているのが、なかなか信じられないのですが、1990年(平成2年)に北海道の日糧製パンが発売しましたチーズ蒸しパンは、今も北海道を始め、日本全国で定番商品として定着しています。

 

チーズ蒸しパン

(画像提供 日糧製パン)

  

 えっ、なに? と思われたかもしれませんが、現在はチーズ蒸しパンの製法と味わいがそのまま受け継がれて、山崎製パンが北海道チーズ蒸しケーキとして全国で販売しています。

 

 そう、山崎製パンは日糧製パンと業務提携して、北海道以外の全国でチーズ蒸しパンを展開しているのです。

 

【 目次 】

 

チーズ蒸しパン

 1990年代に起こりましたスイーツの遍歴を確認してみますと、

 ・1977年のクレープ

 ・1990年 ティラミス

 ・1991年 クレーム・ブリュレ

 ・1992年 タピオカ

 ・1993年 ナタ・デ・ココ

 ・1994年 パンナ・コッタ

 ・1995年 カヌレ

と、なっており、この後は、既にリポートしているアイテムもあります、1997年:ベルギーワッフル、1998年:クイニーアマン、ロールケーキのスイーツ化、1999年:エッグタルト、シナモンロール、と続きます。(こうして見てみますと、スイーツ類は誰かが頃合いを見て仕掛けているように見えて仕方ないのですが・・・。)

 

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 日糧製パンがチーズ蒸しパンを開発・発売した時期は、イタリアンデザートとして人気を博しましたティラミスのブームの時期と重なります。

 

 市民権を得たチーズの風味と味で、かつしっとりとしたソフトな食感は瞬く間に日本全国で受け入れられ、チーズ蒸しパンは大ヒットとなりました。

 

 日糧パンでは、卵や小麦粉を小型の容器で少しずつかき混ぜることで、これまでにないふっくらとしたきめ細かい生地に仕上げることに成功したとのことで、その年の日経優秀製品賞も受賞しています。

 

 しかし、(私が在籍していました企業も含めて)類似商品が多数出回るようになったこともあり、関東の工場の稼働率が下がる等の理由で撤退を余儀なくされます。

 

北海道チーズ蒸しケーキ

 細かいところですが、チーズ蒸しパンにはパン酵母が配合されていませんので、正式な定義と照らし合わせますとはパンとは言えません。

 

山崎製パン 北海道チーズ蒸しケーキ

 

 関東から撤退しましたチーズ蒸しパンは、前述の通り、業務提携をしました山崎製パンに引き継がれるのですが、名称もこれを機に北海道チーズ蒸しケーキと変更して発売されます。(北海道の名を残すところは、なんとも気が利いて憎い限りです)

 

外観

 包装紙から取り出す際に、少し側面がつぶれてしまいました、すみません。

 

山崎製パン 北海道チーズ蒸しケーキ

 

 上面は、北海道を形どって焼色を付けないように着色されています。

 

山崎製パン 北海道チーズ蒸しケーキ

 

 着色部分の境界はとてもくっきりと出ていますので、おそらく大きめの焼き印のようなもので加熱されているのでは、と推測します。

 

 オーブンのような加熱機器で焼き色を付けるのも効率が悪いでしょうし、水分が過剰に蒸発する、型のグラシン紙が焦げるといった懸念も生じるからです。

 

断面

 断面の肌目は、とても細やかで揃っています。

 

山崎製パン 北海道チーズ蒸しケーキ

 

 そして切ってみて気が付いたのですが、随分中央付近の生地が盛り上がっていることが分かります。(この状況は、後の蒸し方のところでも解説します)

 

風味・食味

 やはり真っ先に感じる風味はチーズですね。

 

 その風味は食べる時にまで余韻を楽しませてくれ、しっとりとした食感と相まって、けっして他では味わない楽しみを与えてくれます。

 

北海道チーズ蒸しケーキの蒸し方について

 蒸し製品を見ていますと、下写真のように生地上部がパックリと割れた蒸しケーキをよく目にすることがあります。

 

黒糖蒸しパン

 

 さて、このような商品と北海道チーズ蒸しケーキとの製造条件は何かが違っているのでしょうか。

 

さつまいも蒸しパン

 

 以前に蒸しではなく焼きなのですが、バッター生地の加熱条件に付いて、解説したことがあります。

 

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 この時は、オーブンの上火の強弱でスポンジケーキの形状が異なってくるメカニズムを解説したのですが、似たような現象が蒸し工程においても起きています。

 

 蒸し工程の初期において、強い蒸気で一気に加熱しますと生地内部が膨張する余力を残している時点で生地上部が固まり、その後の継続した蒸し加熱で上表面の生地が割れるようになります。

 

 一方、蒸しの初期をゆっくりと加熱することで生地全体が徐々に加熱されて膨張も緩やかとなり、生地中央は膨らみますもののきれいなフラット面を形成して蒸し上げることができます。

 

追記

 たまたま、今日のTVニュースにも出ていたのですが、このチーズ蒸しケーキを冷凍して食べると非常においしいとか。

 

 この時期だからといったこともあるのでしょうけど、ネットでは味が濃厚になり、食感も本物のチーズケーキのようでおいしいと、評判は上々のようです。

 

フジパン・本仕込み食パン ~ リテイルベーカリーと同じストレート法

 日本におけます製パンメーカーTOP3に入りますフジパンでは、最近のトレンドとなっています湯種法を採用せず、独自路線での製法で食パンを製造しています。

 

 1993年5月、フジパンから発売されました同社の代表的商品である本仕込み食パンに今回はスポットを当て、解説していきます。

 

【 目次 】

  

本仕込み食パン

製品重量から

 今回も、購入しましたのは5枚スライスです。(基本的に厚切り食パンが好きです)

 

フジパン 本仕込み食パン

 

 製品重量は400g (1斤:340g以上)でしたので、焼減率(水分蒸発率)を0.09%(ベーキングロス)+0.02%(クーリングロス)と仮定しますと、

400g×3斤/(20/18:両端分)/(1-0.09-0.02) = 1498g(生地重量)

となり、M字成形で3玉の場合、1玉は1498g/3=499.3g、およそ500gで分割していることが推測できます。

 

 この500gという分割重量ですが、近年のホールセールベーカリーの食パンとしては、随分、多くの生地を使用している気がします。(近々、他のホールセールベーカリーの食パンも解説する予定です)

 

 もっとも製品ごとの重量バラツキ(製造現場の用語では、このバラツキのことを乱貫(らんかん)と言います)もありますので、正確さを求めるのであれば、もう少し数を増やして測定する必要もありますが・・・。

 

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 そうして改めて考えてみますと、この本仕込み食パンの400gでも重量感を実感できますのに、以前にご紹介しましたぱんみみのレギュラー食パン&プレミアム食パンの460gというのは、どのようなパンだと想像されますか?

 

 けっして宣伝する意図はないのですが、ぱんみみのレギュラー食パンは時々リピートして食べたい食パンのひとつです。

 

 外観

フジパン 本仕込み食パン

 

 外観を見てみますと、手前側面に最終発酵のラインが綺麗に出ていますので、この写真の手前側が下図のM字成形の下側(マークを付けた側)かと推測します。

 

フジパン 本仕込み食パン

 

 そして逆側なのですが、成形時の生地の端の方はけっこう暴れたりしますので、少々発酵の状況は見え難くなっています。

 

フジパン 本仕込み食パン

 

 製品の底面を見てみますと、おへその凹みのような跡が付いています。

 

 食型はガス抜き用の穴開きタイプのものを使用しているようです。

 

フジパン 本仕込み食パン

 

 穴開きの食型は、安定した下火加熱が期待できます一方で、焼成初期に離型油が出てオーブンを汚したり、穴が詰まったりと、ラインの掃除やアフターで作業者が非常に大変な思いをされることが危惧されるため、連続生産ラインでは避けられることも多いのですが、フジパンではその苦労を受けてでも安定した焼成条件を選ばれているようですね。

 

内相

 すみません、スライス面の写真を撮ることを失念しておりました。

 

 文章のみの説明にはなってしまいますが、スジシマ、かぎ穴、底詰みといった不具合はなかったと記憶しています。

 

風味・食味

 発酵臭は弱めに感じ、その分小麦の風味が感じ易くなっている気がします。

 

 もっちりとした食感は、給水の高さを物語っていますね。

 

製法について

 発売当初は伏せられていましたが、現在はフジパンのHPの中でもはっきりと『(リテイルベーカリーで多用されています)ストレート法』を採用されていることが明記されています。

  

 連続製パンラインでは、一般的に中種法という製法が採用されています。

 

 原材料の一部を前もって混合・発酵させて、本捏ね時に合わせることで、機械耐性が上がり、ダメージを受け難い、よく伸びる生地にすることができる特徴を持っているからです。

 

 生地がスムーズに伸びることで、分割や成形時に受ける生地ダメージが浅くなるため、クラムの気泡は細かく、生地膜の薄い内相のソフトな製品にはなりますが、クラストも密な構造となることから、歯応えのある食感になり易い特徴もあります。

 

パン ストレート法

 

 それでは、ストレート法とはどのような製法なのでしょうか。(パンとしては、小麦の風味が増し、ミキシング時の生地吸水が上がります。)

 

 上図の工程のように、中種の製造工程が省かれるのですが、実際にラインを組むのはかなり大変だったことが推測されます。

 

 工程が省かれるのだから、逆に簡単じゃないの? と思われがちですが、従来の中種法であれば、数十分のフロアタイムで生地を生地ボックスに入れたまま分割機の前で寝かしておけばよかったところ、ストレート法では2~3時間の発酵工程が組まれるわけですので、温湿度がコントロールされた膨大なスペースが新たに必要になってくる訳です。

 

 しかも、おそらく同じ生産ラインでは、まだ中種法で製造している製品もあるのでしょうからなおさらです。

 

 それでは、どのようにして生産が可能となったのでしょうか。

 

 私はフジパンの社員でもありませんし、生産ラインを見たこともありませんが、この生産を可能にすることができるとしたら、それは元の生産ラインで立体倉庫式の中種醗酵室を組み入れていたことが推測されます。

 

 近年の製パンラインでは、中種ミキサー~本捏ミキサー~分割機の工程で、生地ボックスが指定された番地に自動で格納されるシステムを採用している工場が多いと思われます。

 

 今にして思えば、この立体倉庫式の醗酵室の装置メーカーと連名で特許を出していた製パンメーカーがあったことを思い出しましたので、時間がある時にでも調べてみようと思います。

 

 リテイルベーカリーで多用されているストレート法をあえて連続生産ラインへ組み入れてくる、フジパンのチャレンジが実を結んだ商品です。

 

包装紙

 以前にもご紹介しました包装紙のライトシールですが、近年のシール方法の主流は全面をシールするものではなく、打点式に軽く溶着させる方式が採られています。

 

フジパン 本仕込み食パン

 

 目的としては、確実に密閉して、そしてきれいに開封できること。

 

フジパン 本仕込み食パン

 

 今回はきれいに開封できました。

 

 ここでもきれいに開封するためのポイントは、シール部分の下部を引っ張ることをお忘れなく。

 

フジパン 本仕込み食パン

(出典:オシキリ)

 

 ところで、もしかしてそれほど大変なことなの? と思われていませんか。

 

 食パンの包装には、上図のバッガーと呼ばれます包装機が採用されているケースがほとんどなのですが、食パンを袋詰めする際、一度立体的に膨らみました包装紙を内部の空気を抜きながら平面に整えてシールすることは結構大変なんです。(パンは柔らかくて形状が安定しないことも要因のひとつですが)

 

(お詫び)

 前回の投稿から1週間開いてしまいました。

 

 仕事とプライベートでいろいろ重なってしまって・・・、今後も体調と相談しながらできるだけ一定のペースで投稿できればと思っています。